不動産鑑定士試験との出会い
こんにちは。おざわです。
今回から不動産鑑定士試験についてお話ししていこうかと思います
これまでは、「試験勉強を始めようか悩んでる方へ」「試験勉強を始めようと決めたら伝えたい事」として、試験勉強全般に関する大切な事をお伝えしてきました
※これらは下記記事をご覧下さい
<試験勉強を考えてる人へ ~悩める人へのメッセージ~>
<試験勉強をすると決めたら ~挑戦する人へのメッセージ~>
今回は、不動産鑑定士試験について、どんな職業・試験なのか、受験したきっかけ、合格までの道のり、今後の展望など、お話しできればと思っています
① 不動産鑑定士って?
まず不動産鑑定士という職業について簡単にお話ししますと、、、
不動産鑑定士は、土地、建物(住宅、オフィスビル、マンションその他)など、あらゆる不動産の価格を判定するプロフェッショナルで、この鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務となっています
例えば、銀行、信用金庫など金融機関が保有している不動産の価格を出したり、国や都道府県が行う地価公示・地価調査、相続税・固定資産税の評価をしたりする仕事が挙げられます
その他個人や法人が不動産を売買、賃貸する場合に適正な価格が知りたいという様な場合、土地の有効利用・不動産投資などの関連業務など不動産に関するアドバイス、コンサルティングをしてほしい場合にも不動産鑑定士が登場します
ただ、不動産の価値は、時代や社会情勢とともに変化していまして、特に昨今のコロナウイルスが猛威を振るう状況では、その需要の程度不動産の価格にも少なからず影響を及ぼすものと言われています
また土地に付随する借地権・借家権などの複雑な権利関係、地代・家賃などの経済価値が絡み合ってきたりと業務範囲が複雑・多岐に渡るため、不動産鑑定士は専門的知識を駆使して、不動産の適正な価格を導き出すという社会的役割を担っているということになります
不動産鑑定士の働き方としては、最初は鑑定事務所に所属して働くケースが一般的です。その後、独立開業して、経営者として仕事するケースも多く見られます。この点、弁護士法人や税理士法人とは異なり、不動産鑑定業者の業務範囲は制限されていないため、例えば、他分野の専門業務や専門知識を持つ有資格者と共同で業務を行うといったように、業務の領域を徐々に広げながら仕事をすることも可能となっています
また、他の士業と比較すると、日本国内で、弁護士約41,000人、公認会計士約31,000人、税理士約78,000人、司法書士約23,000人、行政書士約48,000人、社労士約42,000人に対して、不動産鑑定士約9,500人です(2019年時点)
このような数字からお分かりの通り、他の士業から比べても圧倒的に人数が少なく、認知されにくい資格者となっていると考えられます
さらに不動産鑑定士の年齢構成については、40~49歳が全体の3割弱を占めていて最も多いものの、60歳以上が全体の4割超を占めており、現状かなり高齢化が進んでいる業界であるといえます。ただ、若年層が現状少ないということは、今後若い世代で、不動産関連のビジネスに興味があるといった方からすれば参入障壁が低く、むしろチャンスなのではないかと言えます
また、不動産鑑定士の勤務先の業種は、不動産鑑定業が約64%と最も多いが、不動産業(代理・仲介・調査等)が約14%、銀行・信託銀行等の金融関係が約8%などの業種にも勤務しているようですね
そして、不動産鑑定士が必要とされる今後のトレンドとしては、以下のようなものがあります
■証券化不動産・J-REIT等の分野の拡大
■環境保護を意識した不動産投資(ESG投資など)
■増え続ける空き家問題
■農地の鑑定評価(農地の有効利用)
■海外不動産の評価(国内企業のグローバル化)
➁ 不動産鑑定士試験ってどんな試験?
不動産鑑定士試験についても、簡単にお話ししていきますね
【不動産鑑定士試験】
昔から司法試験・公認会計士試験と並んで3大難関国家試験なんて言われますが、年1回の試験で毎年5月に短答式試験、8月に論文式試験があり、短答式試験をパスした受験生のみが論文式試験にコマを進めることができます
そして、その2段階の試験を合格した人が実務修習を行い、卒業試験となる修了考査に合格した後に、不動産鑑定士に登録することができます
不動産鑑定士を目指した動機は、「不動産に興味・関心があったから」(約25%)、「キャリアアップに役立つから」(約22%)が多く、次いで「高難易度資格を取得したかったから」(約19%)が多いです
短答式試験の合格率は、例年30%程度。1,700人程度の人が受験して、500~600人程度が合格しています
また、論文式試験の合格率は、例年14%程度。700~800人程度の人が受験して、110人程度が合格していますね
短答式は、鑑定理論(40問)・行政法規(40問)の2科目で、5つの選択肢から正解を選ぶ形式で、1日の午前・午後2時間ずつ試験を行うものです
これに対し論文式試験は、丸3日間の試験日程で、鑑定理論(論述・演習)・民法・会計学・経済学と科目も多く、短答式と違って解答用紙に記述していく試験のため、難易度がグッと上がります。
現行の不動産鑑定士試験においては、論文式試験の方が合格までに要する期間が長期化している傾向にあります
実際、短答式試験合格までの受験回数は、1回目で合格が約73%と多数を占め、2回目は約24%となっているが、論文式試験合格までの受験回数は、1回目約16%、2回目約22%、3回目約22%、4回目約13%、5回目以上約27%となっており、1、2回目で合格する人は少数にとどまっています。年に1回の試験なので、なかなか厳しい現実ですね。
また、他の試験との相性という点でみていくと、宅建士試験とはとても親和性がありますね。不動産関連業務という意味でも受験科目が似ている意味でも、とても近しい領域の試験です。
不動産の売買・賃貸の仲介・代理を行う「宅建士」と不動産の適正価格を求める「不動産鑑定士」は、業務内容こそ違いますが、非常に密接な関係にありますので、両方の資格を持っていれば、クライアントへ総合的な課題解決が可能となり、ビジネスチャンスを広げることができます
③ 受験したきっかけ
受験したきっかけは簡単です、父が35年前開業した鑑定事務所を継ぐためでした
父が創業した鑑定事務所の跡取りになるためには、不動産鑑定士の資格を取らなければならない、ということで受験を決意したのがきっかけでした
僕の場合は、他の人と比べてとても特殊なケースだと思います
というのも、鑑定士を目指そうという方に多いのは、下記の場合がほとんどだからです
✅不動産関連の会社に所属し、キャリアのステップアップのため
✅独立開業できるため・定年退職に縛られず生涯現役で働けるため
✅不動産の仕事が好きで、その最高峰の資格に挑戦したいため
ただ、過去noteでもお話しした所ですが、父は僕が28歳の時にすでに他界しており、会社は母と残りの社員とで何とか継続していました
そのような状況の中、35歳で今後の自分の人生をどうしたいのか、と向き合い、会社の後継者になろうと決意し、当時30代中盤・全くの異業種・仕事と受験の両立といういばらの道を覚悟して、鑑定評価の世界へ飛び込みました
いま振り返ってみても、あまりにリスキーで無謀な挑戦でしたが、今になってみれば挑戦して本当によかったと思っています
④ 合格までの道のり
そして現在の職場に転職し仕事を一から覚えながら、仕事以外の時間で不動産鑑定士試験の勉強を進めました
この期間は業務を必死に覚えるのと、試験勉強の両立で特に大変でした。
でも、
・会社を継ごうと決めた気持ちは本気であること
・社会人受験生でも必死に勉強すれば受かることを証明したい
という思いから、どんなに仕事が忙しくても帰宅してから毎日深夜まで勉強を続けていました
ただ、決してすんなり合格できた訳ではありません。2016年に短答試験に1点差で涙を飲み、2017年に短答試験合格後も論文試験で不合格となりました。
そして、入社して3年弱が経った2018年に、やっと不動産鑑定士試験に無事合格することができました
そして、すぐに実務修習をはじめ、修習修了後の2020年3月に無事不動産鑑定士の登録をすることができました。
⑤ 今後の展望
おかげさまで2021年4月1日、前代表から引き継ぎ、会社の代表取締役となりました。
代表は引き継ぎましたが、通常業務に加え、今後会社経営に必要な、会計財務の勉強、営業、人材育成など、今後の課題は山のように存在します。そういう意味では、真の代表取締役になるまでにはまだもう少し時間を要すると思っています。
会社の経営を担うにあたって、自社の経理や会計についてしっかり見て学び、また人材の採用方針も明確化し、信頼できる同年代や若手を積極的に迎え入れなければなりません。
さらに、今後の事業内容についても、先代から続く取引関係を大切にしながら、新しい仕事先の開拓やしくみづくりにも挑戦していきたいです
また、自分が今後仕事していく鑑定業界が少しでも盛り上がり、不動産鑑定士の知名度、社会的地位の向上に繋がればと、東京都の協会をはじめ、不動産鑑定業界の中枢に関わるような様々な活動にも参加していくつもりです。不動産鑑定士は、不動産の分野では最高峰の資格であり、権威もある。そんな鑑定士が現状に甘んじてしまったり、考え方がこり固まらないよう、今の時流や価値観に触れていくことが大切だと考えています。
さらに力を入れたいのが、専門外の分野との協業。今後、新型コロナをきっかけに急速に変化している今の世の中で、デジタル・グローバル化がさらに進み、業界ごとの縛りやあらゆる参入障壁が取り払われる時代が来るのではないかと思っています。
事業を始めたい、投資・資産運用をしたいと考える個人や法人のニーズは今後も増えていくのではないか、鑑定士の知識や経験が必要になる場面はまだまだが出てくるのではないか。そんな意識で日々仕事しているか、そうでないかで、世の中の変化に対応できるかが決まる。そんな素早く対応によって、他社と差別化し社会に貢献できる会社でありたい。そんな風に考えています
既存のニーズはしっかり見据えた上で、新たなニーズにも柔軟に対応していける会社でありたいし、そういった組織を作っていきたい。「古い」「仕事が固定的」といった鑑定士の持つネガティブなイメージを払拭し、新しい価値観を構築していくことも、自分たちの世代の使命だと思っています。
先細りの業界だと言われることもありますが、私は楽しさと希望を感じて日々仕事に取り組んでいます。そんな前向きな気持ちを大切にしながら、これからも挑戦を続けていきたいと思います
以上が今後の展望になります。
⑥ 最後に
今回は、不動産鑑定士はどんな職業なのか、どんな試験なのか。また、受験したきっかけ、合格までの道のり、今後の展望などお話しさせて頂きました。
これを機に不動産鑑定士という職業に興味・関心を持って頂ければ幸いです。
ではまた次回お会いしましょう。
最後までどうもありがとうございました。
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