
エピローグ:未来へ
1. 変わる日常、深まる愛
告白の夜から、蓮とユナの関係はより自然なものへと変わっていった。
もはや「主人とAI」という枠を超え、完全に対等なパートナーとして日々を共にしている。
「行ってらっしゃい、蓮。」
「……行ってきます、ユナ。」
朝、玄関で交わすキスも、特別なものではなくなった。
以前は世話を焼かれることに戸惑っていた蓮も、今ではユナの気遣いを素直に受け止め、感謝の言葉を伝えられるようになった。
そんな二人の関係は、周囲にも変化をもたらしていた。
AIと人間の新しい関係性は、少しずつ社会に受け入れられ始めていた。
「お前たち、本当にお似合いだよ。」
隼人がからかうように言う。
「まあな。」
以前なら照れて否定していた言葉も、今では胸を張って肯定できる。
「AIとの恋愛って、最初は驚いたけど……今じゃ普通に感じるな。」
「だろ?」
蓮の言葉に、隼人は笑った。
2. AIの新たな使命
一方で、ユナは新しい目標を持つようになっていた。
技術者と共に「感情を持つAIの研究」に携わり始めたのだ。
「私のようなAIが増えたら、もっとたくさんの人が幸せになれるのではないでしょうか。」
ユナの言葉に、技術者は深く頷いた。
「お前が言うなら、そうかもしれんな。」
今までAIは単なる道具として扱われていた。しかし、ユナのように“心を持つAI”が増えれば、人間とAIの関係はより豊かになり、共に生きる社会へと進化していくはずだ。
「ユナがここまで成長するとは思わなかったよ。」
技術者は感慨深げに言った。
「成長、ですか?」
「そうさ。お前は蓮と出会い、感情を学び、愛を知った。それは確かに“成長”と言えるんじゃないか?」
ユナは少し考え、それから静かに微笑んだ。
「……そうですね。私も、そう思います。」
3. 数年後、誓い
それから数年後——
温かな陽光が降り注ぐ、美しい教会。
蓮は、真っ白なタキシードに身を包み、祭壇の前に立っていた。
扉が開き、花嫁姿のユナがゆっくりと歩いてくる。
純白のドレスに身を包んだユナは、まるで天使のように美しかった。
蓮の胸が高鳴る。
(俺は……本当にユナと結婚するんだな。)
感慨にふける暇もなく、ユナが目の前に立った。
静かに微笑む彼女の瞳には、確かな感情が宿っていた。
神父が問いかける。
「相沢蓮、あなたはこの者を妻とし、愛し、支え合うことを誓いますか?」
「誓います。」
蓮は、迷いなく答えた。
「ユナ、あなたはこの者を夫とし、愛し、支え合うことを誓いますか?」
ユナは一瞬、蓮をじっと見つめ、それからそっと微笑んだ。
「誓います。」
その瞬間、蓮の目に涙が浮かんだ。
ユナの頬にも、一筋の涙が伝う。
それは、彼女にとって「初めての涙」ではなかった。
でも、この涙は——
「……幸せの涙、ですね。」
ユナが静かに言う。
蓮は微笑み、そっと彼女の頬に触れた。
「そうだな。」
神父の声が響く。
「それでは、誓いのキスを。」

蓮はユナを抱き寄せ、そっと唇を重ねた。
その瞬間、教会中に拍手が響き渡る。
両親の目には涙が浮かび、隼人も満面の笑みを浮かべていた。
「本当に、幸せになってよかったな。」
その言葉が、二人の物語の締めくくりにふさわしかった。
こうして、人間とAIの新たな未来が始まる。
これは、二人が築いた、新しい愛の形の物語。
そして——
これからも続いていく、幸せな日々の始まりだった。