失明に怯えた8日間
"網膜裂孔"
この単語を知っている人はどれくらいいるんだろうか…
少なくとも僕は初めて聞いた疾患でした。
所謂、網膜に穴が開いている状態。
大きさや数は人それぞれらしいが放置しておくと遅かれ早かれほとんどが網膜剥離に発展して、網膜剥離は処置が遅れると最悪失明の可能性もあるため緊急手術になるのが常だそう。
今回そのきっかけになり得る網膜裂孔を患いました。
"きっかけ" いや、そもそもきっかけなんてあるのか!? その1
ある日の土曜日、趣味の一つであるスノーボードのオフトレ施設で12m前後のジャンプ台でトリックの練習をしていました。
オフシーズンは月一くらいで通っていて、着地は安全な柔らかいマットですがミスをするとヘルメット越しに後頭部を強打することも。
今までも何度もあったし、なんならもっと硬い雪面でも…
その日もミスで2〜3回後頭部を強打しました。
その時は何もなく「あ〜、明日は首が軽い鞭打ちで筋トレ辛そうだな〜」
そんなことくらいしか考えていませんでした。
翌日午前中に起床し日課の筋トレを終わらせて10kmのランニングへ。
はじめて異変を感じたのは折返しの5km地点。
信号待ちをしていると左後ろあたりギリギリ視界に入る辺りに黒い糸のようなものが浮遊している…
「飛蚊症だ!!」
近視が強いと比較的飛蚊症の症状が出る人は多いはず。
僕も例外ではなく、たまにですが飛蚊症で黒い蚊みたいなものが見えることが。
ですが、この時の飛蚊症はいつもよりはっきり見えていてしつこい。
「何かおかしいな」
そう思いながらランニングから帰ってきて午後からは5ヶ月ぶりの美容院。
表参道へ。
イメージ通りのパーマとカットで気分よく帰路へ。
しかし帰りの道中でも手で振り払いそうになるくらいひどい飛蚊症が。
翌日月曜日になると昨日起きていた飛蚊症は収まっていた。
その代わりに、左目だけ視界が白く濁る。かすみ目というやつだ。
ハードコンタクトを使っている人なら一度は経験があるであろう汚れ(タンパク質)が付着した状態に似ている。嫌な感じだ。
コンタクトを洗浄するも、たまに使うワンデーに替えても一向に治らない。
もちろん眼鏡に代えても左目だけ視界が白く濁る。
右目は正常だし左目も全く見えないことはない。
ネットで検索すると症状が酷似しているのは白内障。
「けどまさか40歳そこそこで白内障になるか!?」
という思いしかなかった。
もちろんこの時点ではぶつけても、ましてや誰かに殴られてもいないので網膜裂孔や網膜剥離なんてことは思いもしない。
そんなこんなで1日過ごし翌日火曜日。
起床時から状態は変わっていない。
「これは何かがおかしいかも!?」
そう思って近所の眼科へ。
予期せぬ診断名
受付で症状を告げると視力検査、眼底検査と瞳孔を広げる特殊な目薬を挿される。
6時間くらいはピントが合いづらく自転車や車の運転は禁止らしい。
ドクターに検査機で診察され白内障ではないとのことで一安心。
したのも束の間。
「網膜裂孔といって、おそらく網膜に穴が開いてます」と。
特殊なコンタクトレンズのようなものを付けられ部屋を暗くして再度検査機で穴を確認するドクター。
「あっ、確認できました。レーザー治療をやらないと最悪手術になるかもしれない。レーザーで治ればの話ね。まずレーザー治療をやって治らなければ手術という流れになりますね」と。
いやいや、突然そんな事言われても。ぶつけても殴られてもないし、網膜剥離とかあしたのジョーか辰吉くらいしか知らねーし。
「近視が強い方や加齢だったり、スポーツ等の衝撃や(ぶつけた・殴られたといった)外傷性だったり原因は様々ですが特段珍しい事ではないんですよ」と。
レーザー治療(後に外来ですぐに出来るがレセプト的には手術だと知る)は保険が効くので3割負担で済むらしい。大まかな費用を聞くと
「5万円ですね」
…
…
「たけーーーーーー!!!!!!!」
と思わず叫びたくなったがいい歳した男が叫ぶわけにはいかず、しばし考えてると「手術はうちじゃ出来ないから紹介状を書きましょうか?」と。
ちょうど午前診療の最後の患者なわたくし。
「ちょっと色々考えたいので午後の診察時間にもう一度来て決めていいですか?」
「分かりました」
という流れになりました。
自宅に帰りネットで「網膜裂孔 網膜剥離 手術 名医 東京」
やら、もう色々なワードを駆使して情報を集める。
結果、大学病院や総合病院ではなく、都内で眼科1本でやっている有名なクリニックが候補に上がり、予約制なのでまずは最短でいつ受診できるか確認のTEL。
すると以外にも明日の午前中なら空きがあるとの事。
まぁ分院もあり、ドクターが総勢50名以上在籍していて特に指名をしなければの話らしい。
とりあえずは一刻を争うので
、ここまでのいきさつを話し紹介状持参するという事で明日の午前中の予約を入れる。
その後、近所の眼科に再度伺って紹介状を書いてもらう。
午前中の診察料金も合算で4000円也…
"きっかけ" いや、そもそもきっかけなんてあるのか!? その2
そして翌日水曜日。
昨晩からネットで網膜裂孔の情報を色々集めてみた。
ツイッターでリアルな情報を検索したところ、驚くべきは患った方々はほぼスポーツやましてや殴り合いの喧嘩でなったわけでもなく、ある日突然飛蚊症が起きて…といった感じで何気ない日常でなんの前触れもなく発症した方がほとんど。
なかにはテレワークでZOOM会議していたら突然飛蚊症が起こって眼科に行ったら網膜裂孔…という方も。
網膜裂孔や網膜剥離の起きる原因を調べたところ、近視が強い方は網膜が常に引っ張られてる(緊張している)状態でその部分が薄い人が多いのでなにかしらのきっかけだったり唐突にある日突然網膜に穴が空く(網膜裂孔)ことがあるそう。
けれど朗報も。
網膜剥離まで進んでいなく、網膜裂孔で発見された場合はレーザー治療で90%は治るらしい。
網膜剥離でもほとんど完治するらしく、過去には小林幸子や元長野県知事だった田中康夫も手術を受けたらしい。
(これは紹介された先のドクターにも言われましたが)今回の発症もスノーボードでの後頭部への衝撃が原因か、翌日のランニングでの着地の衝撃か、はたまた近視歴30年ちょっとなので、その過程で今のタイミングだったのか、結果論なので確実な原因は不明。
悲しいかな、いくら身体を鍛えて体脂肪率一桁をキープしようが、健康診断で何一つ引っかかったことがなくても歳を重ねると突然病が襲ってくることもあるというのが現実。
もちろん10代20代でも近視等の理由が重なり運悪く網膜裂孔になる人も少なくないそう。
ちなみに視力のデータ値が-6.0からは強近視の部類らしいです。
なので-6.0以上の方は誰でも網膜裂孔のリスクはあります。
"レーザー治療" 正式名称はレーザー網膜光凝固術 その1
ちょっと前後してしまいましたが、翌日水曜日に予約を入れた都内にある某有名な眼科クリニックへ。
ネットで情報収集はしていましたが、予約制のくせに混み混みでかなり待つと。
覚悟していきましたが、トータル3.5時間で許容範囲でした。
内容は、昨日の近所の眼科でもやった視力検査、眼底検査とそして瞳孔を広げる特殊な目薬を挿される。
それ以外の違った点は診察の前に症状や患ったきっかけをヒアリングする方がいて、今まで書いた事(土曜〜昨日の診察まで)を伝えました。
その後目のレントゲン?のような画像を撮り、やっと診察。
やはり、昨日と同じ診断結果は"網膜裂孔"
そしてすぐにでもレーザー治療が必要とのこと。
しかも1箇所はV字に穴が空いてて、もう一つかなり小さい穴があるとの事。
昨日の眼科では1つとも2つとも言われてなく、ただ穴が開いてるとだけ。
昨日自分なりに出した結論が、効くか分からないレーザー治療(5万円)をするなら初めから完璧に治る手術をしたい、というのが頭にあり、それをドクターに伝えたところ
「この手術は眼科での手術でもとても難易度が高くうちのドクターでも数名しか出来るものはいない。かなりリスクがある手術なので当然ドクターはやりたがらない。レーザーで治る見込みがある方はまずはレーザーで、というのが治療方針です」
と言い切られてしまった。
まぁレーザーで治らないようなひどい穴なら手術の話をされるだろうから、昨日のネットの情報でも90%は完治すると書いてあったし、それでお願いしよう!ということになりレーザー治療の説明を受けました。
"レーザー治療" 正式名称はレーザー網膜光凝固術 その2
説明はかなりエグいですww
穴が空いてたり剥がれかかってる網膜に対してレーザーを点状に当ててその周辺を焼いてその焼け跡を利用して食い止めるという手術。
例えるなら、剥がれかけのポスターに画鋲をいくつも刺して貼り直すようなもの。 またはハンダやグルーガンで止めるようなもの。
しかも目薬で局所麻酔はするが意識もある状態で眼にレーザーを当てて網膜を焼いていくそうです…
今まで怪我やらで何度か手術は受けてる。
すべて全身麻酔で意識ないうちに終わっているが局所麻酔で意識あるのは初めて…
ちょうど午前の外来があと数人で終わるらしく「それが終わったらやりますので。麻酔の目薬だけ挿しますね」と看護師さん。
そしてレーザー手術室なるところの前に移動。
"レーザー治療" 正式名称はレーザー網膜光凝固術 その3
担当のドクターがレーザー手術室に入っていくのが見え、その後すぐに呼ばれました。
そこでもう一度麻酔の目薬を挿され、検診機に頭を乗っけてバンドで固定される。
そして特殊なコンタクトレンズのようなものを付けて「頑張っていきましょう」という合図で手術スタート。
とりあえずコンタクトのようなもののせいで瞬きは出来ず、ずっと青だとか赤だとかの光線?が見えている状態。
「動かないで下さいね」
その言葉にかなりビビる。
カチカチというレーザー出力しているような音だけが鳴り響く。
瞬きは全く出来ないが麻酔のお陰か、痛みはない。
見た目は違うが例えるなら映画「時計じかけのオレンジ」の拷問のワンシーンのような感覚。
15分くらいだろうか、時たまチクチクするような痛みが走る時もあったが無事終わったらしい。
「終わりましたよー。薄くなっていた箇所の周りにも補強で打ったのでかなり頑丈にやっておきました。やれることは全てやりました」
との事でした。
手術とはいえ、レーザー出力のみで日帰り手術なのでこのまま帰っていいし、一応アルコールと激しいスポーツは禁止だけどシャワーも浴びていいし特に日常生活で制限はないとの事。
ランニングについて恐る恐る聞いてみると「レーザーで固めた部分が落ち着くまで2週間位はやめたほうがいいでしょう。まぁ厳禁ではないですが」との事。
次の経過診察は1週間後。
「まわりがさらに白く濁ってきたり見えづらくなった場合は1週間待たずにすぐに来て下さい」
という怖いセリフで締めくくられました。
"レーザー治療" 正式名称はレーザー網膜光凝固術 術後
一日、また一日と経過していくたびに白く濁っていた左眼はどんどん良くなっている気がします。
いや、気ではない。実際視点を動かさずにMacの画面やテレビを見ていると右眼と変わらないくらいクリアに見えるように。
まぁ片方ずつ見比べるとまだ右眼と変わらずとまではいきませんが、かなり症状は改善されてきています。
瞬きしたり視点を動かすと一瞬白く濁るかな。コンタクトが乾いて目に張り付いてズレるような感じ。
天気も味方してくれているのか、この1週間はあいにくの天候。
ランニングも我慢できています。
一回目の経過診察
そして1週間が経ち、一回目の経過診察の日。
剥がれかけていて穴が空いていた箇所も問題ないそう。
白い濁りは網膜に穴が空いた際の硝子体の出血で、おそらく時間とともに吸収されるようです。
ただ、まだ油断は禁物なのでまた2週間後に経過診察となりました。
おそらくそこで問題なければ終了かと思います。
まぁ今後の定期検診くらいはあると思いますが。
この投稿も次回の章で終わりになる事を願って…
一応問題なくホッとしたので本日11日ぶりにランニングを解禁しました。
久しぶりのランは気持ち良かった。
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