
投資と神経科学:アントニオ・ダマシオの研究から学ぶ「感情」と「意思決定」
こんにちは!個人投資家のTAKA Chanです。
アントニオ・ダマシオ (Antonio Damasio) の研究は、投資家の意思決定に深く関係しています。
個人的にも意思決定のプロセスほど投資で大切なものはないかもしれないと最近特に考えるようになってきました。
彼の著書『デカルトの誤り (Descartes’ Error)』を読むと、感情が合理的な意思決定に不可欠であることを提唱しています。
従来の経済学では、投資家は合理的に行動することが前提とされていましたが、ダマシオの研究は、感情が意思決定に影響を与えることを示す神経科学的な証拠を提供しています。
少し解説いたします。
それではどうぞ!
1. ダマシオの研究と投資家の行動
ダマシオは、感情と意思決定を結びつける「ソマティック・マーカー仮説 (Somatic Marker Hypothesis)」を提唱しました。
これは、過去の経験から生じた身体的な感覚(例えば、ストレスや快楽)が、意思決定の指針となるという考えです。
投資の意思決定において、これは以下のように現れます。
過去の痛みを記憶しすぎる → リスク回避
投資で大きな損失を経験した投資家は、「再び同じ痛みを味わいたくない」という感情が働き、リスクを避ける傾向が強まる。
たとえば、2008年の金融危機で大きな損失を出した投資家が、その後の強気相場で適切なリスクを取れず、機会を逃す。
快楽の記憶が無謀な投資につながる
過去に成功体験があると、「また同じ快感を味わいたい」という感情が働き、リスクを過小評価してしまう。
たとえば、ビットコインで大儲けした投資家が、過去の成功体験を忘れられず、過剰なレバレッジをかけてさらに投資し、大損する。
2. 投資家のバイアスと感情
ダマシオの研究は、行動経済学の「プロスペクト理論 (Prospect Theory)」とも関連があります。投資家の感情が意思決定を歪める例として、以下のようなバイアスが挙げられます。
損失回避バイアス (Loss Aversion)
損失の痛みは、同じ額の利益の喜びよりも強く感じるため、リスクを避けすぎる。
例:株価が下がったときに「もっと下がるかもしれない」と焦って売却し、反発の機会を逃す。
確認バイアス (Confirmation Bias)
自分の意見を支持する情報ばかりを集め、異なる視点を無視する。
例:「この銘柄は絶対に上がる」と思い込み、ネガティブな情報を無視してしまう。
現在バイアス (Present Bias)
目先の利益を優先し、長期的なリターンを軽視する。
例:配当が少ないが成長性の高い企業よりも、短期的に高配当の企業を選んでしまう。
3. 投資家が感情に支配されないための方法
ダマシオの研究を投資に活かすには、感情を認識しながらも、意思決定を合理的に行う工夫が必要です。
ルールを決める
例えば、「損失が◯%になったら売却する」「ポートフォリオの◯%以上は特定の資産に集中しない」など、事前にルールを作り、感情による衝動的な判断を防ぐ。
ジャーナリング(投資日記)をつける
「なぜこの銘柄を買ったのか」「その時の感情はどうだったか」を記録することで、感情に流される投資行動を可視化できる。
分散投資を心がける
1つの投資先に執着することなく、リスクを分散することで、特定の感情(恐怖や快楽)に振り回されにくくなる。
瞑想やマインドフルネス
瞑想や深呼吸などで感情を落ち着かせ、冷静な状態を作る。
まとめ
ダマシオの研究によれば、感情は投資家の意思決定に大きな影響を与えます。過去の痛みや快楽の記憶が投資行動を歪めるため、感情を認識しながらも、それに振り回されないようにルールを設けることが重要です。
まとめると、
過去の痛み → リスク回避しすぎる
快楽の記憶 → 無謀なリスクを取る
バイアス(損失回避・確認バイアス・現在バイアス)に注意
投資ルールの設定・記録・分散投資・マインドフルネスが有効
神経科学的な視点から投資を考えることで、より冷静で合理的な判断が可能かもしれません。
参考資料:
いいなと思ったら応援しよう!
