フエの王宮跡地にまた行きたい
何年か前にベトナム中部に行った際、フエにも行ってきた。ただ、駆け足の取材の中で1日だけ、昼間に行っただけだ。もっとじっくりと周ればよかったなと思っていて、このコロナ禍が過ぎたらダナン、ホイアン、そしてこのフエに真っ先に行きたい。特にフエ王宮、あるいは阮朝王宮と呼ばれるスポットに行きたい。
行った時期が12月半ばで、中部とはいえ気温が低く、寒かった。歩いて周るにはちょうどよかったけれども、あいにくフエに来たときは天気がよくなかった。
フエの王宮は世界遺産にも認定されている。ベトナムで一番最初に世界遺産として認定されたのがここなんだとか。ここは19世紀から20世紀にかけてあった、阮朝(グエンちょう)の王宮跡地だ。中国の故宮を模していると言われ、本物のミニサイズになっているという。
これは午門というらしく。確かに言われてみれば中国っぽい感じはする。
ちなみに、入場チケットは当然入る前に買うわけだけど、ベトナムの物価からするとやや高い印象だった。確か15万ドンなので、7.5ドルくらいか。ただ、この金額は王宮のほか、隣接する美術館だったか博物館の入場チケットも込みになっている。ところが、係員はこれを言わないと出さないときがあるので、王宮だけのチケットを渡されたら、忘れずに要求しておこう。
王宮に堀や池はつきものだが、タイだとこういう風にコイが泳いでいるなんて見たことがない気がする。タイの場合、せいぜいナマズくらいなのではないかな。
若いころはこういう古い場所に一切興味がなかった。タイの王宮だとかワット・ポーなんかも、初めてタイに来てから何年かしてやっと初めて行ったくらいで。それも、自分で行ったのではなく、両親がタイに遊びに来たから連れて行っただけの話で。
でも、カンボジアのアンコールワットに行ったときにボクは初めて遺跡というか、古い建物に感動した。アンコールワットは特に南北きっちりしていて、回廊も一直線になっているその造形に魅力を感じた。そういえば、あのときもひたすら雨が降っていたな。ボクは世界遺産的なものに縁がないのかもしれない。
アンコールワットやタイのピマイ遺跡など、いわゆるクメール遺跡は回廊が直線だし、たとえば端に立って反対の端を見ると、柱や窓がきれいに突き抜ける。あの美しさを観たときの感動もあって、こういう古い遺跡に来ると、回廊などに直線美を求めてしまう。残念ながらその点で言うと、フエのこの王宮はそんなに感動的なものではなかったけれど。
直線というのは惹きつけるものがあると思う。ボクは今の車の曲線的なデザインよりはやっぱり、昔の直線的な角ばった方が好きだし。
タイ語でいうところのサーラーでしょうか。休憩所というか、ちょっとした日陰になる場所というか。中国の城を模したというだけあって、なんかこうベトナムらしさがあまり伝わってこない。これは正直つまらないなと。
あと、やっぱり天候が悪いのはなんとも。なに撮っても映えない。乾季に行くといいのだろうけど、これだって一応乾季だし。ま、ベトナムはいつ来てもだいたい天候がよくないから仕方がない。ハノイはたぶん青空を1回しか見たことないし、ホーチミンも雨に降られる確率が高い。ダナンはその中では晴れ間は多かったけど、それなのにフエのときはこんなタイミングだった。
城内の池もワクワクする。アユタヤの遺跡はどこも寺ばかり。アンコールワットも寺と言えば寺だけども。タイ語ではナコーン・ワットと呼ぶ。ナコーンは、バンコクのタイ語名であるグルンテープ・マハナコーンのナコーンと同じ意味で、都市などを意味する。カンボジア語ではわからないけど、タイ語ではつまり、アンコールワットは「寺院の都市」みたいな意味合いがある。
だからなのか、アンコールワットは昔の人の息遣いを感じる気がする。このフエの王宮はまだ歴史的には新しいこともあって、使われていたという印象を強く受ける。アユタヤの遺跡なんかはそんな雰囲気を感じやしないので、そのあたりがこの王宮の違いであり、魅力かなと思う。
昔の人がここでどんなことを考え、どのように過ごしていたのかとかに思いを馳せるとワクワクしてくる。ボクだったら、夏場にこの池に飛び込んでいるが、そんな人はいたのだろうか。
フエはベトナム戦争時にDMZ(非武装中立地帯)に最も近かった大きな街なのではないかな。DMZのラインはフエから北に100キロとかそんな程度。フエはギリ、南ベトナムに入っていた。だから、フエ市街地は戦時中は激戦地のひとつでもあった。映画「フルメタルジャケット」の最後の方の舞台となったのはフエだったくらいで。
この王宮もそのためにかなりのダメージを受けたとガイドブックなどにあったはず。修復は済んでいるようなのでどこかはわからないが、全体的に新しく感じるのは、歴史的に浅いだけでなくて、修復の結果なのかもしれない。
結局のところ、ベトナム戦争の爪痕というのはベトナム国内にいまだに残っているのだな。確かにボクが子どものころはまだ普通に戦後という言葉はあったし。ボクが生まれたのが終戦から32年だから、2021年でベトナム戦争が終わってまだ46年と考えると、そりゃあまだ戦後の範疇でしょう。
ちなみにこのときは、ダナンから国鉄でフエまで来た。だいたい3時間くらいだったかな。結構時間がかかる。ただ、ダナン-フエ間は海岸沿いに道路が並走していない区間がある。つまり、列車でしか見られない景色があって、そこを見ることができるメリットは大きい。
おすすめはエアコン車ではなく、ローカル向けのノンエアコンの車両だ。なぜなら窓がないから。エアコン車は窓があってエアコンも効いていて、かつシートも座り心地はわりといいけれど、窓が汚くて写真が撮れない。
あと、近年はオンライン化がベトナム国鉄も進んでいるみたい。チケットはネット購入が基本らしくて、窓口が開いていないこともある。知らないで行ったボクは全然係員が現れなくて、チケットが買えずに電車に乗り遅れるところだった。ベトナムはタイと違い、自由にプラットホームに入れない。チケットがあって、列車の出発間際にやっとホームに行けるのだ。
それから、列車はダナン発が朝なのはいいとしても、フエからダナン行きも朝と夜しかない。だから列車を足にする場合、帰りをどうするかを考えておいた方がいい。
ダナン駅は市街地にあるので、列車はわりと使いやすい。ただ、ボクみたいに日帰りでフエに行こうとしている場合はフエでの時間があまり長く取れない。まあ、夜に列車でフエを出てもいいなら問題はない。そのかわり何時にダナンに着くことやら。夜にもダナン取材が入っていたから、ボクはそれができなかった。
タクシーはダナンからフエ、ホイアンなら貸し切りで利用できる。また、一応バスもある。旅行社が出している観光バスもあるようだし、ベトナム市民が使う一般的な中・長距離バスもある。バスは1時間に何本もバスターミナルからの発着はあるけど、ただ、今度はダナンのバスターミナルが市街地から遠いので不便かも。
先に美術館のチケットも含まれていると書いた。でも、ボクは行っていない。というのは、時間的に無理だったというのもあるのだが、実は上記の画像がこの王宮最後の撮影になっている。このとき、橋の欄干にカメラをぶつけて全部画像が消えたからだ。
しかも、消えた画像がここだけならまだよかったが、すでに10日近くベトナム取材をしていて、数百枚の撮影分をバックアップを完璧に忘れていたので、カメラに入っている分しかなかったのに、それが全部ぶっ飛んだ。ボクの顔は青くなっていたと思う。力が抜けてふらふらになっていたが、なんとか喫茶店に入り、ネットで消えた画像の復元方法を検索。そして、どうにか画像を取り戻すことができた。そんなことがあって、美術館には行けなかった。
フエに到着したら、市内観光に普通はみんなタクシーを使うことでしょう。ボクは取材もあったので、徒歩でフエの駅から向かった。結構遠かったはず。フエの駅前にはメイリン・タクシー(だっけ? 緑色の、安全と言われているタクシー会社)も大量に停まっているので、普通の人ならタクシー利用がいいと思う。