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20年前にはすでにタコ焼きはあったけれどそもそもタコがなかった

 10代後半、料理人になりたいと思っていた時期がある。ジャンルが定まっていたわけではないけれど、たとえば少ない資金でできるならタコ焼きがいいなと思っていたこともあった。タイに来てみて屋台文化であることを知り、タコ焼きなんかもいいのではないかと思った。でも、90年代後半にはすでにバンコクにタコ焼きはあった。ただ、2010年くらいまでは必ずしもタコが入っているわけではなかった。むしろ、タコ入りのタコ焼きの方が珍しかったかもしれない。

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 そもそもタコは世界的に見ても食す民族は少ないらしく。日本、韓国、ギリシアなどが主で、ほかの国ではあまり食べないようだ。

 東南アジアだとベトナムは食べると思う。ハノイではあまり見ないが、ホーチミンではタコを炭火で焼く屋台をあちこちで見かける。たぶんだが、それも最近の話なのではないかとボクは疑っている。というのは、2011年に初めてホーチミンに行った際にそんな屋台を見かけなかったので、最近になって食べ始めたのではないかと思うのだが、どうなんだろう。

 タイは元々はタコは食べなかったと思う。90年代後半、2000年代初頭にタコを使ったタイ料理を見た記憶がない。実際、タコを指す単語も曖昧だ。かつては「プラー・ムック」と呼んだが、イカも同じだし、そもそも以下を指すことが一般的だ。

プラー・ムック・ヤック」という呼び方もあり、最近はこれがタコを指す。しかし、かつてはダイオウイカを指していた言葉だ。ヤックは鬼(正確には夜叉)で、津波が世界共通語になる2004年以前は、タイでは津波が存在していなかったのでプーケットの津波の初期段階ではクルーン・ヤックと呼ばれていた。大きいとか凶暴なものに対して使うのがヤックだが、タコがイカよりもどう凶暴なのか。

 ちなみに、インクや墨などをタイ語ではムックと呼ぶ。イカが墨を吐くから墨の魚=プラー・ムック、あるいはイカが先であとからインクにムックとついたのか。と、思っていたら、プラー・ムックのムックは海洋の無脊椎動物を指すのだそうだ。

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 タイ人が食べ慣れていなかったのか、入手性が低かったからなのか、以前のタコ焼きではタコがあまり使われていなかった。輸入品のスーパーなどにはあったのだが、さすがにコストが合わなかったのでしょう。

 まったくないわけではなく、スペシャルバージョンとしてちょっと高い値段設定としてタコはあるにはあった。タコ焼きなのにタコはオプションって意味がわからない。

 そのころのタコ焼きにはそのままイカが入っていることもあったし、カニカマも多かった。あとはコーンとか。それから、ソースは今もそうだが、かなり甘めにアレンジされている。いや、甘めというか甘すぎるというか。マヨネーズも大量にかけるのが普通だ。

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 あまりにもおいしくなくて、一度食べたきり。でも、タコ焼きが好きだったので、食べたい衝動は強かった。前職で日本に出張を数回しているが、いずれも大阪だった。これはある意味運がよかったのかもしれない。空いた時間にタコ焼き店に行って本場のタコ焼きを堪能した。あのとき食べたタコ焼きはおいしかったね。一番おいしかったのは新大阪駅の構内にあるタコ焼き店だった。

 今は和食が定着して、スーパーでもタコが手に入る時代になっている。なにより、2010年ごろに銀だこがタイに進出している。今、バンコクと近郊に8店舗くらいの展開になっているはず。実は日本で銀だこを食べたことがなかったので、タイと日本が同じかどうかは知らないのだが、でも十分に日本のタコ焼きそのままだと言える。

 最近のタイは昔ながらの緩いタイが消えつつあって残念だけれども、こういう変化は純粋にうれしいと思う。

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