【本紹介!】「金持ち文学」って知ってる?

金持ち文学とは

「富裕層やウルトラ富裕層から無作為に10人を選び、その人の自宅やオフィスの書斎や書棚を見せてもらえば、少なくとも7人の本棚に、私が金持ち文学と呼ぶ本が並んでいることだろう。『思(途中略)など、長年読み継がれてきた古典的な本である。もし貧乏な人を10人選び、その人たちの書棚を見せてもらっても、そのような本はどこにも1冊もないだろう。それは偶然ではない。必然なのだ。」(ダン・S・ケネディ、『富裕層マーケティング』(112頁)の『勝ち組と負け組の本棚』)

「プロレタリア文学」ならぬ「金持ち文学」と表現するのがじわじわくる。

何が面白いのか。それは、勝つやつは勝つべくして勝っていることの証左だということ。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは言うけど、やっぱり安定して勝つからには「勝ちパターン」が存在するんよ。面白くない?

たぶん僕、数年前ならプロレタリア文学も金持ち文学も一笑に付してたんだけど、今は割と価値がわかるかも。

エリート文学としての金持ち文学

僕が好きな話で、「優れた才能を持っていながら、私腹を肥やすとか、私利私欲のために不祥事を起こすとか、そういうのはよくないよね。自分のメリットのためだけに働くのは本当のエリートではない。自分の大切にする価値観のために、世のため人のために自分の未熟な才能を精一杯使って本分を尽くすのがスーパーエリートというものだ」っていうのがある。

そういう意味でいうと、人が本を読む目的とするところの自己研鑽にも色々種類がある。自分の価値観や魂を磨くために古代ギリシアやフランスあたりのモラリストの古典を読む本物の人もいれば、自分の能力を伸ばすような知識やスキルを教えてくれるノウハウ本や専門書を選ぶ人もいる。前者はスーパーエリート文学、後者はエリート文学だ。

この文脈だと「スーパーエリート文学」、つまり古典を重視しているわけだが、後者のカテゴリーの本を軽視するつもりはない。むしろ、エリート文学にも「これを読まずに死ねない」と思うくらいの必読の名著がたくさんある。わかりやすい話では、理系の書籍、というか「お勉強」と呼ばれるものは押しなべて後者に分類されるだろう。
そういう前提を踏まえて僕は、金持ち文学はすべてエリート文学だ、ということを指摘したい。

それで、面白いのは、エリート文学が共通してもつ不思議な特性だ。
プロレタリア文学は優れた反体制プロレタリアートを育てる効果がある。別にそうなるために読むわけじゃなくて、好きだから読むんだけど、脳には「ミラーリング効果」といって無意識に人の真似をする効果があるから、だいたいそうなっていく。
(洗脳っちゃ洗脳だけど、洗脳がこわくて本が読めるかwという話だ。
好きな人は読んだら良いし、怖い人は読まなきゃ良い。)

金持ち文学も同じだ。別に必ずしも金持ちになるために読むわけじゃなくて、好きだから読む。でも、金持ちになるような考え方を持つ筆者や登場人物の思考の癖を無意識に真似するから、だいたいそうなっていく。

理系の専門書も実は同じだ。必ずしもその分野の研究者になるために読むわけじゃなくて、好きだから読む。でも、だいたいそうなっていく。僕がバイオテクノロジーの本を読めば、僕の人生にバイオテクノロジーの縁起が芽生えて、僕の人生に多かれ少なかれ影響を与えていく。それが大事。
(もちろん、そんなことを考えて様々な分野の本をむさぼり読む人は、社会の中のごく少数派であることは自覚している。でも、いまの時代に少数派であることはそんなに悪くない。むしろ、多数派であることに危機を感じることのほうが多い。)

というわけで、金持ち文学も毛嫌いせずに、逆「蟹工船」だと思って純粋な文学的興味を持って買って読んでみてはいかが。
それに、社会貢献志向が強い人こそ、金持ち文学から得られるものは大きいと思う。社会貢献志向が強い人はビジョナリーに走りがちだからこそ、サバイバー精神を養えると随所で選択肢の幅が広がるから。せっかく良いビジョン持ってるのに、サバイブに失敗したら悲しいじゃない?

もちろん、もし金持ちになりたいと思っている人には「おすすめ」というよりは「なんで読んでないの?」レベルの有名どころを中心に取り上げるので、もし読んだことなければぜひ。

以下、淡々と本紹介します。

①日本版「金持ち文学」

ダン・S・ケネディはアメリカの本ばかりを金持ち文学に挙げていたけど、日本でそれに当たるような本はどういうものがあるだろう。ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」みたいな、露骨なマインドゴリ押しの金持ち文学はないだろうか。
ちなみに僕がナポレオン・ヒルを推すとしたら、「思考は現実化する」よりも晩年の「成功哲学」とか「仕事の流儀」とか「悪魔を出し抜け」とか「12の莫大な財産」のほうが面白いのでおすすめ。どういう意味で面白いかは…読んでみてのお楽しみ。

真っ先に思い当たったのが中村天風「運命を拓く」とか斎藤一人とか。

僕は君たちに武器を配りたい
武器としての交渉思考
2020年6月30日にまたここで会おう(瀧本哲史)

苦しかった時の話をしようか(森岡毅)
(p58,p165に付箋。第5章~第6章は圧巻。泣ける。
この本に衝撃を受けて森岡毅さんの本は全部読んだ。)

志を育てる(グロービス経営大学院)

思考の整理学(外山滋比古)

転職の思考法
これからの生き方
天才を殺す凡人
分断を生むエジソン(北野唯我)

道をひらく(松下幸之助、panasonic)

100%(ジェームズ・スキナー)
アンソニー・ロビンズの自分を磨く(アンソニー・ロビンズ)

かもめのジョナサン(リチャード・バック)
チーズはどこへ消えた?|迷路の外には何がある?(S・ジョンソン)
夢をかなえるゾウ(水野敬也)

シンクロニシティ(J・ジャヴォースキー)

人を動かす
道は開ける(D・カーネギー)
7つの習慣(スティーブン・コヴィー)
思考は現実化する(ナポレオン・ヒル)

預言者(カリール・ジブラン)
こころのチキンスープ(ジャック・キャンフィールド、マーク・ビクター・ハンセン)

バビロンの大富豪(ジョージ・S・クレイソン)
原因と結果の法則(ジェームズ・アレン)

自助論
向上心(サミュエル・スマイルズ)
わかりやすい。なんてわかりやすい金持ち文学。
ちなみに、こころのチキンスープはめちゃめちゃ頻繁に東大英語の長文問題で出題されているので、東大受験経験者は本番とか模試で一度は読んだことがあるはずです。

②起業家・経営者編

起業のファイナンス(増補改訂版)
起業のエクイティ・ファイナンス(磯崎 哲也)

前に、「これ読まずに起業するのはパラグライダー無しで飛び降りるようなもん」という話を。

ゼロからつくるビジネスモデル
模倣の経営学(井上達彦)
僕の恩師ですね。特に「ゼロからつくる」は万人におすすめ。

ZERO to ONE (ピーター・ティール)

HIGH OUTPUT MANEGEMENT(A・グローブ)

BLITZ SCALING(リード・ホフマン)
ビル・ゲイツが序文を書いてる、いかつい本

HARD THINGS
WHO YOU ARE(ベン・ホロウィッツ)

企業参謀(大前研一)

マネジメント
経営者の条件(ドラッカー)

ちなみにドラッカーで一番好きな本は「傍観者の時代」。これはドラッカーの自伝だから金持ち文学じゃないけど、また伝記特集の記事を書く気になったら紹介するかも。

ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則(ジム・コリンズ)

金持ち父さん貧乏父さん
起業する前に読む本
アンフェア・アドバンテージ(ロバート・キヨサキ)

億万長者のビジネスプラン(ダン・S・ケネディ)

影響力の武器(ロバート・チャルディーニ)

③投資家編

とりあえず、読んでないと即死するシリーズ(投資ver)だけ。

LCTM伝説(ニコラス・ダンバー)

金融工学の悪魔(吉本佳生)

ウォール街のランダム・ウォーカー: 株式投資の不滅の真理(バートン・マルキールバートン・マルキール)

株式投資の未来(ジェレミー・シーゲル)

現代経済学の直観的方法(長沼伸一郎)

僕は投資にまだそんなに詳しくなくて、いま猛勉強しているので、大体わかったらまた改めて紹介します。

よく「どうやっていい本を探しているの?」と聞かれる。
僕は、未知の学問分野を開拓する時、芋づる式にいい本に出会う。というか、だいたいみんなこうするのかと思ってたら、どうやらそんなわけではないらしい。でも、ふつうこれしかないやろ、と思う。
①その分野の名著と呼ばれる、網羅的な分厚い本を頑張って読んで、その分野の簡単な歴史と用語をひと通り把握します。これで、専門家に質問する準備ができました。
②①で読んだ本の著者が書いた本に全部目を通します。その著者の考え方をより完全にミラーリングするため。弟子入りするような気持ちでやります。結局それが一番上達が早いと思います。もし師匠の考え方が間違ってたとしても、行動を取らない限り、後からいくらでも修正はききます(と思ってる限り大丈夫。師匠は絶対正しい!とか考え出したら要注意)。
その中で紹介されている本があったら、読めたら全部読みます。その著者の考え方に影響を与えた本を把握するため。
③人に会います。その道で一流としてやってる人に、早稲田の授業でもいいし、イベントでもいいし、直接突撃してもいいし、何にせよ接点が持てそうな場所に行きます。

そんなわけでキーワードだけ出すので、気になった人はこの著者のすべての著作を片っ端から、全部読み漁ってみて

ジェレミー・シーゲル
ベンジャミン・グレアム
スティーブ・シュワルツマン
ウォーレン・バフェット
レイ・ダリオ

(もしかして、レイ・ダリオこそが最強の金持ち文学では。)

日本だと…
藤野英人
奥野一成
高橋ダン
小林武文

これは僕のぼやきなんだけど、投資家ってどうしても実業家と比べて虚業家の色があって、まして技術者が投資の勉強してます!とか声高には言えない雰囲気があるよね。まあ、そういう空気も徐々に変えていけという話なんだけど、それで飛びつくのが投資信託とかだとため息をつかれてもしょうがないよな~と思う。もちろん投家は良いんだけど、投家マネーは金融バブルの原因になったりして、社会の抱えるリスクが増大するからね。
投資信託に預けたり、金融工学的な商品を買うことを、投資とは呼ばないのです。

④伝記編

これ選ぶのが難しいのは、金持ち文学∩伝記という集合の共通部分がきわどいこと。富裕層の家の7割においてありそうな、読んだら資産家的な考え方が伝わってくるような伝記ってなんだろう。というわけで

成功はゴミ箱の中に(レイ・クロック、マクドナルド)

ウィニング 勝利の経営(ジャック・ウェルチ、GE)

GMとともに(アルフレッド・スローン、GM)
MITのスローン経営大学院の、スローン

1兆ドルコーチ(ビル・キャンベル、Google Apple Youtube Facebookなど)

スノーボール(ウォーレン・バフェット、バークシャー・ハサウェイ)

岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた(岩田聡、任天堂)

MADE IN JAPAN 我が体験的国際戦略(盛田昭夫、SONY)

飽くなき挑戦 大いなる勇気(本田宗一郎、HONDA)

カーネギー自伝(アンドリュー・カーネギー、鉄鋼王)

ブラックストーン・ウェイ(スティーブ・シュワルツマン、ブラックストーン)

最後に、書き出してみて思ったことを。

やっぱ伝記のパワーはすごい。
今度はちゃんとした(?)正統派の古典を紹介したいな。

東洋では易経、菜根譚、酔古堂剣掃、など安岡正篤さんが教えてくれた本の数々とか。宮本武蔵「五輪書」とか世阿弥の「風姿花伝」とか。

はたまた禅の「碧巌録」みたいな仏教や陽明学の話とか。

言志四録とか、吉田松陰の講孟箚記とか。

後藤新平ー廣井勇ークラークー新渡戸稲造ートマス・カーライルー李登輝みたいな線で近代を紡いでみたい気もする。
戦後の堕落論みたいに「人間ってそんなにええもんちゃうやろ」とかいう冷笑的な話もあるけど、それでも理想の人間像を追求していくことの価値を。恐怖を克服することの尊さを。

人間の土地(サン・テグジュペリ)とか
心に太陽をもて(山本有三)とか。

なんか、金持ち文学と違って古典は優秀な文学部の連中がくまなく光を当ててしまっていて、斬新な僕ならではの記事になるかはわからないけど、書きたいアイデアが降りてきたら書きます。

一気に60冊紹介してしまった。こんなん誰が読むねん…笑
読書家の人、喫緊で金持ち文学の勉強したい人(?)はぜひ。

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Takaaki Nishikawa 西川貴章
あなたにとって素敵な1日でありますように!