野良デザイン#46-50|ドラム缶のテーブル 他
こんにちは。
街に溢れる匿名の創意工夫「野良デザイン」の蒐集。
本来の用途を超えた道具の活用に、生活のリアルや、道具の可能性を探る試みです。
野良デザイン#46|ドラム缶のテーブル
街に人出が戻ってきたこの頃。飲み屋街の活気も懐かしいです。
そんな夜の街で出会った野良デザイン。人の腰丈くらいある大柄なドラム缶を塗装し、屋外席のテーブルとして活用するお店がありました。
飲み屋から軒先の路地へ、人が染み出すように集まる飲み屋の雰囲気はとても良い感じです。室内外が溶け合い、どこまでが店内で、どこまでが公道か曖昧な状態はとても自然。法律上の規定だけでは語れない、場の境界の奥深さに触れることができます。
さて、このテーブル。ドラム缶を活用している点もさることながら、筒状の胴体にびっしりと品書きがされ、メニュー表としても機能している点が面白いです。
月の裏側が見えないように、筒状に書かれた品書きは、その全てを一方向から視認することはできません。けれども、それはこの野良デザインの存在意義を否定するものではありません。
たまたま着いたところから目についたメニューを頼んでみる。それが美味しければなおラッキー。視認性に枷をかけることで、メニューとの偶然の出会いが生まれるのです。
なんだか、友達と飲みに行きたくなっちゃいました。
野良デザイン#47|コンクリートブロックの重石
飲食店の前に置かれたごみ収集用のコンテナ。その蓋を抑えるように、コンクリートブロックの破片が置かれていました。
重石として機能するコンクリートブロックは破損しており、よく見るブロックを半分に割ったような形状になっています。ゴミ袋を片手に開け閉めすることを考えると、重石が軽量であることはありがたいですね。
コンクリートブロックの端部のU字形状も、持ち手として機能しているかもしれません。
野良デザイン#48|段ボール梱包の看板立て
店の軒先に冷蔵ケースを置き、フルーツサンドを販売するパン屋。季節ごとにしゅんが移ろう果物ってなんだか素敵です。特に秋は、美味しい果物がたくさん食べられる楽しみな季節です。
フルーツサンドの中身も、季節ごとに変わるのでしょう。そのことを広告するため、冷蔵ケースの上に手製のPOPを掲示していました。
その裏を見ると、果物が入っていた段ボール梱包を重ねて、看板立てとして活用しているではありませんか。
POPの格納には書類ファイルを使って入れ替えができるようにしており、一方、その土台となる看板立てには季節外れのいちごの梱包。恒久的な構造と、入れ替え可能な一時的な掲示物の対比に、作り手の工夫を見ることができます。
野良デザイン#49|コンクリートブロックの鍵置き
最近は減りましたが、幼い頃は特に、落とし物や無くしものが絶えない性分でした。
ものを無くした時のあのむず痒くなるような感覚。焦りと不安で頭が覆われる感覚は、できれば味合わずに過ごしたいですね。
そういえば幼い頃、近所の公園でお気に入りのキャップを忘れてしまったことがありました。夕暮れ時、父と一緒に帰り道を引き返しながら探したところ、心ある方が公園の柵にキャップをかけてくれており、名前はおろか顔も知らない赤の他人の親切心に初めて触れた思い出があります。
街を歩くと、その親切心に今も触れることができます。
この野良デザインでは、道に落ちていたであろう鍵を置くため、コンクリートブロックを活用しています。
鍵の落とし主からしたら、焦りはキャップの比ではありませんよね。
目に付く場所に置いておいてあげる。ちょっとした労力ではありますが、親切心から生まれた、立派な知的活動です。
次の日、鍵は無くなっていました。無事 落とし主の元に帰ることができたのかな。
野良デザイン#50|ペットボトルの重石
今年の夏も暑かったですね。
すっかり街の風景の一部となったエアコンの室外機。炎天下の冷房効率を高めるには、室外機へ直射日光を当てないことが大切です。
今回のお宅では、室外機の屋根として、不要になった波板トタンや、ベニア板を活用しています。
まったく異なる素材ですが、一つの場所で同様に機能している様が面白い。長い時間 雨と日光にさらされた異素材は、その質感が調和しています。
また、各屋根を抑える重石として、水の入ったペットボトルや、水の入った洗剤ボトルが使われている点も注目です。アメリカから輸入されたとされるペットボトルの猫よけのおまじない。その文脈を汲んだ野良デザインでしょう。
奥のベニア屋根なんか、室外機を覆いきれていないですが、そのくらいのラフさが、むしろ街の居心地の良さをつくっているのかもしれません。
今週も最後までご覧いただきありがとうございました!
あなたの暮らす街では、どんな野良デザインと出会えるでしょうか?
また次の記事でお会いしましょう👋