上海での初個展「ひかり」:中国での写真家デビューと成長の記録
2015年、Takaaki Sanoの写真家としてのキャリアが幕を開けました。中国・上海での初めての個展「ひかり」がそのスタートでした。Sanoはもともと日本で生活していたものの、中国での仕事が決まり上海に移住しました。その頃、友人である「ホームレス小谷」が上海まで訪ねてきて、彼の紹介でギャラリーDA ATTICと出会います。初めての土地、初めてのギャラリーの訪問は、期待と不安が交錯するものでした。Sanoは当時、家庭用アルバムに自分の写真を印刷していたため、これを手土産として持参したのです。
そのギャラリーは、ビルの屋根裏部屋にある隠れ家的な場所でした。オーナーのC.C.にアルバムを見せると、彼は「わかるよ」と日本語で共感し、「メインストリームのアーティストよりもアンダーグラウンドで活躍するアーティストを応援したい」と話してくれました。そしてSanoに「ぜひ1ヶ月の個展をここでやってほしい」と依頼が舞い込んだのです。
展示のテーマ「ひかり」は、孤独な日々を送っていたSanoの10代の頃の記憶、特に夕陽の光を表現したものです。このテーマには、光と闇の対比、希望と孤独が込められており、観客の想像力に委ねられるような構成でした。さらに、展示準備にはアーティスト・原田とおる氏のサポートもありました。
個展が始まると、C.C.はプロモーションに力を注ぎ、多くの人々に展示を紹介しました。来場者の中には、来中公演中のミュージシャンもおり、展示会場がぎゅうぎゅうに埋め尽くされる日もあったといいます。当時、名刺を持っていなかったSanoは、メモ用紙を名刺大に切って手書きで対応していました。このユニークなアイデアはSNSで話題となり、さらに多くの来場者を呼び寄せる結果となりました。
杭州での展示:Kaoru Inoueのイベントと新たな挑戦
上海での展示が盛況を収める中、C.C.から突如、杭州でのDJ Kaoru Inoue(a.k.a. Chari Chari)のイベントで写真を展示してほしいとの依頼が舞い込みました。展示会場は、杭州のユースホステルで、ギャラリーとは異なるオープンな空間でした。Sanoが現地に到着すると、キュレーターの「タマちゃん」がすでに設営を進めており、作品は見事に額装されていました。この杭州の展示では、ススキと太陽の溶け込んだ写真や、雪の結晶の作品など、自然の一瞬を切り取ったものが多くの来場者に感動を与えました。
Sanoは、こうした展示準備が進んでいく様子を振り返り、「中国では、アーティストが作品に専念できるように、周りのサポートが充実している」と語っています。彼の作品には、恋人への思いが色濃く反映されており、彼の言葉を借りれば、「愛する人がいると作品のクオリティが飛躍的に高まる」というのです。この当時、彼の作品には、恋愛がもたらすエネルギーが溢れており、その感情が作品を通じて観客に強く伝わっていったのでしょう。
中国での活動がもたらしたもの
こうして、上海と杭州での展示を通じて、Sanoの写真家としての存在が中国のアートシーンに広がっていきました。恋人への思いや友人の支援、そして中国のギャラリーの協力によって、彼は個展未経験ながらも多くの成功を収めました。この経験を経て、彼は翌年、日本での写真家活動を本格的にスタートさせ、10年にわたるキャリアの礎が築かれました。
上海と杭州での展示は、Sanoにとって単なる活動の一環ではなく、彼が写真家としての自己を見つけ、育てていくための重要な転機だったのです。このようなエピソードを通じて、Sanoがどのように中国でデビューし、アーティストとして成長していったかが浮かび上がってきます。
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