【本物はこの一万倍綺麗だよ】極北の火山島、アイスランドでオーロラを②(目的地選び編)
2020年以来、5年ぶりのオーロラ観測旅行。
前回の旅の目的地は、アラスカのフェアバンクスだった。
そして今回目指すのは、北大西洋に浮かぶアイスランド。なぜ、その場所を選んだのか。
アイスランド旅行記の2回目は、目的地選びの話をしよう。
オーロラが見られる場所
英語で“Northern Lights”と呼ばれるオーロラ現象。シンプルにその名前からして、北に向かえば見ることができるのは明らかだが、果たしてどこに行けばいいものか。
地球の最北端、北極点でオーロラが見られるかというと、そう単純なものではない。
実は、北極点はオーロラ観測には不向きな場所どころか、ほとんどオーロラを見ることができない「ハズレ」の場所だ。私も、そのことを初めて知ったときには驚いた。5年前、単純明快に北を目指そうと思っていた私が目的地に想定していたのは、ノルウェーにある世界最北の街ロングイェールビーン(リンク内地図の場所)だった。でも、そこに立ってもオーロラを見ることは叶わないらしい。
では、どこでオーロラを見られるのか。その答えは、
オーロラベルトの真下に立つ
単純に晴れやすい場所に行く
という、たった2つの要素を抑えるだけで完結する。
オーロラベルトとは?
オーロラベルトとは、北緯60~70度、南緯60~70度に位置するオーロラが発生しやすい地帯のこと。北磁極と南磁極を中心にして、地球儀の上でぐるりと円を描くように、オーロラベルトは存在する。オーロラの発光現象には、太陽風に乗ってくるプラズマ粒子と地球の磁場が要素として欠かせない。
科学的な仕組みの話はさて置いて、つまりはオーロラベルトの真下に立てる場所に旅立つ必要がある。たとえば、
イエローナイフ(カナダ)
ホワイトホース(カナダ)
フェアバンクス(アメリカ)
イルリサット(グリーンランド)
レイキャヴィーク(アイスランド)
サーリセルカ(フィンランド)
トロムソ(ノルウェー)
キルナ(スウェーデン)
などといった具合。
南半球の地名が全く登場しないけれど、答えはシンプルで、そこに陸地がないからだ。南半球のオーロラベルトの真下は、ほとんどが海か南極大陸。日本の南極観測の拠点である、昭和基地がちょうどオーロラベルトの真下に位置する。要するに、普通の人が訪れるのはほぼ不可能。写真家や冒険家になって資金を集めるか、あるいは南極に関する研究に没頭するか、知識と技術と人脈を駆使して観測隊に参加するしか選択肢はない。
一方、北半球のオーロラベルトの真下には、多くの陸地が存在する。その中でも、オーロラ旅行の目的地として圧倒的な人気を誇るのが、カナダのイエローナイフであろう。
イエローナイフが人気の理由
なぜ、イエローナイフが人気なのか。その理由が「圧倒的な晴天率」にある。
オーロラの光は、高度100km以上の遙か上空で輝いている。つまり、星空観察をするのと同じで、空を遮る雲があればオーロラを見ることは叶わない。晴れやすいことは、オーロラ観測における必須条件だ。
その点において、イエローナイフは年間を通じて4割近い晴天率を誇る優秀な場所。これが、「3日いれば絶対にオーロラを見られる」と言われるイエローナイフの強みになっている。
対して、ヨーロッパは晴れにくい。特に、暖流の影響で高温多湿になる冬の時期は、その傾向が顕著に現れる。アイスランドや北欧の各国は、冬になれば晴天率は1割を切り。雲の隙間すら生まれない、完全に曇る日が7割以上もある。
絶対にオーロラを見たいのなら、ヨーロッパを目指してはいけない。断定するのはその国の人にも旅行会社にも失礼だけど、「オーロラを見る」だけを目的に大金を支払うのなら、やっぱり確率は高い方が良い。
なのに私は、今回の目的地をアイスランドに設定した。そして、そんな博打に60万もの旅費を払った。旅費を削ろうとは思わなかったし、オーロラを見られないというリスクも大きい。でも、私はそれでいいと思っている。
アイスランドの決め手は何か?
今回の旅の目的地は、何が何でもアイスランドが良かった。もし今回アイスランドでオーロラが見られなかったとしたら、もう一度足を運べば良いだけだ。
なぜかって? それは、アイスランドの風景に、心を奪われたからに他ならない。
2020年2月のアラスカ旅行のすぐ後、世界は新型コロナウイルスの脅威に曝された。普通の人間は、海外渡航どころか外出さえままならない。そんな期間が何ヶ月か続き、ようやく国内旅行が再開された後も、海外に行くなど夢のまた夢だった。
そんな時代に、私は足繁く科学館のプラネタリウムに足を運んでいた。
とりわけ好きだったのは、KAGAYAさんの全天周映像作品。銀河鉄道の夜や水の惑星、富士の星暦など、名作揃いの中に『オーロラの調べ』という作品がある。その中に登場するのは、KAGAYAさんが1ヶ月掛けて撮り溜めた、アイスランドのオーロラの空。もちろん、オーロラの空も美しいのだけれど、極北の島国の風景はとびきり美しかった。
厳寒で強風の吹き荒れる荒れた大地。そこに森は育たず、植物は苔ばかり。大地の割れ目からはマグマが噴き出す。何日も曇り続けていたとしても、明るい時間だけで充分に、私の心は満たされそうだ。もし、そんな風景の下でオーロラの写真が撮れるなら。それ以上に幸せなことはない。賭ける価値は充分にある。
次に決めることは何か。
アイスランドに行くことは、早々に決まった。そして、渡航時期はいつにするべきか。これもかなり重要だ。
考えるべきは3つある。
ひとつめは、月の明るさ。
ふたつめは、昼と夜の長さ。
みっつめは、荒れやすい時期を避けること。
さて、次回の記事では、この部分を深掘りしていこう。
(次回の更新は1月28日を予定しています)