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アクセルとブレーキは同時に踏めるか?

Before It’s Too Late 通信 −手遅れになる前にー
2020年12月28日 第052号
今さら聞けないパリ協定(3):1.5℃特別報告書と政府方針のギャップ

繰り返しになりますが、気候危機を解決するためには世界の平均気温を1.5℃上昇に抑える必要があります。

その場合、2030年までにCO2の排出量を2010年比で45%削減し、2050年までに正味ゼロ排出という大きな課題をクリアしなければなりません。

特に排出量が多い石炭火力は、2030年までに全廃するよう求められています。

以上を踏まえた上で、先週発表された政府の成長戦略会議の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を読んでみると、がっかりします。

再生可能エネルギー比率を、2050年に現在の約3倍の50~60%に引き上げるとしていますが、あまりに低い水準のため、メディアの中に2030年目標だと勘違いした人がいたらしいという笑えない話があります。

まだ分科会の議論が終わっていない段階で、この報告が出るのは違和感があります。短期間でまとめたようですが、熟議が必要です。

この報告に1.5℃という言葉が見当たらないのは驚きです。何のための対策なのかが欠落しています。

気候危機に対する切迫感を感じません。医療崩壊の危機感が政府から伝わってこないのと同じです。

2050年カーボンニュートラル(正味ゼロ)は、菅首相が宣言したためか何回も引き合いに出されている一方、実現に必須である2030年の具体策はありません。

コロナ同様、早めの対策が経済や社会の負担を軽減しますが、2030年までの対策を提示せずこれから開発する技術に依存しています。

コロナ対策でワクチンや治療薬ができるまでの先送りと似ています。

危機管理では最悪を想定して対策を決定することがカギです。不十分な対策では「気候崩壊」が起こります。

崩壊という結果が出てから対策を取っても手遅れです。

医療崩壊を未然に防ぐために医療関係者の意見を聴く必要があると同様に、科学者の声に真剣に耳を傾けた対策が必要です

コロナ対策で言われている、アクセルとブレーキを同時に踏むことがお家芸になったかもしれません。

実質排出ゼロと言いながら「火力の利用を最大限追求する」であるとか、原子力に関しても、「依存度を下げて最大限活用する」という本意が分からない表現を使っています。

私はアクセルとブレーキを同時に踏むと効果を相殺するため批判的表現だと思っていましたが、そうではなく積極的に実行するということのようです。

思い切ったことができないのは国際的に低い炭素税(日本では地球温暖化対策のための税)も同様です。

「成長戦略の趣旨に則った制度を設計しうるか、専門的・技術的な議論が必要」としていますが、環境省は2004年から既に検討しており、今さら議論はないだろうと思わざるをえません。

今年は、恐らく長く歴史に残る本当に困難な1年でした。

それでもオンラインで普段行けないセミナーに参加できたたり、遠くのボランティアの方と話せたり良いこともありました。

2021年が明るい希望が持てる年になって欲しいものです。

皆様良いお年をお迎えください。

横山隆美