野良デザイン#31-35|ビールケースの郵便受け 他
本来の用途を超えて活用される道具たち「野良デザイン」。その蒐集を通して、生活のリアルと、道具の可能性を探る試みです。
野良デザイン#31|ビールケースの郵便受け台
元々何かの店舗か作業場だったのか。引き戸と幾多の板金の組み合わせが印象的なファサード*の前に、金属製の郵便受けを載せたビールケースが置かれている。
赤茶く錆びた郵便受けと建物の板金外壁、そして日焼けしたビールケースの緑。それら素材の時間的な調和が、唐突なビールケースを風景の一部に取り込んでいる。
どこか業務的な軒先の装いも、この無骨な野良デザインを成立させているのかもしれない。
*ファサード:建築物の正面
野良デザイン#32|洗濯カゴのゴミ箱
日本のダンボールの資源再利用率は100%を超えているそうだ。これは海外から輸入したダンボールの量の多さを物語る数字だが、同様に紙資源として再利用される牛乳パックを丁寧に捨てられる人はなんだか素敵だ。
この野良デザインは、そんな牛乳パックの保管のため、樹脂製の洗濯用カゴが活用されている。
中身を綺麗に洗われた牛乳パックは、屋外のカゴに入れられ、乾燥される。軽量化のためのメッシュ構造は、雨水を受け流すにももってこい。コンクリートブロックの下駄も履き、雨天時の浸水も問題ないようだ。
牛乳パックの収集日になると、ゴミ置き場へさっと持って行ける理に叶った活用である。植樹と建物の隙間に収めることで、風でパックが飛ばされることも防いでいる。
野良デザイン#33|植樹と物干し竿のフェンス
家の敷地に沿って均等に植えられた杉の木。髪の毛のように頭頂部だけを残して枝打ちされた奇妙な光景に出会った。
近づいてみると、6本の木を結ぶように2本の物干し竿が固定されており、簡易的なフェンスがつくられていた。
2本の物干し竿はガムテープで固定され、同様に膝丈ほどの高さで各幹に巻き付けられている。
狙いはフェンスを囲うことで得られる心理的な安定か、細い幹の補強か。
奇妙ではあるが、非常にユニークな野良デザインに出会うことができた。
野良デザイン#34|ダンボールのブラインド
路面に面した窓。特に1階の窓は防犯面で気掛かりのことが多いだろう。
この窓は、簾と段ボールの切れ端で視線も遮られている。住人にとって、この窓は不要な開口なのだろう。
窓より少し小振りな簾は針金で窓格子に固定され、簾と窓、簾と窓格子の隙間に挟むように、ダンボールの切れ端が隙間を埋めている。風化の具合から見るに、この状態は長い間継続されてきたようだ。
なんだかワクワクするような、ミステリアスな野良デザインである。
野良デザイン#35|窓枠のシャワーヘッド ホルダー
雨戸の開閉に用いるレールのついた窓枠。その窪みを物置として活用した野良デザインだ。
そういえば、確かに雨戸ってあまり使わないかも。雨戸のレール以外にも活躍の機会があることは、とてもお得。
使用したシャワーヘッドを丁寧に乾かすあたり、持ち主の方のマメさが伝わってくる。
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また次の投稿でお会いしましょう。