野良デザイン#51-55|一斗缶のチリトリ
こんにちは。
私たちは、さまざまな工業製品に囲まれて生活を送っています。
私が今叩いているキーボドや、腰を落としている椅子もその一つ。
それらは、設計者や企業の手で、明確な用途を持ってこの世に生み出されますが、街を歩いていると、作り手の想定を超えた製品・道具の活用に出会うことがあります。
私はデザイナーとしての仕事の側、そんな本来の用途を超えた道具の活用を、路上に生息する「野良デザイン」として蒐集し、道具の可能性や、生活のリアルを探る研究を行っています。
今週も沢山の野良デザインと出会いました。早速一緒に見てみましょう!
野良デザイン#51|一斗缶のチリトリ
地域の墓地も兼ねる小ぶりなお寺の境内。緑に覆われた敷地境界線に、面白い野良デザインと出会うことができました。
元々は食用油が入っていたものか。油や塗料の容器として設計されたブリキの一斗缶を、ナナメに切断し、木片の把手を取り付けて、チリトリとして活用する野良デザインです。
雨晒しの中、竹柵で収められた素朴なつくりの掃除道具置き場。プラスチックのチリトリも同居しています。拾うものの大きさによって使い分けているのでしょうか。
大きめのゴミをすくうスコップのような使い方もできそうですね。
チリトリや柵に巻かれたビニールテープのマーキングも、想像が膨らみます。
近寄ってみるとこんな感じ。
一斗缶の底の内側から数カ所ビス留めされた木片が、2本継ぎ足されて把手として機能しています。
一斗缶の錆具合と、把手の風合いがなんともいい感じです。
野良デザイン#52|配管のジョウロ掛け
ガスや水道。現代の家屋は、多くの設備機器がインストールされ、生活インフラが提供されます。
玄関前のガスメーターと、その周囲に絡まる複数のパイプは、今や見慣れた住宅地の景色となりました。
本来、液体や気体を搬送するためのパイプは、軽量なものを掛ける支柱としても機能します。
こちらのお家では、給湯器のパイプにS字フックを掛け、家の前の草花に水を撒くジョウロを保管しています。
野良デザイン#53|タイヤの重石
スタックができ、移動も簡単で便利なカラーコーン。
ポリエチレン樹脂などでつくられた薄肉の構造は使い勝手が良い反面、軽量すぎることで、風に飛ばされてしまうこともしばしば。
海風の強い港町では、車両の足としてつくられたタイヤが、カラーコーンの重石として活用されていました。
そういえば、船の周りにクッションとしてタイヤのバンパーが使われていることもありますね。陸路の移動のためにつくられたものが、海路にまつわる場でも活躍していること、なんだか面白いです。
野良デザイン#54|発砲スチロール箱の植木鉢1
外気の温度影響から、魚介や生鮮食品を守る発泡スチロール箱。
スーパーや魚屋で見かける白い箱と、住宅地の路地裏で出会いました。
元々輸送用の梱包箱としてつくられたものが、草木を植えるための植木鉢として活用されています。
お仕事でお魚でも扱っている方なのでしょうか。
乱雑に積まれた発泡スチロールが、家の前のフェンス沿いに白い塀を築いており、土と緑を蓄えています。
本来その役割を担うプラスティックの植木鉢が、発泡スチロール植木鉢の浸水を防ぐ下駄として使われている点もあべこべですね。
発泡スチロールの土の上に、更に植木鉢が置かれているなど、入れ替え可能な土地ピースとしての活用もみられます。さながら運搬可能な箱庭のよう。
野良デザイン#55|発砲スチロール箱の植木鉢2
こちらも発泡スチロールを植木鉢として活用している野良デザイン。
公道と住居をつなぐ緩やかな階段状のアプローチ。その脇に直置きされた発泡スチロール箱に土が詰められ、緑が顔を覗かせています。
低い重心の直方体が、幅狭で傾斜した不安定な足場に、どっしりと置かれています。
最後までご覧いただきありがとうございます。
野良デザインの蒐集をテーマに、毎月第1・3日曜に更新しています。
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眞木孝明