父親
オトンがなくなったのは、高校生の頃。
急に弟が大きな声で「すぐ2階にきて」と叫んだ。その時には口から泡を吹いていて、既に意識はなかった。
弟が間髪いれずに心拍を確認し人工呼吸を行っていた。私は一歩遅れる形でやった事もない、心臓マッサージを必死でやった。
すぐに行動できる弟をみて、「凄いな」と感心した事を今でも覚えている。
その後、意識が戻る事なくオトンは亡くなった。
思い返してみれば、オトンとの記憶がほとんどない。一緒に何度かキャッチボールした記憶はあるぐらい。これといった想い出もパッと浮かんでこない。
オトンはわたしが小学4年生の時に、脳梗塞で倒れた。幸いにも命は助かったものの、記憶は障害が残った。
そこからは、オカンとオトンの関係が悪化した。常に喧嘩してる声を聞いていた。
その声が知らぬ間に自分のストレスとなり、気付けば「十二指腸潰瘍」と診断。
そんな嫌な記憶しかなくて、あの時の私はオトンの事が嫌いだったんだと思う。
酒はたくさん飲むし、ギャンブルもする。
借金して家族にも迷惑を掛けていた。
そんなオトンの存在がストレスでしかなかった。
大人になっても酒は呑まないし、ギャンブルもしない。あの頃は本気でそう思っていた。
でも、気質は似ていたのかな。酒も毎日投稿飲むし、学生時代はギャンブルに明け暮れた。
今オトンが生きていたら、一緒に呑みにいった時どんな話をするのだろう。
あの頃の私はオトンの気持ちなんて全く考えた事もなかった。もちろんオカンの気持ちも。
でも、大人になって家族もいる状態になって、はじめて親の当時の気持ちが気になってきた。
オトンは何でオカンと結婚したのか。
何の仕事してるのとか。
どこの居酒屋によくいくとか。
好きな食べ物は何?とか。
もう聞く事はできないんだけど、今になって知りたい事が山のように湧いてきた。
オトンの事、何も知らなかったんだな。
自分の父親なのに。
年末に実家に帰った時はオトンと心で会話してみようかな。写真の前だけど。
その時は自慢の家族も連れていこう。