今さら聞けないパリ協定(1):12月に5周年、めでたくもあり、めでたくもなし
温暖化や気候危機の報道にはパリ協定という言葉がよく出てきます。
この通信でも1年半ほど前に何回かに分けて書きましたが、12月12日がパリ協定採択5周年に当たることもあり、もう一度おさらいをします。
パリ協定の内容をざっくり書くと、世界の平均気温を産業革命以前、つまり人類が石炭・石油・天然ガスなどを燃やして出す温室効果ガス(GHG)を排出する前と比べ、2.0℃上昇より十分低く抑え、1.5℃上昇に抑える努力を追求することを目的としています。
現在の世界の平均気温は産業革命以前より1.1℃上昇しています。
今のままの排出が続けば、早ければ2030年に1.5℃、2050年には4.0℃上昇するという研究報告もあります。
温暖化は、日本や中国の豪雨や洪水、豪州、カリフォルニア州の大規模森林火災の原因になっています。1.1℃上昇でもこれほど異常気象が増加しています。
何も対策を講じないまま10年経ったら、当然、異常気象はさらに増えます。その時どのような被害が出るか考えると恐ろしいです。
また、最近のNature誌に発表された報告によれば、7万〜1万年前の最終氷期の平均気温は、今より6.1℃低かったそうです。2050年に4.0 ℃上昇が意味する影響の大きさが分かると思います。
この協定には、以下のようにめでたいことがもちろんあります。
*世界約200国が合意して成立したこと。
歴史的にGHGを大量に排出して経済成長してきた先進国と、これから排出して国民の生活のレベルを上げたい発展途上国で、それまでは削減について一致点が見つからなかったところ、パリ協定では殆どすべての国が合意しています。
*各国が自主的に削減目標を決めて国連に報告しています。
ところが、次のような余りめでたくないこともあります。
*世界の平均気温の目標から逆算して各国が必要な削減目標を作るのではなく、あくまで自主的に作るため、各国がそれぞれの目標を達成しても、3.0℃上昇すると試算されています。
*各国が自主的に提出した削減目標ですが、日本を含め達成が危ぶまれる国が少なくありません。
折角の国際的合意も不十分な点が多かったのですが、気候危機のリスクが高まるにつれ、5年毎に求められている削減目標の見直しでは、厳しい(野心的)目標に変更する国が増えています。
日本も先進国の責任として野心的な削減目標に見直すべきですが、そのためにも政府が改定作業に入っているエネルギー政策の内容が重要になります。
パリ協定5周年に向け、政府のエネルギー政策の抜本的改定を要望する署名を計画しています。
その際は、ぜひご協力ください。
横山隆美