【タイ・イベント】ワット・バーンプラのワイクルーが中止【サックヤン・護符刺青】
ナコンパトム県のワット・バーンプラのサックヤン(タイ護符刺青)のイベント「仏歴2563年度 ワイクルー・ルアンポープン」が中止と発表された。理由は言わずもがな、新型コロナウィルスの蔓延を防ぐための一環ということだ。毎年3月の第1土曜日に開催され、今年2020年度(仏歴2563年)は3月7日、つまり今週の土曜だったのだが、2月28日には決定していて、公式ホームページやSNS上で静かに発表されていた。
サックヤンは日本独特の刺青である和彫りに似て、長い針を使った手彫り刺青なのだが、寺院で行う場合、針を洗わずに次の人を彫り始めることもある。特にこのワイクルーは数千人が集まり、その中の数百人が前夜からカラワートと呼ばれる彫り師に新しくサックヤンを彫ってもらう。
どう考えても不衛生だ。しかし、一方ではこのサックヤンで感染症になったという話はめったに聞かない。信じる者は救われるのか、言われるほど感染症はなりにくいものなのか。
いずれにしても、肺炎になるリスクよりも感染症のリスクの方が高いような気がするわけで、タイ人もきっと「護符刺青の加護でウィルスには負けない」と言うのかと思っていた。しかし、さすがに歴史あるこのワイクルーも新型コロナウィルスの流行には勝てなかった。
このサックヤンのイベントは、本来は護符刺青のイベントではなく、「ワイクルー」という「先生へ感謝を示す日」といった意味の祭事だ。この寺院にいたルアンポープン師はすでに亡くなっているが、今も信者が多く、この師に感謝の祈りを捧げる日なのだ。
祈りのメインイベントは3月第1土曜日(違う年もあるが)の午前9時ごろに読経が始まり、30分ほど手を合わせる。しかし、コアな信者は前夜から集まり、サックヤンを彫ってもらったり、会場で夜を明かすのだが、中には神が降りてきてしまう人がいる。
このときの奇行が有名になり、護符刺青の奇祭として世界的にも知られるようになった。
主にハヌマーン(サルに似た神)やルーシー(老師)、トラなどが彼らに入ってくる。彼らは憑依すると会場中心にあるルアンポープン師の像に向かって走って行く。
そのため、像の前には陸軍兵士や、ボクが所属する救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」のボランティア隊員などが待ち構えていて、憑依した人を取り押さえる。身体を持ち上げ耳を引っ張ってあげると神は抜けていくようだ。
憑依するのは全員ではない。一部のタイ人だけだ。また、女性でも憑依してしまう人もいる。
メインの読経までの間、散発的に憑依が起こるのだが、ときどき数十人、あるいは百人超の単位で一斉に降臨することがある。こうなると、最近のハリウッド映画のような全速力ゾンビのようになって怖い。ボクはいつも通路で写真を撮っているので、ときに弾き飛ばされてケガをすることもあった。
今週のこのワイクルーを数回に渡ってレポートしたかったのだが、今年は残念ながらできそうにない。ボクは数年通っているので、これまでのことをまとめて、サックヤン(護符刺青)についても解説していければと思っている。