ベトナム・ダナンでマンガにももう出てこないシチュエーションに出会った
これほどまでにどうでもいい記事はこの世にないかもしれないが、ベトナムの中部の港湾都市ダナンの市街地で、今どきマンガにも出てこないようなシチュエーションに出会ったことを思い出した。
たとえば、早朝に食パンを咥えて走る学生とか、角で出合い頭にぶつかって、それが転校生で恋に落ちるとか。そういう日本人ならみんな知っているようなシチュエーションであり、そんなの実際に見ないし、という場面。そんなものをダナンで見かけた。
1990年代、あるいは2000年代初頭はタイもいろいろとおもしろかった。そんなことがあるのか、と目を疑うような出来事がたくさんあったものだ。ここ10年15年くらいはだいぶタイ人も変わってきて、アメージングなことをする人は減ってきた。地方ならまだあるのだが、少なくともバンコクでは驚くような出来事はそうめったに起こらない。ボクがタイ居住歴が長くなったからというのもあるとは思う。慣れてしまって、変なことを変だと思わなくなっているというか。
その点、ベトナムはまだまだアメージングな事象や、人々の不可解な行動などが見られる。ハノイやホーチミンといった大都市でも30秒に1回は振り返るような出来事が起こる。だからボクはベトナムが好きなんだと思う。タイで感じていた、最初のころのおもしろさや感動に似たものがそこにあるからだ。
そんなダナンで見かけたのがバナナの皮だった。
道端に落ちていたのだ。それも、マンガのような形で。食べるときバナナは上から十字に皮をむくと思うが、その形を逆さまにしてそのまま地面に置いたような。
ボクが子どものころのギャグマンガならギリ、そのシチュエーションはあった気がする。稲中卓球部の中で女子マネージャーがノーパンでバナナの皮を踏むというシーンはあったけれど、これはボクが高校生のころの話であり、ギャグマンガなのであくまでも昔のマンガのパロディーだ。少なくとも最近どころかこの30年でバナナの皮が落ちていて、それに滑るというシーンをまじめに出したマンガ家はいないと思う。
ダナンの住宅街の歩道を歩いていたら、実際にバナナの皮が落ちていた。ベトナムはタイよりもゴミを道端に捨てることに対して無頓着だ。だから、常にいろいろなものが落ちているわけだが、バナナの皮は今のところ、ベトナムどころかボクの人生でこれだけだ。
最初、視界に入ってきたものの特に気に留めていなかった。直後になにか引っかかって思わず振り返った。写真を撮らなかったのが残念であるが、普通、道に落ちているバナナの皮にカメラを向けようとは誰も思わないでしょう。
いったいどういう経緯でそこにバナナの皮が落ちたのだろうか。しかも、きれいに十字を描いて。日本のマンガを読んだことがある人が丁寧に置いたとした思えないような状態だ。
ベトナムは路面が荒れていてひどい。足元を見ていないと躓いたり、穴に落ちたりして危険だ。だから、誰もしっかり見ているのでそのバナナに滑る輩はいないのだけれども。
って、実際にバナナの皮っていうのは踏んだらうしろにずっこけるくらいに滑るのだろうか。なんならあのとき踏んでおけばよかったという後悔もなくはない。