SFショート まぼろしのチャーハン 山奥食堂
山口駅から山下本線で山中駅まで行き、山中駅で山上線に乗り換え、 終点の山奥駅まで行く。
そこから歩いて10kmのところに山奥食堂はあるという。
最近、巷でこの話がささやかれるようになった。でもその場所を 知る人は誰もいない。
亡くなった冒険家石橋三平の若いころの日記が新たに発見された。
その中で石橋は登山の途中、道に迷い、3日間山の中をさまよい たまたま見つけた山奥食堂に入りチャーハンを食べた。
そのチャーハンはこの世のものとは思えないくらいうまいチャーハン、
まぼろしのチャーハンだと・・・・・。
*
「おい、行ってみないか山奥食堂に」 ぼくは親友の翔太に声をかけた。
「本当にあるのかな、でも面白そうだし、どうせ暇だし」翔太が乗ってきた。
次の日、山下本線、山上線と乗り換え、目的の山奥駅までぼくたちは たどり着いた。
「さあ ここからどっちにどう行けばいいんだろう」翔太が言う。
「何とかなるよ」とぼくは言い、とりあえず山道を歩き始めた。
進むに連れ、だんだん道は狭くなり、薄暗くなってきた。
「あきらめて引き返そうか」翔太が言う。
「なに言ってんだ、まぼろしのチャーハン食べたいんだろ、行くぞ」 ぼくも多少心細いが努めて強気に振舞っていた。
しばらくすると周りは真っ暗になり何も見えない。
「今日はここで休もう、明日になれば見つかるさ」 ぼくはそう言って翔太より先に寝た。
翌朝、目が覚めたらうっすら日が差していた、晴れている。
「翔太起きろ行くぞ」無理やり翔太を起こし、ぼくたちは歩き始めた。
どのくらい歩いたのか、どのくらい寝たのか、何日経ったのかも わからなくなってきた。
腹が減った、意識がもうろうとしてきた。
そして・・・、 目を凝らした、何か見える、赤い看板、煙突から白い煙。
たどり着いた!、恐る恐る扉を開けた、中には70歳くらいに見える 親父が1人。
不愛想に「らっしゃい」
「あの~ チャーハン2杯 いいですか」 「チャーハン2杯ね」
しばらく沈黙の緊張感が走った。
「お待ちどう」テーブルに出てきたチャーハンに僕らはむさぼりついた。
うまい、まさにこの世のものとは思えないうまさだ。
「ごちそう様でした」親父さんに礼を言い、帰り道を教えてもらい、 ぼくたちは無事帰り着くことができた。
*
それから数日後、翔太がぼくに「あのチャーハンうまかったけど、 何がまぼろしのチャーハンなのかな、特別なものは入っていなかったし」 と言った。
ぼくにはわかっていた、空腹がチャーハンをうまくし、まぼろしにして くれたことを。
―あとがき―
Are you hungry? 空腹が最高の調味料、まぼろしのチャーハンを 食べたければ、お腹ペコペコにしてから食べに行こう!
腹減ったぁ~ 今日は日曜日 中華坊主のチャーハンお得! 500円 大盛もそのまま500円
おしまい