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新入社員の中で1番可愛かった由希子との話(完)

「おはよう」

朝礼前のいつもの光景にいつもの会話がそこにはあった。俺と由希子は、研修最終日までの数日間を一緒に過ごした。

わずか5日間だったが、毎日セックスをした。お互いに彼氏・彼女がいたわけだが、そんな背徳感は気にせず、感情だけで突き進んだ5日間だった。

同期は誰もこの事を知らない。お互い誰にも言わず、そっとしている。

新入社員研修は、誘惑が多い。出会いがあれば、男女の間柄になる可能性もある。令和になっても変わらない。

由希子は、浮気するタイプでは無かったが、彼氏とのマンネリさと、新しい出会いから、一時的な遊びをしたかったようだ。

由希子にとっては、浮気相手は誰でも良かったかもしれない。

お互い別の配属先についた後は、たまに社内のメールでやり取りして近況報告をしていた。

会うことまではしなかった。研修が終了して本格的に仕事をし始めると、覚えることも多く、出張する機会も無い。

由希子は、たった3年ほどで会社を退職した。理由は、法科大学院に進学するため。

自分の実力不足を感じて、大学院で基礎を身につけたいと思い切ったようだ。

「元気?会社辞めることにした。4月から法科大学院に行くんだ。これからも頑張ってね。」

由希子の最後のメールはあっさりしていたが、由希子らしかった。美人で頭もいいし、普通に出世しただろうに、彼女なりの考えから決断をしたのだろう。

20年以上経過して、ふとネットで由希子を検索すると、由希子が出てきた。そこには、法科大学院を卒業した後の輝かしい経歴と、幸せそうな家族と子供の写真があった。

相変わらず可愛かった。年齢に抗えない部分はあるが、当時と同じようにショートカットで、特に笑顔が可愛かった。

「女性は上書き保存、男性は別名保存」と、男女の恋愛に対する考え方を表す言葉があるが、当たっていると思う。

男は、昔の女性を気にして生きており、たまに検索してしまう生き物だ。「会いたいなあ」なんて思ってもそんな勇気や自信は、独身の俺にはどこにもない。

あの時、初めて由希子に声をかけた自信と勇気は、自分が当時持っていた自信が後押ししたのかもしれない。

あの、煙モクモクの焼鳥屋で、バッタリ会うなんて、不毛な事を、ふと考えてしまった。今は何に対しても自信の無い40代独身男性が。

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