11月11日 11時11分
その男はいつも11時11分にタイムカードを押した。無口で笑うこともなく静かに席に着くとパソコンの電源を入れ、仕事を始めた。基本フレックスタイムの会社で総務や経理の管理部門を除く営業部隊は専門職ばかり。
ある日、男の通勤路線で遅延が発生したらしく11時11分の男は11時30分頃出社してきた。今日はタイムカードどうするんだろう? と一瞬思ったが、男は押さずにそのまま席について仕事を始めた。
電車遅延など明確な理由があるときは、そのまま打刻しても定時出社扱いであったが、彼なりの拘りなのだろう。
後日総務の山田映子が11時11分の男
席に来てひと言、二言会話していた。
よく見ると、手にはタイムカード。男が電車遅延した日には手書きで11:11と記入されていた。おそらく山田が書いたのだろう。男は少し微笑んでいた。
半年後、11時11分の男と総務 山田映子が結婚したという話しを聞いた。
だからなんなんだと言われても、なんと!話はここで終わりである。
ビックリさせてしまったら申し訳ないが、自分が一番ビックリしている。(了)