親父、危篤。俺の思い。
オリンピックハイライトなどテレビを流し見していた
23時40分頃・・・
親父、危篤の連絡が入った。
いつか来る、そう遠くないうちに、必ず。
覚悟はしていたが、冷静を保つのも予想以上に苦しかった。
車で行けば10分で着く病院だが、あえて自転車で向かう事を選んだ。
今、車に乗れば、ブレーキをうまく踏めない気がしたから。
病院について、ベッドに弱々しく横たわる身体になった親父がいた。
脳出血で倒れてから、会話も出来なかった。
元々の身体も悪く、リハビリ病院と大学病院の転院を繰り返し、
落ち着いたかと思えば、また肺炎を起こしたり、
安定しなかった。
ただ、調子が良い日は、呼びかけにうなずき、
握手したり、反応を見せてくれていた。
なのに、突然・・。
覚悟はしていた。だが、何となく、まだそんな日は来ないと
何故か思っていた。
幸い家族は全員会えた。
近くに住んでいるとこういう時に良かったと思う。
体温は、29度を切り、血圧は60前後。
人の身体は、これでも生きられるのかと驚いたぐらい。
ここからの復活はさすがに無いかと思う自分がいた。
こんな時、意外と男は冷静なのかもしれない。
おかんや姉貴は、泣いたり、終わるかもしれないその命に、
奇跡を信じ、祈っている。
でも、時間が経つにつれ、刻々と時間だけが過ぎていく中で、
現実的な話を切り出した。
「・・・・葬儀、どうするか・・」
誰も言えない言葉だからこそ、俺が言わなきゃと、
合ってるかわからない責任感を持って、切り出してみた。
みんな、ある意味ホッとしたのか、
それぞれの思いを少しずつ、話し出した。
こんな風に送り出したい、こんな流れにしたいと。
そんな会話していると暗い空気から少し前を向いた話になってきた。
おかんにも笑顔が出始めた。
親父は、今もギリギリのところで戦っている。
それが、生きようとしているのか、医学の力で生かされているのか、
わからない。
非情と思われるかもしれないが、延命措置はしないと家族で決断した。
人それぞれの意見がある。
さすがに家族でも意見は割れた。
みなさんはどうだろうか?
ここからは俺の勝手な思いだが。。
残された家族が、親父の死を笑顔で送りだせる時が、一番ベストだと思っている。
お疲れ様、そしてありがとう、という思いで送れるのが良いと思っている。介護や看病を続ければ、いずれ、家族の負担になってしまう事がある。
特に、脳卒中・脳出血系からの復帰に向けては、性格が変わり、家族に大きな負担が生まれる可能性はあると医者から何度も言われた。
実際に、そういう事を経験した知り合いもいる。
その時、親父が死んだら、家族はどう思うだろうか。
悲しい気持ち、さみしい気持ちは当然あるが、
それと同等以上の気持ちで、ホッとする部分も生まれるかもしれない。
不謹慎かもしれないが、実際、そうだと思っている。
それは、何となく違う気がした。親父も望んでないような気がした。
そして、一番強い思いは、
親父が管だらけの状態で、心拍が下がった時に、電気ショックや、骨が折れるほどの心臓マッサージをされるのを見たくない。
もうそんな痛い思いや怖い思いをして欲しくない。
ゆっくり、静かに休んで欲しい。
それが、俺の一番の思いだ。
正解は無いと思うし、出せるものでもない。
本人が話せない状態で、本人の気持ちを聞くことも出来ない。
最後は、本人がこう思うだろうという勝手な解釈と、
家族の思いで決まる。
根底には頑張って生きて欲しいという思いは大きくある、
だからこそ葛藤が生まれる。
複雑すぎる。
俺たち家族の思いは、とにかく笑顔で送り出す事。
最後までしっかり見届ける事。
親父・・・
今、どうしたいんや?
聞かせて欲しい。