ワット・アルン=暁の寺の入場料
日本人には三島由紀夫の「暁の寺」で有名なワット・アルンに行ってきた。数年前に改修工事が完了してだいぶきれいになったこの寺院は、昨日アップしたワット・ポー近くの船着き場から渡し船で渡ることができる。ワット・ポー側にはリバービューの飲食店があり、夕方には夕日を背景にするワット・アルンや、夜間にはライトアップされた仏塔が観られる。しかし、やはりワット・アルンの荘厳さを感じるのは間近に観るときに限られる。今回はそんな、コロナ禍の規制緩和直後のワット・アルンを観てみよう。
ワット・アルンはチャオプラヤ河の西岸に位置する。ワット・ポー同様に正式名称は長く、「ワット・アルンラーチャワララーム・ウォーラマハーウィハーン」という。実に長い。タイ人の本名は仏教に関係した名前をつけることが多いのでカタカナにすると長くなるのだが、ワット・アルンの正式名称を聞けばそれも納得だ。
ワット・アルンはいつできあがったものか不明ではあるが、アユタヤ王朝時代にフランス人が作成した地図にすでにこの寺院があることから、建立はそれ以前とされる。また、タイの最高峰寺院は対岸のワット・プラゲオで、そこには玉仏があることからエメラルド寺院とも呼ばれるわけだが、王朝がそちらに移る前はこのワット・アルンにその玉仏があったとされる。
ワット・アルンへの行き方として最も簡単なのが、ティエン船着き場(ター・ティエン)で渡し船に乗ることだ。ター・ティエンはワット・ポーのすぐ横にあり、前回のワット・ポーの記事の最後に紹介した市場の隣に位置する。
木造の昔ながらの船着き場なので、船に乗らずともただ見に来るだけでも雰囲気がいい。
渡し船も安い。10分くらいの間隔で往復しており、ひとり4バーツだけだ。大人・子どもに関係なく、同じ金額になる。
観光地の船着き場であるが、タイ人特有の外国人に対する敬意のない態度を取ることがなく、気持ちよく利用できる点はいい。この船着き場の北側にあるチャーン船着き場が結構ひどいので、その落差を体感する。
また、この船着き場にはBTSサパーンタークシン駅から乗り降りできるエクスプレスボートは発着しないので注意だ。
渡し船はこんな船だ。動き出せばほんの1~2分くらいで発着する。座席も十分にあるが、なくてもすぐなので立って乗るとしてもなんてことはない。
船の往来によってはポンツーンと船の間が揺れるので、乗り降りには足下注意である。
船着き場の目の前にワット・アルンの入り口がある。今は入場時に検温をするが、ここはカメラにひとりひとり顔を撮影して入場させていた。古い寺院なのに、どこよりもハイテクであった。
また、ここは外国人は入場料が100バーツかかってしまう。ただ、ボクのようにタイ人家族がいると、タイの運転免許証などを提示することでタイ人扱いになり、無料となった。
最近は外国人料金の公共施設はどこも交渉に応じなくなっている。15年くらい前はタイ語ができるというだけでタイ人価格になったが、今はなかなかそうはならないのでわりと珍しいでしょう。
ワット・アルンのメインになる仏塔は2段目(というのかな)までは上がることができる。以前はもう一段上に行けた気がする。以前撮った画像にチャオプラヤ河が俯瞰で写っているものがあったのでもっと行けたはずなのだが、今は閉鎖されていた。それが改修のあとからなのか、コロナ禍だからなのかはわからない。
いずれにしても、この段でも雰囲気がよく、ほかの寺院では観ることのできない風景を楽しめる。気をつけたいのは、アユタヤ王朝時代からある仏塔なので、階段が異様なまで急な点だ。登るのはいいのだが、降りるときはちょっと怖い。上から見るとほぼ壁で、カンボジアのアンコールワット並みに危ない。
ワット・アルンの隣にはヤックがいる。鬼のことで、インド神話では夜叉と呼ばれる。タイの仏教神話では夜叉が転じたのかヤックと呼ばれ、守護神として寺院の門などに立っている。
特にワット・アルンの仏塔の横にあるお堂の前には大きなヤックが立つ。実は息子が最近ゴジラにハマっていて、そこからなぜかヤックに入ってきて、どうしても観に行きたいと頼まれたから来た次第だ。タイでは小学校から仏教神話の授業があるので、そこで聞いたか、動画サイトで見聞きしたか。
いずれにしても、息子は当初「ワット・ジェーン」のヤックを観に行きたいと言っていた。どこの寺なのかなと思っていたら、ワット・ジェーンは前王朝であるトンブリ王朝時代のワット・アルンの名称で、ワット・アルンは現王朝になってからついた名前なのだとか。
ちなみに、ワット・ポーと同じように現王朝の3代目であるラマ3世王の時代にも改修している。そのためか、ワット・ポーと同じように中国文化を意識したような装飾と、シルクハットを被ったようなほかの寺院では観られない石像が境内に散見される。
数回ほど来たことがあるワット・アルンではあるが、正直、このヤックの存在は全然知らなかった。一応、ワット・アルンの仏塔と共にこのヤックも有名らしい。
このヤックが入り口を守るお堂の中には大きな仏像のほか、周囲にこのように仏像が並ぶ。この仏像の下には写真つきの石版がはめ込まれていた。ベトナム式の墓のようにも見えたが、一体なんなのか。こういうときに限って僧侶などがいないので、訊くことができなかった。
帰りは出口を出て同じ船着き場に行けば、4バーツでター・ティアンに戻ることができる。
そういえば、妻はダメージジーンズを穿いて行ったのだが、それはダメだと言われて、腰巻きを借りることになった。タイは寺院に肌の露出が多い服はよしとされない。男性のハーフパンツはギリギリ大丈夫だが、女性のミニスカートは確実に入場拒否に遭う。それでも、どの寺院もそういう場合のために腰巻きなどを無料で貸し出すことが一般的で、問題ないと言えば問題ない(貸し出しがない場合もある)。とはいえ、同じ日にワット・ポーにも行っているのに、そちらは腰巻きは言われなかった。ワット・アルンの方がやや厳しいようである。