Shelter FOR THE PEOPLE 〜誕生25周年、坂本昌行の代表曲を紐解く〜
20th Century(トニセン)が、2023/6/14に25年ぶりのアルバムをリリースした。
そのタイトルに「二十世紀 FOR THE PEOPLE」(読み:トニセンフォーザピープル)というV6パロディをかましているのもツッコミどころだけれどそれはともかく、今回アルバム全形態を購入して気がついたことがある。
全ての形態の特典に輝く「Shelter」の文字。
2023年のコンサートツアーを特典につけたために、セットリストの1曲として映像化された「Shelter」。
実は2種類あるセットリストのうち片方には存在しなかったのに、サプライズで歌われた結果特典映像にも入ってしまった「Shelter」。
なんなら、宣伝映像にも「Shelter」。
テレビ番組のインタビューにも「Shelter」。
この曲はまさに25年前のアルバム「! -attention-」の中に含まれる、坂本昌行ソロ曲なのだ。
坂本ファンに限らずトニセン(またはV6)のファンが血沸き肉踊るこの謎の楽曲について、どういう経緯でこんな存在へと上り詰めたのかを解説しよう。
楽曲について
まずは楽曲の特徴をみてみよう。
一言でいうと「耳に残り易いロック」である。
まず歌唱法。
坂本昌行という人物について軽く説明すると、2022年の舞台で賞をとるほどの舞台人であり、特に主戦場はミュージカルにある。
つまり、普段の歌唱でそうそうロック風味の歌い方はしない。
一方、この曲ではややパワー推し気味で歌っている。彼の歌い方としては珍しい部類といえるし、アイドルとしてもあまりない歌い方かもしれない。
トニセンは男闘呼組が好きな世代でもあり(V6が新人の頃は、コンサートで沢山の曲をお借りした)、癖強めな歌い方には男闘呼組の影響もありそうだ。
次に歌詞。
ラブソングとして、女性を「シェルター」に喩えるのはややファニーではある。
「傷ついた俺を受け入れて抱きしめてくれるお前のお陰で、何度でも立ち上がれる」
という歌詞なのだが、「You are my Shelter」「Love is the Shelter」とかなかなかいいトンチキフレーズが詰まっている。
そして、耳への残り易さを演出するのは伴奏とメロディラインだ。
真っ直ぐなハードロックのアツさと疾走感の楽しさに加えて、サビラストの「You are my Shelter!」が一発で頭に入ってしまうキャッチーさを持つ。
さて。
実をいうと、当初の音源をベースにして語れる話はこのくらいなのだ。
では、この楽曲が伝説となった理由は何なのだろうか。
それは「Shelter」の巡った数奇な運命によるものではないだろうか。
Shelterの歴史〜そして伝説へ〜
ここからは、コンサートで披露されるようになってからの話をしよう。
実際の振り付けの話も含まれるので、知らない方は約25年後のコンサートのティザー映像をご覧いただいてから話を進めたい。
冒頭に「Shelter」サビの一部が流れる。坂本はハンドマイク片手に歌っているので、両端の2人のダンスを観た方が良いかもしれない。
華麗なる客前デビュー
先に書いた通り、「Shelter」はトニセンが25年前…1998年にリリースされたアルバム「! -attention-」の中の1曲だ。
(このアルバムには3人のソロ曲が1つずつ含まれていた。)
客の前で最初に披露されたのは、まさにアルバムリリースの時期に行われた、トニセンのコンサートツアーだった。
記念すべき「Shelter」の初披露。
ロックな衣装に身を包んで歌うその姿に、我々の目は釘付けとなるのだった。
上半身の服が、網目。
サビのダンスがなんか腕グルグルしてる(上の資料参照)。
当時20代のまーくんには、振り付けの動きにまだシャカリキ感があったのがミソである。(マイクはヘッドセットのため両手が使えていた。)
何なんだこのトンチキ。
しかし、これを手抜きなしの本気で繰り出されると、なんかかっこいい。
理由はわからないが、観客にはその姿が神々しくみえてしまったのだ。
Shelter封印事件
これが高評価を得たためか、「Shelter」はその後のコンサートでも歌われることになった。
ところが、ある時突然、「Shelter」はセットリストに現れることがなくなってしまったのだ。
何故、この曲が歌われることはなくなったのか。
その理由は。
「俺、Shelter封印するわ」
…正直なところ、短期間に何度も歌われていたので飽きられかけていたのはある。多くのファンからみれば、彼が別の曲を歌うことは自然なことと捉えていただろう。
でも「Shelter」をセットリストに入れないことにした経緯が「封印」という強烈なワードとともに話を3割盛る男(´ε`)により表沙汰になったことにより、観客の中に衝撃が走ったのである。
かくして、「Shelter」は封印されし伝説の楽曲となったのだ。
復活のShelter
というわけで一時は幻の曲となった「Shelter」だったが、それ故にかえってファンの中で渇望感が芽生えていった。
そして、遂に封印をとかれる日がやってきた。
それは、V6デビュー10周年コンサート「musicmind」でのことだ。
坂本のソロコーナーは、まず華麗なタップダンスから始まった。
となれば、このままミュージカル調のアダルティな楽曲が始まるのではないか。そう予想させての…
「You are my Shelter!」のシャウト!
このコンサートでは演奏が生バンドだったため演奏も激アツ(ピアノのパートキャンセルのため、ギターのリフからスタートだった)、しかも演出上不可能だった1人を除く4人をバックに従えるという更なるサプライズが加わった。
観客のボルテージも最高潮に達したのはいうまでもない。
この舞台裏で「裏Shelter」が爆誕するというおまけまでつき(説明すると面倒くさいので割愛)、人々の記憶に残る「Shelter」となったのだった。
その後
以降は他の楽曲と同様に散発的に歌われていく形に落ち着いたのだが、やっぱりこの曲が歌われる時にともる観客席の熱意は、他の楽曲にはないものがある。
何気に20代、30代、40代、そして50代と時を刻んでいるのが面白いところだ。
2009年のトニセンのコンサート「HONEY HONEY HONEY」ではピアノのイントロからスタートするバージョンが復活。
V6のCDの特典映像でカラオケをする時にも、当然のように「Shelter」が入っている。
これは10周年コンサートでの経緯もあるのかもしれないが、坂本以外の5人の中の不文律として、この曲では彼らがマイクをとることはしない。
それが「Shelter」をいっそう神格化させているといえる。
終わりに〜誕生25周年、そして未来へ〜
「! -attention-」発売から25周年となる2023年、トニセンは「Shelter」が含まれるセットリストでコンサートツアーを廻った。
まさに上のティザー映像にあるものだ(ちなみにこちらは初回盤Aのバージョンだ)。
完全なものは「二十世紀 FOR THE PEOPLE」を購入して確認して欲しい。
(いかにもな「Shelter」は初回盤A、歌い方こそビルボードLIVEなだけに綺麗めだが楽曲の扱いを垣間見るなら初回盤Bを入手するのが良いだろう。)
背伸び気味の20代から、30代、40代を経て、50代の大人の深みが垣間見える歌声へと。ある意味「Shelter」は坂本昌行の歴史を刻み続ける楽曲といえる。
この先も新たな歴史を刻み、オーディエンスを沸かせることとなるのだろうか。その動向を見守っていきたい。