インドネシア唯一のデカコーン Gojekを解説してみる [Part2]
2019年4月にインドネシア語のニュースでデカコーン(時価評価が10B米ドルの呼称)の仲間入りしたと報じられスタートアップ界隈で非常に話題となったGojek(ゴジェック)。
先週更新した[Part1]では多くの反響を頂き驚いてます……
また個人的にサポート頂いた方もおり、本当に感謝しております!
今日はGojekアプリの簡単な解説、また現在のアプリに至るまでの過程を掻い摘んで解説してみます。
1.単なるライドシェアAppではない!Super Appへの進化
現在Gojekが提供するアプリ画面です。
パッと見るだけで多くのサービスが提供されている事が分かると思います。
バイクタクシーから、Uberのような乗用車の手配、日本交通アプリのようなインドネシア最大手タクシー会社BlueBirdの手配、フードデリバリー、書類など郵便物が簡単に送れるバイク便、お得なディール情報が得られるモノまで数多くのサービスが提供されています。
またMoreを押すと更に多くのサービスが提供されていることが分かります。
今では、買い物代行、引越しなどのトラック手配、マッサージ派遣、部屋掃除の派遣、ランドリーサービスの提供など幅広いサービスを提供しており、中国Wechatが提供するSuper Appのチャット機能がない版*と想像して頂けると理解しやすいと思います。
*以前からドライバーとのやりとり用のチャット機能は提供されていますが、今後友人同士でのやり取りが可能なチャット機能の提供を開始すると、つい先日アナウンスされました。
またOTA(=Online Travel Agent)と連携し旅行手配もできると言ったニュースも出てきています。
2.バイクタクシーOjekの非稼動時間の有効活用で躍進
[Part1]にも触れているがGojekは元々は街中にいるバイクタクシーOjek(オジェック)をネットワーク化してスタートしています。
元々、Ojekはオフィスビル、ショッピングモールなどの出口付近で十数台が待機しており、移動手段として利用されていました。
当然、移動手段としての利用のみだった為、[朝、昼、夕方]以外の時間の稼動はほとんどなく、Gojekが普及する前はOjekの運転手はいつも暇そうにバイクの上に横たわって寝転がっていました。
Gojekは、このOjekの非稼動時間に目をつけて、人以外を運ぶ仕事を生み出す事で大躍進を遂げて行きます。
初期は2サービスを展開してました。
1.GO-RIDE:バイクタクシー
Ojekの時は都度、料金を運転手と交渉をしなければならず、非常にストレスが掛かる状況でした。それをアプリで行き先を事前に入力する事で金額レンジが明示され、交渉要らずで移動できる事が消費者に受け入れられていったように思います。
2.GO-SEND:バイク便
書類などの郵便物を送ってもらうバイク便。
人を運ぶ以外の仕事がなかったOjekの非稼動時間に目をつけて、まずは書類などの郵便物を送るバイク便サービスを展開していました。
人以外を運ぶ為、縄張り関係なくアプリで注文を受けるを可能にしました。
続いて数ヶ月後に以下2つのサービスを展開していきます。
3.GO-FOOD:フードデリバリー
初期は加盟店舗など関係なく、レストラン情報をどこかのレストランサイトから引っ張ってきて、メニュー注文を可能にしていました。
今は加盟店をしっかりと獲得しており、メニュー情報もしっかりと入っている状態になっています。
4.GO-CART:買い物代行
登録されている対象スーパーマーケットへ食材、生活用品などをGojekの運転手が代わりに買い物に行き、家まで届けて貰えるサービスです。
米国ではInstacartなどが有名ですが、それをOjekの暇な運転手を巻き込んで実現していきました。
このように初期は、今のようなSuper Appではなく、Ojekの非稼動時間を活用し、Gojekの出現によりOjekの運転手の稼ぎを従来の3-4倍以上にする事で、ブラックな世界であったOjekの運転手を大量に獲得することに成功しました。
余談ですが現在もGojek運転手は、従来のOjekのように待機場所は存在している為、待機場所を仕切っている人へは、おそらく運転手から稼ぎの一部がしっかりと上納されていると思います。だから本来、黒い世界だったにも関わらず、嫌がらせも少なく順調に運転手の増加を実現出来たと思われます。
3.イノベーションをサポートする政府トップの姿勢
Gojekの進化を語る上で触れておきたい象徴的な出来事があります。
2015年12月にインドネシア運輸省よりGojekのようなオンライン型のバイクタクシー手配サービスは「公共輸送機関としての規則を満たしていない」と言う理由で運営を禁止すると言う発表がありました。
この発表がされた時は、インドネシアのスタートアップ界隈、投資家界隈がザワついたのを今でも鮮明に覚えています。
ただこれには続きがあって翌日の昼には、
なんと大統領自ら「Ojekは国民に必要とされている存在で、困らせてはいけない。禁止するのではなく整備をするべきである」とTwitterでコメントし、運輸省からも正式に禁止する声明の撤回が発表されました。
「そもそもOjekと言う存在が違法であったにも関わらず、オンラインで手配するプレイヤーが急進しているからと言って禁止するのはおかしい」と言う背景には、「Ojekの運転手のような人たちは稼ぎが不明で税金なども取れる対象ではなかったりと、色々と整備されていない事が多かった為、これらのサービスを契機に逆に運転手のデータ(収入、ユーザーからの評価含む)を収集する事が可能となり、いい意味でグレーで、ブラックボックスであり続けた領域を見える化する事が可能となる」と言ったことを考えて、オンライン型のバイクタクシー手配サービスの禁止を撤回する声明に至ったのだと考えています。
この件以降もジョコウィ大統領率いる政府のスタートアップへの姿勢としては、
1.テクノロジーが進化、そして世の中に浸透する事で、今まで実現していなかった大きなイノベーションが実現出来るようになる
2.これまで見えていなかった領域がデータで見える化される事で、新しく今に即したルール整備を可能とする
と考えているように感じています。
何でもかんでも規制するのではなく、まずはイノベーションを促し、その後、適切な形で規制含めて整備して行く姿勢は、スタートアップからは非常に心強い政府であると言えると思います。
次回はGojekが提供する決済サービスGo-Payの解説を出来ればと考えています。
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