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プレス強度の新指標「PPDA」を日本の育成年代用にチューンする、という挑戦

こんにちは。TKB84です。

最近公開されたフットボリスタラボ会員限定のインタビュー記事で、ヨーロッパの育成年代でのデータ活用について、興味深い記述がありました。

近年名前を聞くことが増えたサッカーの新指標の1つ、PPDAをFCミッティランではユース年代から活用しているというのです。

なぜ?
インタビュアーの結城さんのツイートに記述があります。

「そもそもプレッシングチームの指導者は、頑張れ!みたいな指示に嵌りやすく、数値化してプレッシングの効果を選手に伝え辛い。だから細かいことは判らずとも、プレッシングが効率的なのか?を客観視するんだ」

まさにそのとおりですよね。

ただ、PPDAは取得するのが結構大変で

育成年代でも使えるように、プレスの強度を定量的に、できるだけ簡単に測る方法は無いのか?忙しい学校の先生方でも使える指標はないのか?

実は、プライベートでそのようなテーマを持っていろいろなデータ見ながら試行錯誤していて、それがおおよそ完成したタイミングでした。そんなさなかにこの記事が出てきたのでびっくりしましたが、折角の機会なのでnoteにまとめようと思いました。

ダメ出し含めていろんなご意見をいただきたいです。

結果だけ知りたい人は、目次から最後の「結論編」まで飛ばして読んでください。

予備知識編

▶PPDAって?定義は?

ここで少しおさらいです。PPDA(Passes Allowed Per Defensive Action | 守備アクション1回あたりの相手のパス本数)は、日本語訳の通り、1回のディフェンスアクションの間に何回パスを通されたか、つまり、どれだけ相手にボールを持たれていたか、持たせなかったかを示す、一般的にはプレス強度を示す指標の1つとされています。

例えばワイスカウトでは、下記のように定義しています。他社もだいたい同じだと思います。

PPDA=敵陣側60%から出されたパス本数÷そのエリアで起こった守備アクション
※守備アクション:ファール、インターセプト、勝ったディフェンスデュエル、スライディングタックル

というのがPPDAの定義です。

PPDAの数値が低ければプレス強度が高かったと考えることができ、逆に低ければプレス強度が低かった、もしくは低い位置でブロックを作っていた、と考えることができます。

▶PPDAの算出に必要なデータって?

では、真面目にこの定義に基づいてPPDAを求めようと思ったら何が必要でしょうか?

1. パス本数のカウント
2. パスエリアの入力
3. 守備アクションの入力
4. 守備アクションのエリアの入力

どう考えてもしんどいです。笑

これを育成年代で、やろうなんて、よっぽどクレイジー(褒め言葉です)なスタッフがいるか、スタッフがめちゃくちゃ潤沢なチームにしかできない芸当でしょう。(そんなチーム日本にあるのかな…?)

▶育成年代でも使える指標にするには?

ただ、育成年代でもプレス強度の目安となる尺度があったらいいのは間違いないと思います。

ということで、冒頭で引用した記事に出てくる、育成年代でも使えるように、プレスの強度を定量的に、できるだけ簡単に測る方法は無いのか?という本記事のテーマに戻ります。

インタビュー受けているミッティランや他のヨーロッパのチームのようにアナリストのリソースが潤沢じゃない日本の育成年代でも、使える指標を。

精密じゃなくてもいいんです、客観視できさえすればいいんですから。

そんなことを念頭に置きながら、進めていきたいと思います。

実装編

▶僕たちには武器がある

さすがに全てを手動で取得するのは現実的ではありません。忙しい学校の先生方の味方でありたい、そんな方にも使える指標にしたい。

そうだ、僕たちにはハドルアシストがある。

そうだ、僕たちにはハドルアシストがある。

月1万円くらいで、自分たちの試合を24時間以内にブレイクダウンしてくれる素敵なサービスが。映像もデータも見れてしまうサービスが(宣伝です)

何が素敵かって、

月1万円くらいで、スタッフが頑張ってデータ入力しなくても、選手にもスタッフにも(必要なら保護者にも)スマホで映像を共有できて、プレー集も簡単に作れて、しかもデータも見れちゃう、そんな環境を用意できてしまう、そこなんです。

今回のテーマに関連したところで言うと

CSVでデータも取り出せる。パスデータも入力されている。

というところでしょうか。パス数を数える作業って、膨大な労力が必要なのに、活用方法がかなり限定的だと思うので、、、

今回は、そのハドルアシストで入力されたデータでどこまでできるか、チャレンジしてみようと思います。

▶使えそうな指標を洗い出す

ハドルアシストが素敵なのは、データを勝手に入力してくれることはもちろんなんですが、時間帯ごとの数値も集計できるってことなのです。なので、試合内での推移も把握できます。

さて、今回PPDAを算出するのに必要なのは、

パスデータ と 守備アクション

でしたよね?

それぞれアシストのデータで使えそうなものがないかを拾い出してみます。

パスデータ
これは問題なさそうです。ハドルアシストでは、

D3/M3/A3ごとのパス本数、成功失敗

のデータがのそれぞれに区分されて出てきます。

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こんなグラフも自動で生成されます(今回はCSVでダウンロードしますが)

守備アクション
こっちは手強いです。アシストの項目に、タックル、や、デュエル、という項目が無いので。。。

守備アクションの代替案
”守備アクションの成功”ってつまり、”ボールを奪って攻撃に転じた場合”とも言えるかなと思いまして…そうすると良い指標がありました。

アタッキングトランジションの数

です。これを採用しようと思います。

▶ここで問題発生…

パスデータはD3/M3/A3でエリア分けしているのですが、トランジションはエリア分けされたデータが出てきません…

追加で自分で入力するということも考えましたが、今回の本旨の「簡単に」「誰でも」使える指標にするためには、できるだけ追加の作業はせずに済むようにしなければいけませんよね。

なので、エリアを勘案するのを放棄することにしました。

結論編

▶プレス強度の傾向を測る「Simple PPDA」

さて、ようやく結論です。

先ほどまでの内容に基づき、Simple PPDAというスタッツを定義します。
計算式は

Simple PPDA=相手チームのパス成功数÷自チームアタッキングトランジション数

としました。

数値としては、自チームがボールを取り返すまでの間に、平均何回パスを回されているか、という意味になるかと思います。

アシストからダウンロードしたCSVをGoogleスプレッドシートに貼り付けて、あらかじめ用意しておいた計算式を動かせばあっという間に15分単位のSimple PPDAを算出できます。

もちろん、本家PPDAに比べたらまったくもって甘々な指標ですが、

できるだけ簡単に
誰でも使える
プレスの強度の傾向がわかる

という当初の目的には近づけたのではないかなと思っています。

▶アウトプット

ダミーデータでグラフも作ってみました。時間帯ごとの推移を見れるようなイメージです。

どの時間帯にプレスが機能してなかったか、相手にボール持たれていたか、おおよその傾向は掴めるかなと。

作り方でいうと、GoogleスプレッドシートにハドルアシストのCSVを貼りつけてグラフまで作り、Googleスライドに貼り付けています。

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いかがでしょうか。

本稿は以上となります。

色々ツッコミどころ満載だと思うので、是非忌憚なきご意見ご感想を聞かせていただけたら幸いです!みなさんと一緒にブラッシュアップしていきたいです!

PS
ハドルアシスト使ってみたい!という方はまでDMくださいませ…笑

https://twitter.com/tkb84_hudl



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