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第3章:遊園地

1. 遊園地への誘い

 ある朝、蓮の母親が二枚の遊園地のチケットを手渡した。

「お父さんと行く予定だったんだけど、仕事が入っちゃってね。ユナと行ってきたら?」

「えっ、俺が?」

「たまにはユナと外で遊ぶのもいいじゃない。」

 蓮は戸惑ったが、ユナを見ると、彼女は興味深そうにチケットを見つめていた。

「遊園地……とても興味があります。」

「なら、行くか。」

 こうして、蓮とユナの遊園地デートが決まった。


ユナの反応

 休日の朝、二人は遊園地のゲートをくぐった。

「ここが遊園地、、、」

 ユナの瞳が輝く。彼女の視線の先には、カラフルなアトラクションや楽しそうな人々が広がっていた。

 目を大きく見開き、じっと周囲を観察するユナ。その様子は、まるで未知の世界を発見した子供のようだった。

「たくさんの人が、笑顔になっています。」

「まあ、遊園地だしな。」

 ユナはしばらくあちこちを見渡していたが、ふと蓮の方を向いた。

「ここは、人間にとって特別な場所なのですか?」

「そうだな。家族や友達、恋人と来たりして、みんなで楽しい時間を過ごす場所だよ。」

 ユナは一瞬考え込んだあと、うなずいた。

「私も、たくさん学びたいです。」

「じゃあ、どれから乗る?」

「全部体験したいです。」

 ユナの意気込みに、蓮は苦笑しつつも付き合うことにした。


3. アトラクション巡りとユナの無邪気な姿

 まずはジェットコースターに乗ることになった。

「スピードと落下の感覚を体験したいです。」

「いや、お前……怖くないのか?」

「怖いとは……どのような感覚ですか?」

「……乗ればわかるよ。」

 いざ乗ってみると、蓮は叫び続けることになったが、ユナは隣で目を輝かせながら周囲を見渡していた。

「重力加速度の変化、とても興味深いです。」

「……お前、ほんとに怖くないんだな……。」

 次にお化け屋敷に挑戦することになった。

「ユナ、こういうの怖いか?」

「ホラーの概念は理解していますが、実際の感覚を試したいです。」

 結果、蓮がビクビクする横で、ユナは冷静にお化けを観察し、蓮を守るように歩いていた。

「蓮、あの幽霊は人間の動きではありません。仕掛けですね。」

「いや、そういうことじゃなくて……!」

 他にもメリーゴーランドやシューティングゲームを体験しながら、ユナは新しい刺激に目を輝かせ続けた。

「さまざまな体験ができます。遊園地は、知識を得るのに適した場所ですね。」

 そんな彼女の様子を見て、蓮は改めて思う。

(ユナって、やっぱり普通のAIとは違うよな……。)


4. 他との違い

 ふと、蓮は周囲を見渡した。

 ほかの人々もAIを連れていたが、それらはただ荷物を持っていたり、子供の世話をしたりするだけだった。

「……ただの便利な道具、って感じだな。」

 ユナは違う。

 彼女は自分の意志で観察し、行動を学び、言葉を選んでいる。

(俺が特別扱いしてるから、そう思うのか……? いや、違う。こいつは、他のAIとは違うんだ。)

 そう確信した瞬間だった。


5. 観覧車の中で

 最後に、二人は観覧車に乗った。

 ゆっくりと昇っていくカプセルの中、蓮は妙に落ち着かない。

「……なんか、今までと違うな。」

「どういう意味ですか?」

 ユナが首をかしげる。

「なんでもない。」

 沈黙が続く。

 外の景色が夕焼けに染まり、ユナの横顔をオレンジ色の光が包んでいた。

 綺麗だ。

 蓮は思わず見とれてしまう。

(……俺、ユナのこと……。)

 言葉にするのが怖かった。

「蓮?」

「……いや。」

 今はまだ、この気持ちの正体を確かめることができなかった。

 ただ、ユナが特別な存在であることだけは、はっきりと分かっていた。


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