「noteを始めました」の災難。
私はカフェでコーヒーをじゅるじゅると啜りながら悩んでいた。
賞に応募しようとしていた短編小説の締め切りが迫った今になっても、一向にストーリーが浮かばないという緊急事態に陥っているのである。
小説を書くにあたって、長編であろうが短編であろうが一番大事なストーリーが浮かばないとなると、もはやお手上げ状態であろう。
犬で言ったら、お腹見せて舌出してハアハア言っているレベル。
「おかしい、実におかしいよ」
私のアイディアの中身は現在、一人暮らしの冷蔵庫の中のようにすっからかんだ。
このようなnoteに書くことであれば、その「アイディア」という名の冷蔵庫の中にあるわずかな食料をどうにか組み合わせ、どうにかこうにかやりくりすることができるのだが、小説ともなるとまったく適材の食材が見当たらない。
仮に「あったあった!」と見つけたとしてもとうにそれは腐っているのだ。
とはいえ、締め切りが3月末なのでいくら短編小説だろうと、そろそろ冷蔵庫をひっくり返してでもまだ見ぬ隠れた食材を発見しないことには、間に合わないだろう。
はて、なぜ私はこんなに苦労しているのだ?
私の予定では、小説大賞か何かで何かしらの大きい賞を受賞し、文学界に彗星の如く、はたまた流星の如くデビューを果たすつもりであった。
そうして、小説の依頼はもちろんエッセイ、評論といったさまざまな仕事をこなし、着実に実力をつけていった結果、あるとき書いた小説が異例の大ヒットを飛ばし人類稀にみるベストセラー。
その後、ドラマ化&アニメ化が決定し、原作者の権力とお金を思う存分に発揮した結果、ドラマの配役は広瀬すず、有村架純、西野七瀬を起用して、どうにかこうにか裏でアハンアハンしてやる予定だったのに!
一方で、アニメの声優には「とにかくさー、演技とかよりも可愛い子にしようぜ」と、これまた原作者の権力を最大限に使い、可愛い声優ばかりを集めたアニメを制作。
残念なことにルックスを重視したあまり実力がまったく伴っていないキャストが集まり、現場はグダグダ、アニメのクオリティは最悪でこのアニメは大炎上をするのだが・・・・まあ、これはまた別の話。
だが、そんなことは露知らず。
私の勢いはその後も止まることはなく、わずか数年の間に数々のベストセラー小説を発表!
「まだまだこれからだ!」と周囲が期待する中で私はある決断を心の中でしつつ、作家では異例となる東京ドームでサイン会&握手会を開催することに。
会場は私の軽快でウェットにとんだトークで笑いの大爆発。
会場中を真夏のアフリカのように温めたところでファン7万人が見守る中、突然、静寂を求めるとファンにこう告げたのだ。
「私、女子高生廻るは・・・一般人に戻ります」
「・・・・えっ」
会場中が絶句の中、そのまま万年筆をステージ中央に置き去っていくという山口百恵スタイルですっぱりと文学界を引退。
ちなみに万年筆を置いた理由は「一度も使ったことないけど、マイクに代わるものが思いつかなかった」とのことである。
そうして文学とはこれでお別れをして、印税生活をすることすること数十年。
ちょこちょこと「あの人は今」的なテレビで取り上げられることもあったが、誰もが文学界の山口百恵こと「女子高生廻る」という名前を忘れていたある日のことであった・・・・そう、あの忌まわしい事件が起きたのだ・・・。
友人「え、まだ続くの?」
私「まだまだこれからなんだけど、これは序章に過ぎな・・・」
友人「・・どうでもいい、どうでもいいよ!そんなことはブログとかnoteに書いとけよ!」
と、いうわけでnoteを始めるに至りました。
遅くなりましたがよろしくお願いします。
ちなみに肝心の短編小説が完成する予定はなく、締め切りには到底間に合わない、ということもここにそっと書き記しておこうと思います。
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