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椎名林檎 林檎博'24 -景気の回復-と私の音楽趣味
2018年以来の林檎博。この6年で今聴いている音楽趣味が確立されてきた。そんな自分にとって、音楽趣味を振り返るようなライブに今回の林檎博はなった気がしましたので、ライブの振り返りと共に、自分の音楽趣味も絡めてまとめてみます。
今回さいたま初日の11月21日と、さいたま最終日の11月24日に参加しました。この2回の感想を絡めながらライブと自分の音楽趣味を振り返っていきます。
1.鶏と蛇と豚
『三毒史』のオープニングナンバーが、「景気の回復」でもオープニングナンバーでした。
椎名林檎の音楽への興味が高まったきっかけが、『加爾基 精液 栗ノ花』の和の要素や多国籍で無国籍な世界観であったので、収録アルバムの『三毒史』を初めて聴いた時もこの方向性の曲をアルバムの冒頭に収録してくれて、嬉しかったし、今回も感謝の気持ちでいっぱいでした。
映像では、僧侶が出てきますが、これ前回の林檎博「不惑の余裕」のエンディング映像の「丸ノ内サディスティックneetskills mix」に出てきた僧侶とつながっているのかな。曲の終わりの方で、宇宙船から降臨した椎名林檎が挨拶。
2.宇宙の記憶
「地球の皆様、御機嫌よう。」と言いながら、宇宙からきた椎名林檎ということでしょうか。降臨しつつ宇宙がタイトルに作曲を歌唱。
椎名林檎が坂本真綾に提供したこの原曲はSOIL & "PIMP" SESSIONSの演奏による楽曲ですが、音源ではセルフカバーされていないこともあり、原曲のテイストでパフォーマンスされました。比較的メロディに対して言葉多めの曲を椎名林檎が歌うのはレアな気がしました。
年1作程度の頻度で楽曲提供している椎名林檎。最近ではAdoや高畑充希、Sexy Zone(現・Timelesz)へ提供しています。声優等様々な活動を行う坂本真綾への提供曲は、2019年にテレビアニメ『BEM』のオープニングテーマとして書き下ろされました。
3.永遠の不在証明
ここで劇場版『名探偵コナン』シリーズの映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』主題歌であった東京事変の曲。ソロの曲ではないですが、作詞作曲が椎名林檎であり、また、キーボードが事変の伊澤一葉であることもあり、さらには再生後の事変でほとんどライブでは披露できていないという事情もあり、待望でした。
衣装やバックスクリーンが赤を主体とした演出であったのは、この曲が主題歌だった『緋色の弾丸』のメーンキャラが「赤」井秀一(とそのファミリー)であったからではと感じました。(いろいろ考察を探ると、リップスティックが『緋色の弾丸』を示しているのではという説が…、たぶんそれ笑)
間奏部分の伊澤のキーボードフィーチャー部分が「名探偵コナン メインテーマ」をオマージュしているフレーズも決まっていました。原曲にあるアウトロの部分はカットされ次曲へ。
4.静かなる逆襲
早替えを経て、「永遠に不在証明」の歌終わりから自然にそのまま入ったのが、「静かなる逆襲」。アウトロカットもフレーズの印象に乖離がなかったためにすんなり受け入れられたこともあり、すごく良かったです。やはりホーン隊が存分に生かされた楽曲の一つでありました。
個人的に『日出処』の収録曲は、特に林檎博ではありがたい存在と思ったり、ビッグバンド的な楽曲も多いからかもです。
5.秘密
お次は、こちらも東京事変の楽曲。原曲の編曲を伊澤一葉が担当しており、ピアノのスウィングも印象的な楽曲です。
イントロのドラムのインパクトに引き込まれる曲でもあり、やはり石若駿がこの曲へと引き込んでいきました。
こちらもジャジーな楽曲が続く印象で、おしゃれでカッコいい(語彙力)が続いて素敵。
6.浴室
『勝訴ストリップ』に収録され、その後様々なバージョンもリリースされたのが「浴室」。アルバムで言うと『日出処』以降の楽曲が多かった中、『勝訴ストリップ』収録の楽曲が披露されるのも貴重で、続くここ5年の楽曲と、セトリ上のストーリー的につながっているように感じた点も面白かったです。
ナイフを持ちながらのパフォーマンス。そして、倒れ込む演出はその後の曲への繋がり方はセトリの中で1番好きな流れでした。
7.命の帳
こちらも事変曲。高校時代の後輩・山口紗弥加の主演ドラマ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』主題歌。
ドラマで使用された際は、曲と共に山口紗弥加が、様々な男性と絡みつつも孤独さを感じらような映像でした。その世界観とリンクするような、倒れ込む椎名林檎が歌い始め、途中から立ち上がりギターを弾き歌う姿もまた素敵でした。
作曲が伊澤一葉の事変曲を伊澤と共に披露する。これはまた事変でのパフォーマンスも楽しみにしてますからね。
8.TOKYO
「命の帳」からの「TOKYO」へのつなぎも歌詞やパフォーマンスから感じる孤独さが連動しており、ここまでの流れも好きでした。
原曲のピアノの変則的なイントロが大好物なのですが、オーケストラによるイントロのアレンジも音の厚みが出てこれまた大好物でした。
歌い切ってからの椎名林檎の退場。そしてアウトロの演奏までもっと聴きこみたいアレンジでしたね。
9.さらば純情
椎名林檎の衣装替え曲となったこの曲。『放生会』のビッグバンド的アレンジが素晴らしい演奏でした。
そのため大半は生歌ではありませんでしたが、終盤貝から現れた椎名人魚が登場し歌唱しました。
10.おとなの掟
人魚林檎は、ここで再びセルフカバーの「おとなの掟」を。ソロでは英語詞でのカバー。原曲は、テレビドラマ『カルテット』の主題歌で、主演の4人、松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平(Doughnuts Hole)が歌唱しています。
以前のソロカバーでは、英語詞でのカバーであったため、日本語詞でのカバーなのも新鮮でした。(松崎ナオとのデュエットでのカバー時は日本語)
11.MOON(REBECCA)
曲前に、新・若旦那の紹介(在来線の乗り鉄)からはじまったのがREBECCAのカバー。ボーカルのNOKKOの歌声を、以前『ミュージックステーション』にて椎名林檎が、歌声を嫉妬するアーティストとして挙げていた一人。「命を燃やして見せるような彼女の声や仕草に涙してしまう」と称賛しています。
REBECCAにあまり触れる機会がない自分ですが、触れる機会のない音楽に触れられるのも林檎博ですね。
12.ありきたりな女
「MOON」の歌詞の続きとして制作したという「ありきたりな女」。「MOON」自体も、この曲から「ありきたりな女」が生まれたことも知りませんでしたが、この2曲が連続して歌われたのも椎名林檎の音楽、特に歌詞とのかかわり方を知れた気がして嬉しいですね。サビで伸びるような歌唱のある曲なこともあり、椎名林檎の歌声の良さが際立ったました。
「GOODBYE」と歌ってからステージをさる演出も歌詞との連動も素敵ですね。
13.生者の行進
ここでAIが登場(人工知能‥ではなく、歌手の方の映像、24日は本人登場)。ヒョウ柄のレオタードが似合ってしまう椎名林檎とカッコいい映像登場のAI。24日にはAI本人登場。日本を代表するシンガー同士がそれぞれソウルとジャジーな歌声のコラボがアリーナを魅了する姿を生で観ることができて嬉しかったです。
欲を言えば。AIさん1曲はもったいなさすぎて、「罪と罰」(椎名林檎トリビュートアルバム『アダムとイヴの林檎』でAIがカバー)のデュエットとか、斎藤ネコさんがプロデュースするAIの「アルデバラン」のデュエットとかやってくれたらなぁと。
14.ジプシー(あっぱ)
ここで、伊澤一葉(啓太郎)所属のバンド・あっぱの『ラシポ紀』に収録される楽曲「ジプシー」。ピアノの跳ねる様な演奏が印象的な楽曲を、椎名林檎が歌詞を変更した形でカバーしました。SISのお二人と椎名林檎の3人でのミュージカル的パフォーマンスをしていました。その姿が新鮮でかっこよく、椎名林檎のライブがいかにエンタメ性にも富んでいるかを一番示していたように思いました。
なお、収録アルバム『ラシポ紀』はサブスクにありませんのでCDを是非買ってください。あっぱのアルバムは『MANTRA』に関してはサブスクにありますので、是非とも聴いてみてくださいね。
15.人間として
2024年に放送されたドラマ『Destiny』の主題歌でした。ハープが印象的なアレンジでした。軽快なミュージカルからの圧巻の歌唱。
ここで再び衣装替えで椎名林檎退場。
16.望遠鏡の外の景色
ここで、野田秀樹の演劇NODA MAP第17回公演『エッグ』へ提供した曲。インスト曲であり、椎名林檎の衣装替えおよびバンドメンバー紹介VTRの時間に演奏が披露されました。
鳥越啓介のソロパートは毎回変更され、クラシックや洋楽を使用していました。
駐車場を歩くメンバーの映像とともに大所帯のメンバーを紹介。映像も無茶苦茶かっこよかったです。最後に椎名林檎が戻ってきて歌唱。
17.茫然も自失
全曲の終盤で登場した椎名林檎は黒い着物でした。ライブで様々な衣装をする椎名林檎ですが、特に着物で歌う椎名林檎大好きなんですよね。ギターを持って歌っているのはなお大好きです。
ジャジーなナンバーが続く流れもまた椎名林檎のライブですね。
18.ちりぬるを
ここで、ゲストの中嶋イッキュウの登場。イッキュウというとtricotのボーカルであり、また川谷絵音や小藪一豊らとともにジェニーハイとしても活動しています。
川谷絵音チーム好きの自分としては、ゲスの極み乙女のちゃんMARIが椎名林檎との共演時に会話できないほど感極まったり、ほないこかがサポートミュージシャンとして音楽番組共演したり、何かと絵音本人や絵音バンドのメンバーと椎名林檎の関わりも嬉しいですが、イッキュウと言えば、『ミュージックステーション』にて、イッキュウの所属するジェニーハイと椎名林檎が一緒に出演するシーンも記憶に残っていますが、まさかコラボ曲にライブでの共演も目撃することになるとは。
二人が黒い着物で歌う姿はやはり美しく、楽曲のタイトルや歌詞とも合う衣装。
中嶋イッキュウは、高校時代軽音楽部に入っている時に、椎名林檎の楽曲ばかり聴いていた時期もあるらしく、歌声も椎名林檎の影響下にあるのかなと。
19.ドラ1独走
続いて、新しい学校のリーダーズとのコラボ曲。リーダーズは、以前H ZETT MのプロデュースやH ZETTRIOとのコラボ楽曲もリリースしております。H ZETT Mと同一人物でないかと噂されるヒイズミマサユ機は、前回の林檎博でサポートをしており、東京事変の初期メンバーでもありますね。
椎名林檎とも間接的に縁があり、紅白での椎名林檎の首振りダンスも経て、今回の共演が実現しました。(ただし、椎名林檎は「オトナブルー」のヒットまでリーダーズのことはしらなかったとのこと)
自分はそのヒイズミをきっかけに新しい学校のリーダーズの楽曲を2018年より聴いておりました。sora tob sakanaというアイドルの主催フェス「天体の音楽会」にて、出演したリーダーズのパフォーマンスを2020年に生で観たことがある自分としては、大ブレイクし、椎名林檎とコラボ、さらにはアリーナのステージで映像が流れているという活躍っぷりが嬉しいです。
ドラ1ということで野球ユニフォーム衣装の椎名林檎。MVと近い演出がとても素晴らしく感じました。
20.タッチ(岩崎良美)
ここでDAOKOも野球ユニで登場しました。そして、野球と言えばのこの曲。1番はDAOKOが、2番からは椎名林檎が歌いました。
椎名林檎の楽曲にはない盛り上がり方、また、サビに三三七拍子のリズムを刻むサウンド、さらにそれに乗っかれる観客たちも含めて、楽しい空間となっていました。
なおDAOKOの背番号は「34」(誕生日が3月4日だからかと思われます。)一方、椎名林檎の背番号は「51」。(対談もしているイチローの背番号?なので彼をテーマにした「スーパースター」も歌うかなと思いきやそんなこともなく…)
21.青春の瞬き
栗山千明提供作のセルフカバーながら、東京事変でも林檎ソロでもライブでカバーされ、東京事変一旦の解散前『Bon Voyage』での披露や、『SMAP×SMAP』でのゲストを呼んでのコラボのラストパフォーマンスや、『NHK紅白歌合戦』でも東京事変メンバーで披露される等重要な場面で披露されることも多い楽曲。
音源でのセルフカバー時には冨田恵一によるアレンジがなされ、今回もそのテイストで演奏されました。
この曲への思い入れが強い自分は浸りながら聴いていました。
22.自由へ道連れ
続いても、SMAPとも栗山千明ともリンクするテレビドラマおよび映画『ATARU』(中居正広と栗山千明が出演)主題歌。
中嶋イッキュウパートを分け合う形式で披露されました。ロック感の強い楽曲はキーボードの伊澤もギターを担当しました。
この曲をカバーの方がライブで観ている人はあの会場にどれくらいいただろうか。自分が推す私立恵比寿中学が、トリビュートアルバム『アダムとイヴの林檎』にてカバーしてから6年。そんなこともあり個人的にも思い入れの強い楽曲です。椎名林檎は「道連れしちゃうぞ」なんてかわいいフレーズ言わんもんなぁ。
23.余裕の凱旋
いやいや、かわいいフレーズ言ってるじゃんということをすぐに思い出させてくれる。ここで再びDAOKOが登場。リミックスアルバム『百薬の長』や、前回のツアー『諸行無常』に引き続きDAOKOとのコラボ。
そして、今回のコラボや実演での共演では、DAOKOはもちろん椎名林檎の可愛らしい歌唱も引き出されていました。
まさしくワイワイワールドなコラボでした。
24.ほぼ水の泡
そしてここでももが初登場。ももは、歌とアコーディオンの姉妹ユニットチャラン・ポ・ランタンの歌を担当しています。海外でも活躍し、「オルタナティブ・シャンソン」と称されます。姉の小春はLiSAのカバーする「NIPPON」でも演奏しており、Mr.Childrenのライブサポートもしています。
ユニットは、亀田誠治が編曲やジャケ写でも共演するフジテレビ系列の同名番組テーマ「ぽかぽか」や、テレビドラマ『逃げるは恥だが役にたつ』オープニング曲「進め、たまに逃げても」等の楽曲があります。
椎名林檎と親交関係もあるももの歌唱は力強く会場を盛り上げ、最後には会場にサムアップする姿も頼もしくて素敵でした。
歌詞が反映されたお酒を飲む振りもまるでキャバレーショーのようでした。(さすがキャバレー経営を目指す椎名林檎)
25.私は猫の目
『諸行無常』では、ロックサウンドなシングルアレンジでライブ中盤で披露されましたが、『放生会』アルバムバージョンではビッグバンドなアレンジで、まさしく本編最後に披露されるようなアレンジでした。
今回はDAOKO、もも、中嶋イッキュウの3人も含めた4人の女性シンガーでの歌唱が豪華でかっこよく、やはり本編ラストにふさわしいですね。
バックスクリーンでは、御猫様達が景気回復ビームを放ちました。椎名林檎のエンターテインメントが詰まっていました。
26.初KО勝ち(アンコール)
アンコールからの1曲目、Perfumeのっちとのコラボが披露されました。長らく中田ヤスタカ提供作品のみを歌唱していましたが、椎名林檎が長らく口説き落とし、今回ののっちとのコラボが実現しました。
MV同様の、戦う表情で歌い上げるのっちは歌声も力強く、今回のライブでの映像もそういった表情がかっこいいです。対する椎名林檎もボクシンググローブで歌い上げていました。
今回のっちは会場にはいませんでしたが、もしのっちとのライブコラボがあれば、中田ヤスタカアレンジの「熱愛発覚中」を2人でデュエットとかどうですかね?
27.ちちんぷいぷい
もう最後?と思いながら、最後にはビッグバンドチームにふさわしいアレンジのこの曲。「RINGO!」の掛け合いも会場の一体感を作り上げ、林檎博にきたなという感じがしますね。
最後の最後にこの曲はすべてがご褒美みたいな曲たちの集まりの中で、さらなるご褒美でした。ありがとうございます。
EN.2〇45(ꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄ & 椎名林檎)(エンディングムービー)
エンディングムービーはまさかの旧ミレパとのコラボ作。2○45年の荒廃した地球というVTRという設定も衝撃的でしたが、それ以上にここで常田大希のプロジェクトの曲が出てくる衝撃でした。
自分は2019年King Gnuと共に、好きになったꉈꀧ꒒꒒ꁄꍈꍈꀧ꒦ꉈ ꉣꅔꎡꅔꁕꁄ(旧millenium parade)。2024年1月にはゲストで自分の目の前で椎名林檎が登場するなど、この二組のつながりが林檎博でも関わってきたのが本当に嬉しく思いました。