サメット島にたくさんの思い出がある
旅先、あるいはバカンスで「島」は多くの人の選択肢に入るかと思う。でも、現実的に島は行くのが大変だし、宿泊施設だとか食事が不便だったり、個人的にいいとはあまり思えない。部屋も砂だらけだ。
そんなボクでも、タイ東部のサメット島は何回か行っているし、思い出もたくさんある。道の整備も進んだので、船着場の村までもバンコクから行きやすくなったのもメリットと感じる。今回はそんなサメット島を振り返ってみた。
サメット島に渡るにはタイ東部ラヨーン県のバーンペー村に行かないといけない。かつてはシーラチャーやパタヤ辺りを通る、つまり海沿いに行かないといけなかったはずだが、今は道路も広くなって、途中から内陸を突っ切る形でバーンペーまで行けようになったので随分と早く港に着ける。自家用車がなくても、エカマイのバスターミナルなどから長距離バスが出ていて、サメット島行きの船が出る港前に発着する。
船は乗り合いと貸し切りがある。貸し切りは数千バーツでスピードボートを借りることができるので、30分かかるかかからないかくらいでいずれかのビーチに上陸できる。帰りも同時に予約してもいいし、現地で手配もできる。
乗り合いはタイムテーブルで運行されていたのかな。あるいは、ある程度乗船客が集まったら出発するのか。人気の島なのですぐに人が集まるので、基本的には1時間のうちに何本か発着していた。長距離バスで来れば、その客のほとんどが乗り合いに乗るから、すぐに出発していたような。
バーンペーの港にはミニマートがあって、日焼け止めや浮き輪などが買える。島に行くと島料金になるので、忘れていたらここで買った方が安い。多少だけど。
乗り合い船はこうして風に吹かれながら行くので、時期や天候によって肌寒い。また、座席には救命胴衣があるので、可能なら着用しておきたい。
サメット島の定期船では聞いたことないが、プーケット辺りだとよく船が転覆している。数年前に中国人を乗せた船が転覆して、危うく国際問題になりかけていたはず。タイの船舶免許は法令はもちろん、安全関連の訓練や受験者の泳力テストなんかがある。でも、あくまでも形式で、違反は日常茶飯事だ。だから、事故が起こるわけで。
画像の乗り合い船は定期船だった。もう20年も前の話だが、定期船が出たあとに、小さい乗り合い船に乗ることになって、定員オーバーの状態で出発した。船がサメットとバーンペーの間くらいに来たときに風と雨がぶわっと船を襲った。
そのとき、風上にいたタイ人たちがみんな一斉に反対の舷に移動してきて転覆寸前となった。船頭がまともでも乗船客がこんなレベルなので、救命胴衣はしていた方がいい。
サメット島はいくつかビーチがある。そこに宿や飲食店が集まっている。ビーチによっては店がなく、ただバンガローがあるだけというところもある。タイ人は後者の不便な方を選んでいく。その方が安いし、バーンペーやバンコクから食料や調理器具などを大量に持ち込み、のんびり友人や家族と過ごす。
大きなビーチは、こういった定期船がそのまま着くところもある。さすがに浜には乗り上げられないので、平たい台船が迎えに来て、島に入る。帰りもそれに乗っていく。
とはいえ、ボクはバーンペーから一番手前の船着場で降りることをお勧めする。最近はみんなそうしているようなので、大半が降りるはず。というのは、定期船の船足が遅すぎて、結構時間がかかるのだ。一番手前で降りて、そこからソンテウ(ピックアップトラック)で目的地に行った方が早い。
その一番近い船着場には怖い顔をした女神の像が置かれていた。ボクが初めて来たのは1999年か2000年ごろか。そのときはこんな像も屋根もなく、この桟橋は今にも崩れそうな、タイではごく普通の港だった。
さらに言えば、この桟橋の前だってなにもなかった。舗装もされていない道路がまっすぐ伸びているだけだった。それが今ではコンビニまであるし、真新しい建物まである。
最後に行ったのは、結婚する直前の妻と行ったときなので、おそらく2004年か2005年か。そのころも特に以前と変わらない場所だった。
この船着場からまっすぐにサイゲーウ・ビーチという、最初の港から一番近い、大きなビーチに向かっていくと、途中で管理事務所の前で停まる。サメット島は国立海洋公園かなにかになっているので入島料がかかる。タイ人は数十バーツで、外国人はその10倍くらいだった。
入島料はタイ語ができたりするとタイ人料金になるなど、2000年代前半は緩い時代だった。こんな発展した姿を見せられると、入島料を値切るというしょうもない交渉なんか相手にされないのではないか。と言いつつ、ボクは妻も子どももタイ人ということで、この画像を撮ったときの入島料はタイ人料金だったけれど。
ソンテウは2列という意味だ。荷台に向かい合って2列の座席があるからそう呼ばれるのかと思う。このソンテウは車こそ新しくなっているが、形式は変わっていなかった。相変わらず、手すりのような棒が低い位置にあって、降り落とされそうな危うさがある。
ソンテウには乗り合いと貸し切りがある。乗り合いは人が集まらないと動き出さないが、貸し切りは単に運転手に最低料金を払うから行ってもらうという感じ。ボクのように家族4人とかなら、乗り合いと貸し切りはそんなに変わらない金額だ。
船着場の近くこそ整備されていたが、ちょっと奥にいくと相変わらず未舗装の道路が続く。それでも、舗装部分は長くなっていたし、未舗装でもわりと動きやすいレベルになっていた。以前は穴があちこちに開いていて、がたがたと簡単には言えないほどのひどさだった。
それと比べればだいぶよくなったが、それでも島内の地形の関係でアップダウンが激しく、山道といった雰囲気はさすがに変わらない。そんな道を爆走していく。ソンテウの無責任な運転は危険極まりなくて、正直ぶっ飛ばしてやろうかと思ったレベルだった。
ボクが好きなのはこのウォンドゥアン・ビーチだ。ウォンドゥアンは三日月とかそんな意味だったような。ビーチは長く、湾曲しているのが特徴だ。
ここは飲食店、ミニマート、宿など全部が揃っている。ビーチもきれいだし、居心地がいい。
ウォンドゥアンには先の定期船もやってくる。定期船の発着でバーンペーから最も遠いのはここだったかな。沖合で停泊し、台船が迎えに行く。台船も干満の状態によっては砂浜に着けないので、乗客は水の中を歩いて上陸する。
ここにも管理事務所の係官がいて、船で来た人はここで入島料を支払うことになる。
このときに泊まった宿はここだ。バンガローになっていた。かつてサメット島のほとんどは日中は電気がなくて、否が応でもビーチ出ていないとやっていられなかった。陸地から電気が来ていないので、どの宿も発電機を使って電気を供給していた。昼間はそれをオフにしているので、扇風機が使えない。
2000年に入ってからサメット島がどんどん人気になって、タイ人も宿を予約することを憶えた。確か2003年の年末だった。ボクは友人とサメットに繰り出した。ところが、宿は全部埋まっていて、泊まるところがない。諦めて帰るしかないところまできたが、最終的に宿泊場所は確保できた。テントだった。ビーチにテントが並んでいて、キャンプ状態で2泊3日を過ごした。こうなると電気がどうのこうのの次元ではないので、毎日朝から晩までウォンドゥアンのレストランで酒を飲んでいた。
そんなのはもう昔の話だ。今は日中でも電気は問題なく供給されているようだ。エアコンのある宿がほとんどだし、Wi-Fiはもちろん、画像のように宿泊施設内の飲食店や土産物店が充実していて、夜なんかきれいに見えたりする。
しかもプール付きだ。ウォンドゥアンのビーチに面してプールがあるのだ。もうこうなると意味がわからない。
ウォンドゥアンは悪く言えば磯焼けしているような、潜ってもなにもないビーチに見える。しかし、遠浅で波も荒くないので、子どもが泳ぐのには向いている。
夜はこうして飲食店がビーチにテーブルを並べて食事ができるようになっている。ここは木の枝を屋根のようにしているが、かつてはゴザを敷いているだけとか、竹でできたテーブルを置いているだけとかシンプルだった。波打ち際に夜空を天井にしたレストランである。
驚いたのが、火をつけた棒とかヌンチャクみたいなのを振り回すショーをやっていたことだ。20年前から全然変わっていない。
互いに話したりはしないが、妻と結婚前に来たときにはなんか満ち足りた気持ちになったことを憶えている。ほかに知り合いもいないし、ふたりで夜、ビーチのテーブルでシーフードを食べた。
タイ人と日本人の国際結婚はあまり多くないが、それでも離婚率は高い。ボクの周囲でも数多くの夫婦が離婚した。多くが互いの言語を憶えていないなどで理解が足りなかったのかなというケースだが、ボクが思うに、なにかあったときに立ち返る共通の思い出がないカップルが離婚するのかなという気もする。ボクら夫婦はその点ではおそらくこのサメット島の気持ちが共有する思い出なのかなと思う。妻はそう思っていなかったりして。
サメット島のシーフードはあまり期待しない方がいい。この雰囲気の中で食べる分には確かにおいしいが、純粋に味で言えば、タイで一番シーフードがおいしいのはバンコクだ。やはり、首都においしいものは集まっていく。パタヤでさえ微妙なのに、島であるサメットにおいしいシーフードが集まるわけがない。でも、もう一度言うが、この雰囲気で食べるのでおいしく感じることはできる。
バンコク最寄りのリゾート島と言えば、パタヤの沖合に浮かぶラン島なのかなと思う。でも、ラン島も海がきれいなビーチは限られる。パタヤ辺りは15年前と比べたらだいぶ海がきれいになった気がするが、サメット島には負ける。パタヤに行くのにプラス2時間くらいで着くので、バンコクに近いリゾートならば断然サメット島をお勧めしたい。