NRAから見たM1ライフルvol.1
Ⅰ. 緒言
皆さんご存知M1ライフル、マッカーサー将軍が「我が軍に対する最も偉大な貢献の1つ」と称賛したライフルである。しかし、正式採用後に信頼性・命中精度諸々に疑いの目を向けられていた事はご存知だろうか。だから何だと言われれば、M1ライフルの購入予算が0になる危機が生じた程である。
この度、NRAから発行されているAmerican Riflemanという雑誌のアーカイブを発見した。それらに書かれた記事を何回かを通して読み、当時の様子を感じていきたい。
Ⅱ. 全体をざっくりと
まずは自分が確認したAmerican Riflemanの内、”Garand”と検索してヒットした記事の件数を見てみよう。なお当時でもM1 Rifleは勿論、Mr. GarandやGarand Semi-Automatic Rifleとも書かれているので、M1ライフルに対しての記事を見つける事ができると踏んだ。
まずは私が見つけられたアーカイブが1923年6月号から1941年12月号だけである事をご承知おき下さい。
次に1927、28年の記事はM1903競技仕様の記事である。これはGarand氏がロックタイムを短くした改良を施した銃であり、それに関連した記事の様だ。
さらに1932年には戦争省武器局のHatcher氏が半自動小銃開発経緯の記事を投稿した。
そして5年もの月日を経て、1938年8月号にM1ライフルの紹介記事が武器局のDrewey少佐によって書かれていた。
注目すべきは1940年の記事の多さだろう。調べると1939年11月のキャンプペリー射撃場でのデモに関する記事で記者から疑問が提示され、そこから批判の論評が噴出し、1941年5月号における海兵隊トライアルで一応の解決をした様である。
私の拙い翻訳であるが、1939年11月号を見てみたいと思う。
Ⅲ. セミオートマチックの命中精度~1939/11号~
F.C. Ness氏によって書かれた記事である。
端的に言うとM1ライフルよりジョンソンライフルの方が命中精度が高そうだという事を読み取れる。逆に言えばM1ライフルの命中精度に疑問が生じたのだろう。
それでは本文を見てみよう。
「私はキャンプペリーのAdvance SchoolにおけるM1(ガーランド)ライフルの急射に非常に興味を持っていました。そこでは200ヤード先に標的が現れ、70~75秒の間に射手は伏射にてM2弾薬8発を撃つ。
私が観察した限り、10インチのブルズアイに対して多くの5点が記録された。4点が数回、時々3点もあるが、ブルズアイに当たらなかった時に掲げられる赤旗もたくさん見受けられた。外から見る限り銃の動作に支障があったようだが、それがどんな現象かまでは分からなかった。
またG. Whitney Jr.氏が持ち込んだジョンソンライフルの200ヤード射撃も見る事ができた。ジョンソンライフルは2つ持ち込まれ、それぞれロータリーマガジン型とボックスマガジン型であった。
沿岸警備隊のW.Mitchell氏がM1弾薬、急射にて撃ったのを観察すると、ガーランドよりも反動が少ない様に見えた。ガーランドでは揺れた頭から帽子が落ちたり、髪が持ち上がっていたのに対してジョンソンライフルでは無かった。
次に2つのジョンソンライフルをスリングを使用して伏射にて撃ち、20回連続で5点を取った。その後の急射では49/50点の記録を叩き出した。なおこの中で2回給弾不良が生じたが、ボルトを手で閉じて解決していた。後に分かったが、キャッチスプリングに欠陥がありそれが原因だったと言われた。それ以外に特に問題はなく、不良品とは思えなかった。
ジョンソンライフルを記者が撃つ機会があった。
フロントサイトに問題は無いが、細かな標的射撃にはリアサイトの絞りが大き過ぎた。ただ一度ブルズアイに当たれば照準を維持するのは容易く、トリガーの引きも良く、反動もマイルドで撃ってて気持ちが良い。これは私が伏射で撃った中で最高の30口径ライフルの1つであり、M1903よりも良かった。
ジョンソンライフルはマサチューセッツ州Wakefieldにおけるより長い射程で撃つ事となる、M1ライフルの為に用意されたセミオートマチックライフルコースにて力を発揮した。
コースは以下の通り
①200、300、500、600ヤード、スローファイヤ、各10発ずつ
②200、300、500ヤード、急射、各16発ずつ
①と②を合わせて合計440点のコースとなる。次に資格を紹介する。
・エキスパート:396点以上
・シャープシューター:378点以上
・マークスマン:357点以上
なおこのコースでM1ライフルを用いてのエキスパートの保有者は誰もおらず、後にこの基準が引き下げられたはずである。
M1903にてシャープシューターを保有する2人の海兵隊の兵卒がジョンソンライフルでコースに挑んだ。1人は394点、もう1人は393点とエキスパートには一歩届かなかったが、2日後に再チャレンジすると398点、401点を記録した。またFisher中尉は406点、VanOrden大尉は408点、設計者であるJohnson少佐も405点をM1弾薬にて取ったのである。
またCharles J. Eusey伍長が200ヤード急射においてジョンソンライフルが優れた銃である兆候を得た。
(省略)
200ヤード急射において1インチのグルーピングを記録した
(省略)」
以上である。
ジョンソンライフルすげぇな。
次回はNRAトップ会談の記事をば。
参考文献
アメリカンライフルマン1939-11月号, P44, 2023/01/01閲覧
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