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東南アジアで牛肉を食べた 後編

 前回、タイとラオスの牛肉の思い出を書いたが、今回はカンボジアとベトナムでの牛肉体験を綴る。タイは金を出せばおいしい牛肉にありつけるが、ボクはそれはなんか違うと思う。金を出せばおいしいものが食べられるのはどの国も同じだ。安価に、ローカルたちがおいしいと思う牛肉を食べたい。それが東南アジアの醍醐味だ。

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子牛の丸焼きがカンボジア牛肉料理の代表格?

 カンボジアで牛肉を意識したのはシェムリアップの外れにある屋台街だった。ナイトマーケットみたいな場所が遊園地の近くにあり、そこにトゥクトゥクの運転手に連れて行ってもらった。そこに子牛の丸焼きがあった。

 不思議とタイでは子牛の丸焼きは見ない。そもそもタイでは牛肉を食べる習慣が最近まで定着していなかったこともあるが、「丸焼き」となると鶏が一般的で、ちょっと豪勢なときに子豚を丸焼きにするくらいだ。だから、ボクの目には新鮮に映った。

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 当初はアヒルの孵化寸前の卵を食べるために行ったのだが、同じ店に子牛の丸焼きがあった。単に切り落とされた牛肉を塩こしょうで食べるだけのシンプルなものだった。

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 その後、シェムリアップからプノンペンへは船で向かった。トンレサップ湖を経由してトンレサップ河を下り、プノンペンのメコン河との合流地点辺りで船を下りる。

 そこで知り合ったトゥクトゥクの運転手に数日間、いろいろなところに連れて行ってもらい、その中に再び子牛の丸焼き店があった。河のすぐ近くで、何軒か似たような店が並んでいた。場所はうろ覚えなのだが、王宮の近辺、河から見ると王宮あるいはその近くの寺院の裏手の方の通りにあったと記憶している。

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 ここでは、ネギをみじん切りにして、日本の焼肉ダレに似た味つけの調味料をぶっかけた骨つき肉を食べた。どうも運転手がこの店の店主と仲いいらしく、特別に首辺りの肉を出してくれたのだと説明された。これがムチャクチャおいしかった。残念なことにビールがかなりまずかったが。

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 その後、プノンペンで飲み屋にも何軒か行った。ある飲み屋はタイのオープンエアの焼肉店のような場所で、前回紹介した「ベストビーフ」に形態が似た店だったのだが、ホステスもいて、隣に着いてくれる。

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 そこで頼んだのが焼肉セットだった。これもまたベストビーフのようで、油とマーガリンのダブルで食べるくどいものだ。

 ベストビーフがタイで流行る以前からこちらにはあるようなので、ベストビーフがカンボジアやベトナムの焼肉を参考にしているのではないかとボクが思っている。

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 ほかの夜遊びを兼ねた飲食店でも牛肉を食べた。普通の炒めものもあったし、バターと油の焼肉もあった。ただ、総じてカンボジアは食事がおいしくない(取材当時、かつボクが知る範囲の話だが)。牛肉もおいしいものはそれほど出会えなかった。

 ちなみに、ある店の女の子と指さし会話帳で身の上話を訊こうとしたが、残念ながら文盲だった。タイやベトナムは識字率が高い。当然ながら日本もそうであるので、正直このときまでボクは文盲と接したことがなく、カルチャーショックを受けた。

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 カンボジアの一般的な料理に「ロックラー」なるものがある。正確な発音(読み方)はわからない。ロックラーで検索すると、上の方にはボクの記事が出てきてしまうので、違うのかもしれない。

 これはタイ料理のバジルライスのようなシンプルな料理で、肉を甘く炒めて、白米と目玉焼きで食べる。初めて食べたのはタイ東部とカンボジア国境の街だったが、そのときは鹿肉を食べた。その後、プノンペンのキリングフィールド近くの食堂で牛肉のバージョンを食べたのだが、やっぱりおいしかった。

牛肉料理が豊富なベトナム

 ベトナムの「食」は東南アジア内でもタイに匹敵するハイレベルな国と言って過言ではない。むしろ、タイなんて日本人がいっぱいいて、隅々までブログや動画で紹介されているが、ベトナムは人気があるとはいえ、そこまで行っていない。だから、ベトナム料理はまだまだ日本人に未知のモノがたくさんあって、攻め甲斐がある。

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 牛肉も巷に溢れている。たとえば麺料理の代表格であるフォーだって「フォー・ボー」、すなわち牛肉のフォーなんかはどこにでもある。南部に行けば、フォー・ボーがさらにシチューになった「フォー・ボー・コー」も捨てがたい。ボー・コーは正確には牛肉煮込みという意味なのだとか。

 麺類にビーフシチューってなんか変だと思う、という人も多いだろう。しかし、中年以上の中流家庭の人なら自宅でビーフシチューが夕食に出てきて、それを茶碗の白米で食べたことがあるのではないか。素材としてはフォーも米だから、決して合わないわけではない。むしろ懐かしい味わいだ。もし抵抗がある場合、フォー・ボー・コーを置いている店ならバゲットもあるので、ボー・コーとフランスパンで食べることもできる。

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 ハノイあるいは北部の麺類であるブンチャーのつけ合わせによくある、香草で巻いた肉団子などもそうだし、とにかくベトナム料理には牛肉が多い。東南アジアの多くは同じ料理の中で肉の種類を選べるが、タイだと牛肉が選択肢にないか、あっても高い。ベトナムは基本的には同じ値段なのでありがたい。

 ハノイだと牛肉の焼肉店も少なくない。和食店やパブレストランを手広く経営する企業が「スモウ」というチェーン店を展開している。ここも食べ放題もあって、人気がある。実際に食べてみたが、完全に日本風とは言えないものの、タイだったらこんなに安くないのではないかという料金設定で好感が持てた。まあ、ベトナムはアルコールが安いので、トータルを安く感じるというのもあるかもしれないが。

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 路上にも焼肉店が多い。10年近く前はあまりなかった気がするが、その後旧市街の中でどんどんと増えていった。以前はドンスアン市場近くの線路沿いでしか見かけなかったが(ボクの知る範囲の話)、なんだかんだ、今もそこが旧市街の外国人向けの店よりもずっと安い。半額くらいの印象だ。

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 ハノイの路上焼肉もカンボジアの焼肉やタイのベストビーフのようにくどい。サラダ油風だが原料がまったくわからない油を大量に鉄板にかけ、肉と野菜を載せたら、その上にさらにバター(たぶんマーガリン)を大量に。

 上記画像の左にあるのが油で、右のティッシュのところにある黄色い容器がマーガリンだ。このマーガリンを全部使うので、まあ油ギッシュな料理である。

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 ほかの席を見ると、女の子は妙に席をずらして座っている。その理由がすぐにわかる。それだけ大量に油をかけているので、とにかく跳ねるのだ。熱くて真正面に座っていられないのである。昔で言う「マーフィーの法則」で、嫌がれば嫌がるほど、油の跳ねがこちらに飛んでくる。

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 この線路沿いには数軒の焼肉屋台がある。2020年3月時点でもちゃんと何軒か残っていた(一時期なくなっていた)。店によってはセットにフランスパンがついたり、ブン(米粉の微発酵麺)がつく。

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 そういえばダナンで子牛の丸焼き店に入った。たまたま歩いていたら周囲が急に牛肉の香りに包まれ、クンクンと嗅いで周っていたらみつけた。ダナン駅から見て北東の方面、デカい橋に向かう道路の手前というか。

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 ここでは例の塩こしょう&完熟ライムのあのタレが来る。そして肉を生春巻きの皮で包む。この点がカンボジアと違うところか。

 牛肉もこの店はローストビーフ的なミディアムレアで、やや臭みはあったが、野性味といった味わいとでも言おうか。ボクにとってはとてもおいしかった。

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 東南アジアにはまだまだたくさんの牛肉料理がある。インドシナ三国どころか、ベトナムだけでもおそらくまだまだ知られていない料理もあるだろう。これからそのあたりを突き詰めていきたい。

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