取材申し込みをしたら「●●●で送ってもらわないと困る」と言われた@2019年
タイに来たきっかけは報徳堂の活動を見たいという衝動だった。でも、当時はタイ語ができず、そもそも海外旅行も初めてだったので、辿り着くことができなかった。その代わり、カオサンの近くにあったシリラート病院の通称「死体博物館」に通った。今でこそ有料の資料館になっているが、当時は完全無料というか、博物館としての状態ではなかった。
今のシリラート病院はこんな感じで、タイで最も大きくて設備の整った国立総合病院になっている。以前はこんなにたくさん建物がなく、そこらへんにある病院と雰囲気は変わらなかった。
死体博物館は今もある解剖学の標本室を指していた、当時。というのは、犯罪学の方は資料室どころかただの倉庫よりも汚く、かつて名物として飾られていたシーウィーさんだって雑に置かれているだけだった。隣が解剖室で、司法解剖なのか行政解剖をドアを開けっぱなしでやっている方が見応えがあったもので。
解剖と言えば、死体標本がある病棟では医学生が解剖実習もしていた。今は標本室に上がる階段は全部ドアが閉まっているというか、封鎖されている感じになっているが、かつてはこちらも開けっ放しで、実習室に袋に入った死体がずらっと並んでいる光景を眺めることができた。
その後、日本人が特にたくさん来るようになって、無料開放はもったいないと考えたのか、いつの間にか有料になっていた。しかも外国人料金の設定をしていらっしゃる。このあたりを国が率先してやっているってことが、タイってまだまだ貧しい国だと思われるのではないかね。もしかしたら、我々一般人が知らないだけで、日本の観光業も外国人料金を設定しているということもありえるけれど。
外国では死体保存を樹脂に置き換えるプラスティネーションをするケースもあるとは思うが、タイ、というか死体博物館は相変わらずホルマリンに漬けている。傷みそうなものだけれども、案外、そうでもないようで、ボクが初めて来た98年から比べても、死体標本は全然劣化していない。もちろん、定期的なメンテナンスを行っているという。
そこで考えたのが、そのメンテのタイミングで標本を撮影すれば、ケース越しでないダイレクトできれいな写真集ができるのではないか。日本で出版をするけれども、素材は全部あげるからタイでの出版権を譲る形で取材許可を得られないかなと。
というわけで、シリラート病院にコンタクトを取ろうとあれこれ策を練った。あっちに行きこっちに行き、あそこで訊いてこちらで教えてもらい。最終的に、決断を下せる人がひとりしかいないということがわかった。
院長先生。
どうするんだよ、と。そこまでのことでもないと思うのだけれども、下っ端たちは勝手には決められないという。いくらなんでもこのサイズの病院のトップに話すことでもないような気もするし。
でも、物は試しということで広報関連の人にタイ語で作った企画書などをメールで送付した。なんなら会いに行って説明もします、と。そうしたら、「そこまでしなくても、もう院長に会ってもらった方が早いよね」とおっしゃる。
え? 会えるの? と思ったら、アポを取ることはできるらしい。ただ、
「送ってもらったメールとか企画書をファックスで送って」
と言う。2019年の話だ。どうもプリントアウトする方法がわからないことと、院長はメールを一切利用していないためだという。こんなん、絶対会えないじゃない。ファックスがこっちにないもの。前職でボクはファックス関連で嫌な思いを散々してきたから、使いたくないし。
なにかいい方法、ないかなあ。
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