7月27日(月)マーケット情報〜低迷する米実質金利と金価格高騰、新興国中銀さらなる禁じ手へ〜
7月25日(土)朝刊から気になる記事 - 総合4:米の実質金利 過去最低に進むドル安、株式などに流入 金は最高値に迫る
*物価連動債(7/23にUS10YTIPSの入札あり、史上最低値 −0.93%)
米国で、物価と比較した金利の水準である実質金利が10年金利でマイナス0.9%と過去最低の水準に低下した。現預金を抱えていては物価の伸びの分、損をするため、ドルの預金や国債などから株式や金などにマネーが動いている。金は最高値が目前だ。世界で実質金利が低下し、資産高につながっているが、通貨価値の下落による混乱を懸念する声もくすぶり始めている。
実質金利は、見かけの金利(名目金利)から物価変動の影響を除いたもので、預けたお金(借りたお金)の実質的な価値の変化を映す。マイナスは物価上昇率が名目金利を上回る状態。金融機関にお金を預けて利息が増えるペースよりも、モノの値段の上昇の方が速く、預金者に不利になる。逆に債務者には有利で、投資や消費が促される。
米国では10年の実質金利の低下が著しい。6月中旬から低下に拍車がかかり、22日時点ではマイナス0.9%前後と欧州危機が深刻化した2012年に付けた従来の過去最低水準を下回った。
急速な低下の原因は、金融緩和と財政出動の組み合わせにある。
米連邦準備理事会(FRB)は新型コロナウイルスへの対応で、政策金利を0~0.25%まで引き下げたうえ、国債を大量に買い10年物国債利回りは0.5%台に低下している。英スタンダードチャータード銀行が「FRBは景気下振れを懸念している」として、22年末までの利上げ予想を0.5%からゼロに変更するなど、緩和の長期化観測が強まっている。
一方、大規模な財政出動で、物価上昇率の見通しは高まり始めた。物価連動債から計算される物価上昇率の市場予想は3月の0.5%から1.5%に上昇し、実質金利の急速な低下につながった。米政府と共和党は第4弾となる財政出動の協議を進めている。
米実質金利の低下を背景にドル安が進んでいる。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するドルの総合的な価値を示す指数は23日、94台と3月の安値を下回り、18年9月以来、1年10カ月ぶりの低水準となった。対ユーロの下落が大きい。ドル円相場は一時、1ドル=106円台前半まで円高が進んだ。
行き先を探すマネーが向かっている代表例が金だ。ドルや円、ユーロなど主要通貨の金利は金融緩和でゼロ近辺になり、金利のない金の相対的な魅力が高まった。
金の国際価格は足元で1トロイオンス1890ドル前後と11年に記録した史上最高値(ニューヨーク市場の先物で1923ドル)が間近に迫っている。昨年末比では25%上昇しており、各国通貨と比較すると強さが際立つ。
国際決済銀行(BIS)が算出する60カ国・地域の貿易量で加重平均して通貨の相対的な強さをみる名目実効レート(直近20日時点)は、最も上昇したユーロでも年初来で4.6%高だ。米ドルは3.9%高、スイスフランが3.5%、日本円も2.9%高にとどまる。一方、ブラジルレアルなど新興国通貨は下落が鮮明だ。
金は特定の国のリスクにひも付かず「無国籍通貨」とも称される。コロナ禍で米国すら経済の先行きが不安視され、金に資金が集まっている側面がある。各国政府が大規模な財政拡張に動いた結果、「国が発行する通貨価値が毀損すると懸念した動きも強まりつつある」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)。
コロナ禍で踏み込んだ政策も増えている。「金の上昇は、各国で金融政策と財政政策が一体化しつつあることへの投資家の懸念が反映されている」(マーケットアナリストの豊島逸夫氏)との指摘もある。
実質金利、9カ国・地域でマイナス 高リスク資産にも資金
実質金利は各国で低下し、資産価格を押し上げている。20カ国・地域(G20)に加盟する18カ国・地域(独仏伊をユーロ圏として統合)のうち、政策金利と直近の消費者物価指数(CPI)を基に算出した実質金利をみると、9カ国・地域でマイナスとなった。
日本や米国、ユーロ圏、英国など先進国のほか、一部の新興国にも実質金利のマイナスが広がっている。トルコでは物価上昇率は12%超だが、相次ぐ利下げで政策金利が8.25%に下がった。
市場には「実質金利は資産の行方を決める最大の材料。実物資産や株価は堅調だろう」(英ヘッジファンド、ユーリゾンSLJキャピタル)との見方が広がっている。
ハイテク株高の裏側にも実質金利の低下があるとされる。成長企業は利益を出し投資を回収するまで時間がかかる。実質金利がマイナスだと投資のコストが小さくなる。投資家は将来の収益から株価の妥当水準を計算する際に金利を加味する。
ただ、こうした政策による株高は「過剰な流動性供給と実質金利のマイナス化の組み合わせから生じたあだ花」(SMBC日興証券の野地慎氏)と持続性への懸念も根強い。低格付け社債や不動産などリスクの高い資産に資金が向かっている。
7月27日(月)朝刊 - 1面:分断の米国 デジタルの魔力(上) SNS巧者が操る民意 大統領選、広告費前回の3倍 深層心理動かす
米大統領選まであと100日。新型コロナウイルスの流行で選挙活動が制限されるなか、4年前の選挙の3倍もの巨費がデジタル空間に流れ込む。民意を操る技術が進化し、SNS(交流サイト)は社会の亀裂を広げる。デジタル時代の民主主義のあり方が問われている。
「Z世代(総合・経済面きょうのことば)は戦うぞ!」。7月上旬、動画投稿サイトのティックトックで100万人近いフォロワーを持つUNUSUAL.さんは呼びかけた。
位置情報追跡か
標的はトランプ陣営のスマートフォンアプリ「トランプ2020」だ。00年代生まれのZ世代の若者らが結託して最低評価を付け、アプリ評価は5点満点の1.2に一時落ち込んだ。
表向きは政治ニュースや選挙集会の情報アプリだが、真の狙いはデータ収集だと若者は警戒する。アプリの利用規約は位置情報を取得する可能性に触れている。「陣営の狙いはジオプロパガンダだ」。テキサス大オースティン校のサミュエル・ウーリー助教授ら研究チームは推測する。
AIが広告選定
大量の広告でどう有権者の深層心理に働きかけるのか。実は広告を選ぶのは人工知能(AI)だ。少しずつ異なる広告を配信し、反響の大きい広告を探す。広告に反応した人と趣味や嗜好が近い人に、広告を集中投下する。本人すら知らない心理傾向をもとに静かに誘導する。
米調査会社イーマーケッターによると、19~20年の米デジタル政治広告費は13億4000万ドル(約1400億円)に達する見通し。前回選挙(15~16年)の3倍超の膨大な資金が流れ込む。いまやSNSが選挙の主戦場となる。
流れにあらがう動きもある。ツイッターは政治広告を禁じ、偽ニュースの温床となったアカウントを削除するが、世論操作との攻防は続く。「個人情報の活用はより深く潜り込み、巧妙になる」(米ニュースクール大のデービッド・キャロル准教授)。民意の分断が加速するなか、世界が注目する審判の時は迫る。
総合・経済:新興国の国債発行倍増へ コロナ下、財政出動賄う 今年、中銀頼みの消化鮮明 市場混乱の火種に
新型コロナウイルス危機で新興国が財政出動の財源を賄おうと国債発行を大幅に増やしている。2020年の新規発行額は前年の2倍近い3兆ドル(約320兆円)前後に及ぶ可能性もある。中央銀行は市場安定や財政支援のため、相次いで国債購入に動く。中銀の独立性が侵され通貨の信認を失うリスクもはらむ。
国際通貨基金(IMF)によると、中国をはじめとする新興国主要40カ国の財政赤字は20年に国内総生産(GDP)比で10.6%と前年の4.9%から急激に拡大する。民間予測も交えて試算すると、新興国全体の財政赤字は3兆ドル超と前年の2倍強に膨らむ。
大半を国債で賄うと仮定すれば、新規発行額は3兆ドル前後にのぼる計算だ。過去に発行した国債の借り換え(1.5兆ドル前後)を含めた発行総額は5兆ドル近くに膨らむ可能性がある。
多くの新興国市場は先進国と比べて国内資本の厚みが薄く、海外マネーに頼る。コロナ危機が深まった3月、新興国の債券市場では域外の投資マネーが大規模に流出し、通貨安が急速に進んだ。
足元では、米国の実質金利が過去最低水準に低下したこともあってドル安が進むが、MSCI新興国通貨指数の戻りはコロナ危機前に比べて鈍いままだ。市場の警戒心は消えていない。
海外マネーに代わる新興国国債の買い手としての存在感を高めているのが、各国の中銀だ。
国際決済銀行(BIS)が6月にまとめた調査では、3~4月に国債などの債券購入プログラムを公表した新興国の中銀はインドネシア、南アフリカ、トルコ、ポーランドなど13にのぼる。その後の導入例も含めると20近くに及ぶもようだ。
米JPモルガンの分析によると、中銀が国債購入に動いた新興国のうち、南アやインドなど主な8カ国は20年に合計で5500億ドルの国債発行や借金を迫られる。新興国全体の新規発行の2割前後を占める。必要額の約9割を現地通貨建て国債の発行で賄い、中銀はその半分を買い上げる。
日米欧など先進国の中銀も国債を大量に買っているが、量的緩和の一環で景気下支えを狙う例も多い。米シティグループのエコノミスト、デービッド・ルービン氏は「新興国の多くは、金融安定や財政支援を目標としている」と分析する。
新興国は中銀の独立性が侵されやすい。中銀が財政赤字を穴埋めする「財政ファイナンス」と呼ぶ状態が定着すると、政府が中銀を「打ち出の小づち」のように使って野放図な財政拡大を続けることになる。市場のインフレ懸念を高め、海外資金の流出を通じて通貨急落を招きかねない。ブラジルや南アフリカなど、財政悪化が深刻なうえに新型コロナの感染拡大が止まらない国も多い。
インドネシア中銀は市場での購入に加え、政府から国債を直接買う直接購入にも乗り出した。通常は「禁じ手」とされ、緊急事態に限った制度改正で解禁された。中銀は購入する国債の利息を事実上、返上するなど、一段の財政支援に動く。
「中銀が国債の直接購入を決断してくれたら支持したい」。5月、南アフリカ財務副大臣のこんな発言が伝わった。中銀はすでに市場で国債購入を続けているが、直接購入にも期待を寄せる。もともと南アでは与党が中銀業務に干渉する姿勢を示すなど、中銀の独立性に疑念がもたれてきた。
JPモルガンのエコノミスト、ジャハンギル・アジズ氏らは「経済活動が正常化すれば、危機前の金融・財政政策の枠組みに戻す。このことを確実に約束する必要がある」と唱える。財政規律や中銀の独立性の信認を保てないと、危機時の市場の安定策が大きな混乱要素に変貌しかねない。
国際:米失業給付、大幅減額へ 月6兆円特例、今月末に期限 コロナ対策、財政に重荷 2500万人対象、消費下振れも
米政権の新型コロナウイルス対策が期限を迎える「財政の崖」が迫っている。現状で2500万人に月600億ドル(約6兆円)を支給する失業給付の特例は7月末で終わる。米議会は追加経済対策に給付延長を盛り込むものの、大幅に減額する方向だ。個人消費の下振れは避けられず、景気も財政も綱渡りが続く。
与党・共和党は27日にも追加の新型コロナ対策法案を公表する。失業給付の増額特例も延長するが「失職前の給与水準の70%を上限とする」(ムニューシン財務長官)。減額するのは、特例加算によって失業者の多くが以前の給与水準を上回る失業給付を得ているためだ。シカゴ大の調査では、コロナ危機前の週給の中央値は688ドルで、失業者の68%が給与よりも多い給付を受けている。
弱者保護を訴える野党・民主党は、週600ドルのまま特例を延長するよう求めるが、共和党は「給与以上の失業給付があれば、だれも職場には戻らない」(クドロー国家経済会議委員長)と強硬だ。給与の70%が失業給付の上限となれば、特例分は平均100~200ドル程度まで大幅に減る可能性がある。
共和党には、財政赤字への懸念も強い。追加対策の規模は1兆ドルを超え、これまでのコロナ対策と合わせて財政出動は4兆ドルを上回る。財政赤字は前年比5倍の5兆ドルに膨らみ、GDP比でみれば25%と第2次世界大戦時並みの水準になる。失業率は20年末時点でも10%前後と改善が進まないとの予測もあり、財政余力には限界がある。
The Bloomberg Open Asia Edition - Five Things You Need to Know
U.S.-China diplomatic tensions continued to simmer over the weekend. Beijing slammed the "forced entry" to its Houston consulate by U.S. personnel and vowed to respond "as necessary." Federal agents and local law enforcement authorities broke into the consulate building late Friday, according to the Houston Chronicle and CNN. Beijing said that U.S. had broken diplomatic conventions by entering "China's national property." The closure of the U.S.'s office in Chengdu drew a crowd.
The two sides may have defused one potential flashpoint on Friday. American officials took into custody Juan Tang, a researcher who'd been hiding out in the Chinese consulate in San Francisco from charges that she'd lied about her PLA ties in her visa application. Details of her arrest weren't disclosed. Separately, the DOJ said Singaporean Dickson Yeo had pleaded guilty to spying for Beijing via a fake consultancy.
Asian equity futures are pointing to a mixed open after U.S. stocks fell on Friday as investors grew anxious about rising tensions with China and a potential stalling of the economic recovery. Spot gold topped $1,900 an ounce for the first time since 2011. U.S. Treasuries turned lower, with Five-year Treasury yields touching an all-time low before bouncing back. Oil held above $41 a barrel in New York.
HSBC denied that it "framed" Huawei and prompted the U.S. probe of the Chinese telecom giant. The U.K. bank has become embroiled in Huawei's legal fight over the extradition of CFO Meng Wanzhou. In its first public comments, the lender said it has no "hostility" toward Huawei and didn't "ensnare" the company. "HSBC did not 'fabricate' evidence or 'hide' facts," it said in a statement. "And HSBC would never distort the facts or seek to harm any of our clients for our own gain."
The pace of new cases in the U.S. slowed and was below the average over the previous seven days, as was the number of deaths. A Democratic lawmaker called for Los Angeles County to restore a stay-at-home order. Spain is scrambling to stay ahead of new outbreaks that prompted the U.K. to impose a quarantine on travelers returning from the country. In Asia, North Korea locked down a city near its border with South Korea after a suspected case and Hong Kong cases held above 100 for a fifth day and Tokyo above 200 for a sixth. Southeast Asia had a rough weekend, including Vietnam reporting its first local transmissions in three months. Infections worldwide total more than 16 million.
Chart of Day
Psychological fatigue with social distancing is emerging as a major challenge for curbing the pandemic, especially among young adults who are less fearful and suffer greater economic and social costs from staying home. Infections among millennials and Generation Z are driving new waves of cases which don't seem to be abating despite re-imposed restrictions. Curbs are proving untenable over a long period, despite initial efficacy in flattening the virus curve globally earlier this year.