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子どもがワイを憶えるとき

 日本のあいさつはお辞儀の作法が大切で、タイではそれがワイ(合掌)になる。タイ女性にはきれいなワイをする人もいて、意外と見落としがちだが、きゅんと来るものがある。ちょっと言葉では言いづらいが、指先の上げ方下げ方に作法がある。テレビのニュースキャスターを見ているとわかりやすいかもしれない。それからワイはハスのつぼみをイメージするとも言われる。掌をべたっとつけるのではなく、つぼみのように少し膨らませるのだとか。

 こういったワイの作法は生活の中で身についていくものだが、最近の子どもはまず学校でワイを習ってくるようである。うちの娘も学校(幼稚園)に入ってからワイをするようになった。

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 タイの学校では朝の8時に国旗の掲揚などがあるので、学校生活の中では日本と同じように行事が多く、その中で礼儀や作法なども学ぶ。また、タイは目上に対する態度など、日本以上に厳しい面もあるので、なおさらワイなどはしっかりする必要がある。

 ちなみに、そういった社会なので、目上の人が目下に対して先にワイをするのはちょっとおかしな行為だと心得ておきたい。だから、中年が若い人に対してワイをする必要はない。向こうがしてきたら返せばいいだけだ。

 ある意味ではワイは尊敬のバロメーターでもある。日系企業の駐在員でタイ人のワイをあまり見たことがないという人に会ったことがあるのだが、それは簡単な話だ。単に尊敬されていない、あるいは見下されているだけのことである。

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 小さい子がワイをするのは慣れていない感じがかわいい。でも、ちゃんとタイ人らしいワイになっている。親指が口の辺りにあるので、高さ的にはちゃんとしていると思う。

 大人が子どもにワイを先にすることはないが、小さい子どもに対しては大人が先にワイをしてあげる方がいいのかなとボクは思う。日本でも大人が小さい子に声をかけるし。それに、幼稚園くらいの子にワイをされると、尊敬されているとかではなく、たぶんこの子はボクを警戒しているな、と思ってしまう。距離を感じるというか。

 これはタイ人にもあるみたいで、親しい間柄でワイをし合うのは距離があるというイメージになるみたいだ。このあたりの距離感は結構タイ人は気にする。

 たとえば、東北の女の子に多い気がするが、自分のことをポム(男性の一人称)、ディチャン(女性の一人称)と言うとかしこまった感じがするみたい。ボクは以前勤めていた会社、今だと取材先などでは自分のことをポムと言うが、自宅でポムと言うと妻は「なにその言い方」と批判してくる。こういう人はだいたい自分のチューレン(ニックネーム)で自分を呼ぶ。うちの妻はアムというので「アムは●●する」みたいな。日本だと子どもの話し方だ。

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 この画像のワイは妻の実家の村にある寺で娘がしているものだ。この車を買ったばかりのときに、妻の実家の寺でお祓いをしてもらい、車内にヤントラを描いたもらったときだ。

 僧侶は女性に触れてはいけないのだが、子どもはいいのかな。子どものころから妻を知っている住職は孫が来たくらいに娘を歓迎して、抱っこするし、じゃんじゃん聖水みたいなのをかけまくった。そのため、娘は完全にその住職を警戒して、このワイが出た次第だ。ほかの画像と比べてもわかるが、目が笑っていない。

 ワイというのはこうやって小さいときから各所で繰り返され、タイ人らしいワイのフォームが身につくのである。

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