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三度目の正直? 「温室効果ガス2050排出ゼロ」発表

          
前号で今後の温室効果ガスの排出に大きく関係する、エネルギー基本計画(エネ基)の見直しが始まったと書きました。

菅首相は安倍政権の政策を踏襲すると言っていたので、見直しで大きな進展は期待できないと思っていたところ、所信表明演説で、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにすることを発表しました。

しかも「宣言します」と、オリンピックの開会宣言のような強い調子だったので、びっくりです。
 
それを受けて、環境関係のNGOは一斉にコメントを発表。

各々細かな点は異なりますが、主な主張は以下のようなものです。

・2050年ネット・ゼロ目標を法定化すること。
・2030年の削減目標を大幅に引き上げ、1990年比で45%〜50%削減し、パリ協定の1.5℃目標に整合させること。
・2030年までに石炭火力を全廃すること。
・脱原発も進めること。
・現在実用化されている技術で達成する計画を立てること。
・再生可能エネルギーや省エネのための制度設計と投資を行うこと。

つまり、2050年ネット・ゼロと宣言するだけでは不十分であり、その裏付けとなる具体的かつ積極的な行動計画が必要だということです。

スローガンだけで達成できるようなものではありません。

ところで、遅まきながら読んだ「文明崩壊」(ジャレド・ダイアモンド著)に、集団の意思決定を失敗に至らしめる要因として、4つのカテゴリーが挙げられていました。(妻は新味のない分類だと厳しいです。)

① 実際に問題が生まれる前に、集団が問題を予測することに失敗する。
② 問題が生まれた時、集団がそれを感知することに失敗する。
③ 問題を感知した後、解決を試みることに失敗する。
④ 問題の解決を試みたとしても、それに成功しない。

読みながら気候危機が、どの段階なのか考えました。

①は数十年前からすでに科学者が指摘していましたが、集団として予測するまでには至りませんでした。

②は集団(人類)の全員が感知しているとは言えませんが、現状では感知している人が主流になっています。

③がいま問われていることです。排出産業の目先の利益を優先して時間稼ぎをすると、手遅れになります。

解決をいま実用化できていない将来の技術に委ねようとすると、④の失敗に至ります。

今度こそは失敗をせずに、世界のすべての政府、自治体、企業、団体、市民が協力して持続可能な地球環境を将来世代に残したいと思います。

皆さんの協力も期待します。

横山隆美