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読書227 『35年目のラブレター』

   小倉孝保著

 西畑さんが小学校に入ったのは戦時下で、先生やクラスメイトの嫌がらせを受けて学校に行かなくなった。通学をあきらめ、文字を知らないまま大人になった。

そんなはじまりから、西畑さんの目線で幼少期からの出来事が綴られていきます。

近所で唯一仲良くしてくれた年上の友人のことを、父から「あそこの家には関わるな」と言われて殴られたその理由。
七歳のときに母が亡くなり、知らされた父との関係。
文字の読み書きができないことで苦労したこと。それが恐怖になっていたこと。
そして、妻との出会い。
「妻にラブレターを書きたい」その一心で夜間中学校へ入学する。そして、そこで出会った人たち。

もう「はじめに」から涙が止まらずです。
戦前戦後の話は胸が苦しく、いつも考えさせられますが、西畑さんの内面や経験が細かく描写されていて、何ともいえない気持ちになります。
経験から「字が書けない」ことに対する思いを引きずりながら、それでも常に前を向いて来られた西畑さんですが、とてもやさしい、やわらかい文章の綴られ方だと感じました。作家さんの西畑さんに対する感情がわかります。

同じタイトルの映画も来月公開されます。
「今日も元気で過ごせましたね。あなたに会えて僕は幸せです。」

#小倉孝保 #35年目のラブレター

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