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理学療法士って何をしているの?


ケガや病気、手術をして、体が自由に動かなくなった時に、手を差し伸べること


が主な仕事。そのため、多くは病院などの医療機関に勤務している。理学療法士のイメージをつけてもらうには、日本理学療法士協会作成のこちらの動画がおすすめ。ただ最近は、スポーツ選手のコンディショニングや、産前産後の理学療法、労働者を対象とした産業理学療法など、職域は拡大している。

僕自身は、理学療法士 (Physical therapist) は、カラダの専門家だと考えている。解剖学、生理学、運動学など「理(ことわり)を学んでいる」ことが理学療法士の武器。

この記事では、理学療法士として、僕が日本でしてきたこと、シンガポールで今していることをお伝えしたい。そして、理学療法について、少しでもイメージを持ってもらえたら嬉しい。

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日本での理学療法士キャリア

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日本では以下の施設で勤めた。
・総合病院
・整形外科クリニック
・訪問リハビリ

手術後寝たきりの患者さんに対するリハビリテーションから、スポーツ選手のアスレチックリハビリテーションまで、様々な経験を積ませてもらった。 

<これまで担当した術後症例> 
人工関節置換術(股、膝、足、肩)、固定術(頸椎・腰椎)、骨切り術(大腿骨、脛骨)、骨折整復術(骨盤、大腿骨、下腿、足、上腕骨、鎖骨)、膝靭帯再建術(ACL, PCL, MPFL)、半月板縫合術、アキレス腱断裂縫合術、バンカート、など 
<これまで担当した外来症例> 
むちうち、頸椎症、五十肩、腱板断裂、急性腰痛、ヘルニア、腰椎すべり症、変形性関節症(股、膝、足)、圧迫骨折、腱鞘炎、ランナー膝、オスグッド、シンスプリント、野球肩、テニス肘、鼠径部痛、足首ねんざ、アキレス腱炎、足底腱膜炎、など
<その他> 脳出血や脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソン、リウマチ、肺炎、COPD、シェーグレン症候群、ギランバレー症候群、てんかん、など


総合病院では、術後の患者さんを多く担当させてもらった。2〜3週間で退院し、すぐに社会復帰できる方もいれば、毎日40分~60分のリハビリを数ヶ月行って、やっと施設に退院できるという方もおられた。

アスレチックリハビリテーションでは、術後から競技復帰まで6か月間以上かかることが一般的。ケガをする前よりも良い状態での復帰を目指すため、ストレッチ、筋力トレーニング、動作指導など、自主練習時間を含め、リハビリは2時間以上になることがほとんどだった。

整形外科クリニックでは、子ども~高齢者まで、1人20分、1日20人近くの患者さんを担当させてもらった。短時間の施術で変化を感じてもらい、セルフケアやトレーニングを伝えることを求められた。

こうして様々な経験を積まさせてもらって気付いたことがある。それは、対象や環境によって求められる内容が異なるだけで、考え方は同じだということ。

①なぜ痛いのか?できないのか?を見つけて
②改善方法を提供して
③自分でできることを伝える

悩みを解決できるなら、施術でも運動療法でも、改善させる方法にこだわる必要はない。ただ、「なぜ」を見つけることが一番大切であり、「なぜ」がわかるから、改善させる方法がわかり、効果的なセルフケアやトレーニングを伝えられる、のだと気付けた。

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シンガポールで僕が行っていること

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現在働いている施設は、Performance Sports & Rehab Specialistsという、整形・スポーツ専門のクリニックである。といっても、

・病院で手術をされたばかりの方
・首肩痛やヘルニアで悩む中高年の方
・ケガに悩むスポーツ愛好家
・トップレベルで競技を行うアスリート

など幅広い方々が来られている。国籍も、シンガポール人、日本人に限らず、欧米やアジア各国の方など様々。こうした職場で、僕がこだわっていることがある。それは、

「なぜ痛いのか?できないのか?」の「なぜ」を理解してもらうこと


である。というのも、僕が関わる時間よりも、それ以外の時間の方が圧倒的に長い。そのため、患者さん自身で症状に向き合ってもらうことが必要になる。僕としては、ご自身の体の状態を理解してもらえるように、評価や説明は丁寧に行うように心がけている。

以下は、僕の行なっている理学療法の流れ。

①問診・鑑別診断
②姿勢・動作チェック
③可動域・筋力チェック
④徒手療法
⑤運動療法
⑥セルフケア・生活指導

順に説明する。

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理学療法の流れ

①問診・鑑別診断

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・何に困っているのか?
・やりたいことは?スポーツ?仕事?
・思い当たる原因は?
・どういうときに悪化する?
・どういうときに改善する?
・過去に大きなケガや手術、病気はなかったか?

など、初回は特に時間をかけて話を聞いていく。「なぜ」を把握するために、患者さんのお話を聞くことが最も大切だから。日常生活や過去の思ってもいないところに、痛みの原因があることも多い。

また、痛みの原因を特定するための鑑別診断も行う。簡単に言うと、日本で整形外科医の先生が診断するために行っているテストのこと。例えば、片足スクワットの姿勢から上半身を左右に回して、膝の痛みが出るなら半月板を痛めている可能性が高いと言われている(Thessaly Test)。必要と判断すれば、レントゲンやMRIを撮ってくるようお願いし、保険請求のための書類を書くこともある。

②姿勢・動作チェック

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立っている姿勢や歩き方だけでなく、前屈やしゃがむなどの基本的な動作チェックも行い、全身の状態を大まかに把握する。普段の体の使い方によって体の一部に負担がかかり、痛みを引き起こすことが多い。動作チェックを通して、自分で気付いていない体のアンバランスに気づくこともできる。

アスリートなら、ランニングやジャンプなど、そのスポーツに必要な動作をチェックする。クリニック内で再現できない場合は、動画を見せてもらっている。アスリートの場合、求められる動作のレベルが上がるだけで、理学療法の流れは同じ。


③可動域・筋力チェック

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可動域は、関節の動きや、筋肉のかたさをチェックする。筋力は、訴えのある部位や体幹機能をチェックする。可動域不足で痛みが出ているのか、筋力不足で痛みが出ているのか、これは人によって異なるため、どちらも調べることが大切。

症状によっては、
・しびれはないか
・感覚は良好か
・腱反射は正常か(かっけなど)
・力のいれやすさは
など神経機能もチェックする。というのも、筋肉に力が入るのも、感覚が正常に働くのも、神経機能が良好であるから。

反対に、神経は圧迫されたり、伸ばされすぎると機能低下を起こす。長引く痛みがある場合は、神経機能低下も生じている場合がほとんど。※しびれが長引く場合は要注意。


④徒手療法

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徒手療法とは、手を使って体を良くすること。僕は関節のずれを修正するテクニックを中心に用いている。というのも、関節の位置のずれを修正すると、筋肉は自然とリラックスしてくれるから。もちろんよほどかたい筋肉には、直接マッサージやストレッチも行う。

背骨のずれを修正すると、背骨から出ている神経への圧迫が改善される。すると、神経機能が回復し、筋力や痛みが改善することも多い。そのため、たとえ肘や足首の痛みだとしても全身からみていくようにしている。


⑤運動療法

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徒手療法で体の状態を整えた後、運動療法で良い体の使い方を覚えてもらう。クリニックで改善しても、その良い状態を体に覚えてもらわないと、また同じ状態に戻ってしまうから。

僕は、かなり細かくチェックしながら運動指導を行う。普段使えていない筋が使えることで、普段使いすぎている筋をリラックスさせることもできるから。そして、新たな体の使い方を定着させるためには、運動を継続することも大切。こうして、悪い姿勢などは改善していく。

「自分で自分のカラダを良くできている」

と患者さんに感じてもらえることが1番嬉しい。


⑥セルフケア・生活指導

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徒手療法、運動療法で効果が認められたものをもとに、家で行ってもらうことを伝える。正しいセルフケアやトレーニングを選択できれば、1週間でも必ず改善を感じられる。

必要に応じて、椅子の座り方や歩き方を伝えたり、普段使っている机や椅子の高さなどもチェックする。体を良くしていくためには、日常生活で生じる体への負担を減らすことも、同じくらい大切になる。

また、体の回復のためには、食事と睡眠が基本。偏った食生活や睡眠不足も体をかたくする要因になる。睡眠不足は、思考力の低下やスポーツパフォーマンスの低下を招くことが明らかにされている。

以上、①~⑥が僕がおこなっている理学療法の流れとなる。

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まとめ

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少しは理学療法について、イメージを持ってもらえただろうか?少なくとも、僕が行っていることのイメージを持ってもらえたら嬉しい。

実はやっていることは、いたってシンプル。

①なぜ痛いのか?できないのか?を見つけて
②改善方法を提供して
③自分でできることを伝える

これだけ。そして、自分自身で自分のカラダと向き合えるようになってもらえることを願っている。僕たちはカラダの専門家として、それをお手伝いしているだけ。

・なかなか治らない痛み・しびれに悩まされている方
・痛みのせいでやりたいことができていない方
・スポーツなどで、もうケガを繰り返したくない方
・体の根本から見直したい方

下記HPやSNSから、まずはお気軽にご相談をください!
 ● HP: Performance Sports & Rehab Specialists
 ● Twitter: ほってぃ@走る理学療法士 
 ● Instagram: hotty.takayuki

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