見出し画像

絵がうまいだけの人①

学生の頃から図工や美術の時間が好きだった。
何でか分からないけどみんなよりうまくできるし自分は美術で食べていくのだろうという考えを持っていた方は多いのではないかと思う。

おとなしく、クラスでも目立たないタイプではあったが授業中に鋭い角度
からの意見や言動で笑いや関心が起きることもあっただろう
そういったもので自分の存在を表現していたのだと思う

そこで一番自分が出せる、目立てるのが図工や美術であった
絵を描くたびに褒められ、先生にもいいアイデアだねと言われ
この時間だけは自己肯定感が保たれ、時間はあっという間に過ぎていった

中学1年の時体育祭で着るTシャツのデザインを全校生徒で宿題として出され
テーマは龍だった。
このチャンスを流すまいと家に帰り、割り箸にモールを巻き付けそれを見て
デザインをした。うろこを綿密に書き上げ、校旗とともに火を噴く龍に仕上げた。
後日、ありがたいことにそのデザインが採用された。
完成品のデザインは少し変えられていたが顔はデザインしたものと同じだった。このうれしさを家族に伝えたく話したのだが、

「ネットから拾ったパクリだろ、、」
「こんな龍いくらでもネットにある」

その言葉でデザインするということが嫌いになりそうだった。
言われたことを気にする俺は深く傷ついてしまった。

その2年後
絵のうまさを称えられ体育祭の壁に貼る大きな絵のデザインを決めたりする
デコ長に推薦された。
青組と赤組の2組だった。
青組だった為サメを題材に躍動感のあるデザインにした
何度も先生と打ち合わせをして決めていざ完成して壁に貼ると
赤組より遥かに大きかった。
それを朝から赤組の長にしつこく攻められいやな気分で体育祭を迎えた
しかし実際に大きさを計ってみると規定の大きさで相手の設計ミスだった。
さらに先生から相手は銀紙と金紙を使ってるよと言われたので
あまり張りすぎるとまた相手が言ってくるだろうというのを考慮して銀紙を泡の1部分だけに貼った。
それについても完成当日にパクりなら負けても俺のせいではないなと言わんばかりに罵声を浴びせてきた。
結果、僕たちが描いた絵がデコ賞に選ばれたがモヤモヤして終わった

これがもしデザインの社会に出たら体験することなのだろうと思うと
そういった会社を目指すのは諦めたい、そんな思いになってしまった。

それから高校生になった
選択授業では美術を選択した。やはりその時間はとても充実していた
そこでもデッサンは一番うまかったと思う、自分がデザインするものには
必ず批判されると思うと苦手意識があった為そこには力が入らなかった。
見たものをそのまま描くであればうまいも下手もない、何も批判されないから。

月日が過ぎ
進路を決めるとき、1番は美術の専門や美大に行きたかったが
その1年前に親が離婚していたのもあってお金がかかることはできないと
自分の中で判断し、お金のためにできそうな工場に勤務することにした。

履歴書を何の思い入れもなく書き、先生に提出。
ほんとにこれでいいのかと悩み、字をわざと間違えて提出を遅らせる作戦にでた、そのときにあまり話していないクラスメイトがどこに就職するのかと
訪ねられ答えると
「おまえは工場ではない、絵の才能がある。はやく履歴書を止めてもらえ」と言われた。
その言葉でそれが俺に本心だと気づかされた俺は先生のところへ行き
「専門に行きたいです」
と言いに行った。
お金は後から親に返していけばいいそう思い、勇気を振り絞った。

しかし、もう書き直しもなく企業に提出されていた。
「もう遅いよ。腹くくってこの会社に勤めなさい」

自分の軸に従わず他人の意見に一喜一憂する性格
こんな人生でいいのかと強く思った瞬間だった。

面接で中身のない返答をして落とされる作戦もしよう
と思ったが案の定受かってしまい就職することになった。



いいなと思ったら応援しよう!