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奈落の底で見付けた秘宝






僕は6年ほど前

四国の八十八ヶ所霊場をまわった事があります





その頃は東京に住んでいて


全てを捨てるつもりで

住処の荷物をほぼ全て処分し


テントに寝袋

持てるだけの荷物をバックパックに詰め


前にはモカを入れたカバン

所持金は2000円ほど…





……






それは





それまで命を賭けた事がなかった僕が

初めて命を賭けた出来事でした


その時僕にとって

そこに進む以外に道がなかったんです





……





若い頃からずっと

お金の為と言っても過言ではないように


鳶職という危険な仕事で

来る日も来る日も鉄と戯れていた僕は


「何かがおかしい」と感じ始め

方向転換をしました


好きな事に専念する道を選び

やがて十数年続けた鳶職を引退し


ようやく歯車から抜け出しました





それからは倉庫に移り住み

倉庫暮しが始まりました


最低限に出費を抑えた生活です


仕事は月に何回かのバイト

手作りスピーカーの販売もしましたが


収入はわずかでした











当時の僕は

左翼的な思想を持っていて


世界を裏で操る権力者に対し

強い反発心を抱き


反原発のデモ行進にも参加していました





自ら主催していたDJのイベントでも

「騙されるな」と

皆に訴えていました





……





しかし自由に好きな事が出来る

時間を得た代償が


徐々に浮き彫りになりました





その反動を

受け止められる器ではなかった僕は


当時流行していた

合法的な薬物に手を出した事もあり


精神的に追い詰められていきました











次第に僕は信じる力を失い

イベント活動をピタリと辞め


深い孤独の闇の中を

さまようような日々が続きました





そんな中

僕に癒しをくれたのは

モカと自然でした


公園をよく訪れるようになり


突然一斉に飛び立つ鳩を見て

不思議だなぁと思ってたのを覚えてます





……





その頃から

よく遠出をするようになり


色々な地方をまわってるうちに

八十八ヶ所霊場に出会い


これが

僕を強く引き寄せました





いつか行ってみたいと思いつつ

中々腰は上がりませんでしたが


徐々にその思いは強くなり


とうとう「行くしかない」に

至ったんです











僕はその頃

様々なしがらみに囚われていました


それは自ら創り出したものです





何かを裁けば裁くほど

「騙されるな」と訴えれば訴えるほど


提示したそれに

僕自身が縛られる事になりました





自ら創り出したその束縛の果てに


巡礼という

「全てを捨てた旅」が待ってたんです





……





出発前は不安でしかありませんでしたが

後ろに引き返す気もありませんでした


僕の頭には


「いつまでもそこで漂う」か

「次へ行く」かの二択しかなく


「次へ行く」を選ぶしかなかったからです


「いつまでもそこで漂う」は

「次へ行く」を鮮明にする役割を果たしてくれました





その一歩を踏み出す瞬間


僕は確かに命を賭けました

そしてそれは僕にとって


神様に身をゆだねるのと

同じ事だったんです










八十八ヶ所霊場の巡礼の旅で

僕を待っていたのは





とてつもなく深い切なさ


とてつもなく深い哀しさ


モカとの悲痛な別れ





……





そして


新たな出会い


見えない救いの力


沢山の気付き





そして

モカとの奇跡の再会


その先には

神様との契約を交わし


とてつもなく深い感謝に満たされ


溢れんばかりの

至福の涙を流す僕がいました





……





神様という無言の

「偉大なる教師」は教えてくれました


僕が歩んできた過去に

間違いというものは一つもないと





沢山沢山の苦しみも

沢山沢山の悲しみも

沢山沢山何かを傷付けた事も


全てが今に繋がっていて

繋がる為には全てが必要な体験だった





苦しみは価値のある体験

悲しみは価値のある体験

喜びも幸せも価値のある体験


全てが均等に価値のある体験なんだと

教えてくれました





……





僕は過ちを犯したと

自分を攻めていました


薬物に手を染めていた事も

仲間を裏切ってしまった事も


そして何より

自分自身を傷付けてしまった事を





その全てを

偉大なる教師は赦し


全てが祓われたように


清々しく輝く

新しい朝の光を僕に見せてくれました





……





「変革したい」

「枠を出たい」という僕の中のエネルギーが


凝縮されて

爆発を起こしたような


短い期間での出来事でした





この体験がもたらしたのは

僕にとっては究極の気付き





全ての選択に間違いはなく


全ての体験に価値があり


全ては赦される





そして移り変わっていく全ての物事の陰では

変わる事のない永遠の力が働いている


全てを丸ごと包み導く

愛の力が働いている


その力はそれぞれに光となり

それぞれに導き


時には苦しみを

時には悲しみを


時には地の底を這わせ


そして気付かせるんです

お陰様という絶対的な愛の力に





……





その感覚を

言葉で伝えるのは難しいですが





実は伝える必要も

ないのかもしれません





それでも伝えようとするのは


「伝えようとする」

という行動が今の僕に

必要だからなんだろうと思います





それが原点であり

理由はそれで十分


「伝えようとしたい」


それは

偉大なる教師が示す光





……




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