GO FIGHT CLUB―闘争を通じた育成の宣言、あるいはクリエイティブディレクターという職業について。
日本にはクリエイティブディレクターが足りない。多分、全国で800人くらい、現役で本物に絞ったら200人くらいしかいないんじゃないだろうか。
令和2年を迎える前に、この問題に対してきちんと向き合わないといけないと思った。パーティが好きそうな女優がやばい薬をやっていたとか、お気楽そうな総理大臣が自分と奥さんの仲良しばっかりお花見に誘っていたとか、「プーさんがハチミツを舐めていました。また、力士はちゃんこを食べている模様です」みたいな報道に一喜一憂している場合じゃない。
資源もない、人口も増えない、降雨量は増え続ける、そんなこの国が豊かであり続けるために、「クリエイティビティ」は貴重な資源だ。そのクリエイティビティの専門家をもう少し増やすために、微力ながら、できることはやっていこうと思う。
【クリエイティブディレクターの定義】
クリエイティブディレクターとは何か?
この問いかけに対して、誰よりも真剣に向き合ってきた自負がある。
大学時代、小説家を諦め、表現にまつわる仕事をしたいと考えていたとき。
博報堂に入社し、マーケティング部門に配属され、絶望しながら。
PR部門に異動になり、クリエイティブディレクターを勝手に名乗りながら。
TBWA\HAKUHODOでクリエイターとして全く成果を出せなかった時に。
大組織をでて、クリエイティブの可能性について試行錯誤を重ねながら。
GOで、クリエイティブディレクターの領域を広げる実験し続けながら。
自信がないからこそ、簡単にはなれなかったからこそ、この仕事の可能性を広げたいからこそ、ずっと、クリエイティブディレクターとは何か?と考え続けてきた。
かつては広告制作の専門家のことだった、TVCMや新聞広告を作るチームのリーダーのことだ。2000年代に入ってから広告は単なるマスメディア単体で機能することが少なくなり、デジタルや体験、PRを含んだ統合的なプロモーションを設計する専門家のことを指すようになった。さらに時は流れて、令和の時代が始まろうとしている今、クリエイティブディレクターの職務領域は大きく広がろうとしている。
GOのクリエイティブディレクターは、テレビCMやWEBサイトなどの広告コンテンツの制作はもちろん、企業の新規事業開発、アパレルブランドの立ち上げ、フェス、ビジネスカンファレンス、企業の人事制度・研修プランなどこれまでのクリエイティブディレクターの職域をはるかに超えたプロジェクトを手がけている。クライアントのビジネスの成長のために、事業開発からプロモーション、ブランディングまで、あらゆることを全力でサポートする。構想し、実現する。まさに、恋と戦争は手段を選ばない。我々はそれを「事業クリエイティブ」と呼んでいる。
GOのクリエイティブディレクターは、これまでのクリエイティブディレクターと全く違う仕事の進め方をしているのだろうか。そうではない、クリエイティブディレクターという職業の本質を追求しているからこそ、軽々と越境していけるのだ。その本質とは何か?
それは、「非連続の成長を起こす」ということに尽きる。言い方を変えれば、「普通にやっていたら起きないことを起こす」ということだ。松本人志は「できることを何回やっても、できないことができるようにはならない」と言った。
【クリエイティブディレクターの役割】
これまでの資本主義社会では、すべてを数字に翻訳できるような効率と論理の追求で発展してきた。しかし、テクノロジーが極限まで発達してきた現在においては、それだけでは市場の成長が見込めない。AIとロボットテクノロジーはあらゆる局面で「最適化」を推し進めて、あらゆるものを究極的に便利にしてくれた。極限まで安価にしてくれた。その結果、我々の身の回りに起きたことは何か。同じような品質、同じような価格、同じような見た目の最高に素敵なものが溢れかえった。我々は選ぶこともできなければ、選ぶ楽しみもなくなった。マリーアントワネットは「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」とのたまったとかいうが、どこを見渡しても美味しくて安価なドーナツだらけだったら退屈で死んでしまうだろう。
こんな最適化が暴走した無限に平和な砂漠のような文明社会で、我々は何を欲しがればいいのか。何を望めばいいのか。人間が前に進むための原動力であるはずの欲望さえ美しくパッケージングされて、自分でもその手触りが見えなくなってしまっている。
それでも、人は美しいものを求める。面白いものを求める。
あるいは、正しいと思えるものを求める。信じられるものを求める。
絶対的に、共感できるものを求める。感情を揺さぶられるものを求める。
そう、論理と効率の追求により、機能が飽和した今の社会においては、思想や美学・信念と言ったこれまでの資本主義社会では数値化できないが故に無視されてきたものこそが市場を駆動し、人々の欲望を突き動かすのだ。
大量に廃棄物を出すアパレルブランドの服を誰が好き好んで着るだろうか。
地球の裏側で少年少女に過酷な労働を強いて注がれるコーヒーを美味しいと感じられるだろうか。
なんの根拠もなく性別や肌の色で待遇を変える企業で働くことを誇りに思えるだろうか。
「衣食足りて礼節を知る」と古代中国の賢者は語ったが、地球の豊かな資源を使い尽くす寸前でようやく人類はここまできたのだ。労働や市場に、意味や美しさ、正しさを求めることができるところまで、ようやく進歩することができたのだ。
「お待たせしました。お待たせしすぎたのかもしれません」・・・これは地球とか、未来の人類とか、僕ら自身に対しての言葉でもある。
だからこそ、市場においても、そしてそこで生きる人々にとっても、クリエイティビティがかつてないほどに求められる時代が訪れている。そこで、論理と効率を超えた、美しさや正しさをフックに市場を成長させるための技術、すなわち「非連続の成長を起こす」専門家としての、クリエイティブディレクターという職業の価値は極めて高まっているのだ。GOのクリエイティブディレクターをはじめとしたクリエイターたちが、広告やファッションの領域を超えて、様々な分野で活躍しているのは必然と言える。求められる場面はますます増えていく。こんなに素敵な商売はないと、今、改めて胸を張って言える。
【クリエイティブディレクターの技術】
しかし、ここで問題がある。クリエイティブディレクターにはどうやってなれるのか、という問題だ。「小説家」や「旅人」のように、そう名乗った瞬間から君はクリエイティブディレクターだ!!・・・といってしまえれば楽なのだが、そうもいかない。非連続の成長の専門家を謳う以上は、非連続の成長を、再現性を持って実現できないといけない。そのためにはいくつかの素養と技術が必要になる。簡単に整理していこう。
まず、素養としては「愛」と「教養」が必要だ。
「愛」が必要なのは、クリエイティブディレクターはそれなりにキツイ仕事だ。答えがない問題に対してギリギリまで考え続ける。この仕事に対する愛、世界を良くしたいと思う愛、人間への愛、商品やブランドに対する愛、クライアントやチームに対する愛がなければ途中で諦めてしまう。妥協したもので人の心が動くことはない。
「教養」も欠かすことはできない。クリエイティブディレクターは表現する仕事だ。迂闊な思いつきや、その時その時の気分で表現してしまったら、それがどれだけ面白かったとしても、予期せぬ人を傷つけたり、想定外の悪い影響を社会に及ぼしてしまうこともある。今、世界では何が起きているのか、かつて人類は何を学び、何を失敗してきたのか。歴史はもちろん、アートや社会情勢、経済についての幅広い洞察がなければ、表現を世に問う資格がない。フィリップマーロウは「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」と言った。クリエイティブディレクターにとっては、愛がなければ仕事はできない、教養がなければ仕事をする資格がないと言える。
その上で、さらに知識としては最低でも以下については知っておいてほしいし、この中のどれかについては圧倒的な専門性を持っていないといけない。
「コピーライティング」
「編集」
「デザイン」
「動画」
「テクノロジー」
「SNS」
他にも欲をいえば、金融や法律などなど、広範囲な知識と技術を知っていてほしいが、まずはこれくらいにしておこう。しかも、厄介なのは、これらを身につけるだけではダメで、これらの技術を時代の変化とともにアップデートし続けなくてはいけない。これだけの広範囲な技術と、それを最新の状態で学ぶ環境は、残念ながら日本にはない。
倍率50倍と言われる電通や博報堂に新卒で内定し、その選ばれた中で最も適性がある10人程度がクリエイティブ部門に配属される。この時点で10000人のうち10人という圧倒的な狭き門だ。その上で、本物の、機能するクリエイティブディレクターになるためには、ここから10年以上をかけて、いい師匠・いい仕事・いい仲間に恵まれて、順調にチャンスをもらい、圧倒的にチャレンジし、徹底的に努力し、適度に挫折したりしないといけない。こんな、マンボウの産卵みたいな運ゲーでしか、現在のクリエイティブディレクター育成の正規ルートはないのが実情なのだ。もちろん、一部の天才みたいな例外はいつの時代だっている。だが、天才が数人生まれたところで、市場も歴史も変わらない。本物のクリエイティブディレクターが継続的に生まれる仕組みを日本に作らないといけない。「非連続の成長の専門家」を市場に増やし、非連続の成長、言うなれば「素敵なアイディア」を社会にインストールし続けることが、論理と効率による成長を見込めないこの国が発展するための一つの勝ち筋だと僕は確信している。
【クリエイティブディレクターの育成】
GOには三浦をはじめ、砥川・鶴見・冨永という4人の戦略からブランドアクションまで設計できるクリエイティブディレクターと、4人の若くて優秀なクリエイターがいる。彼らもいずれクリエイティブディレクターになるだろう。僕たちが仕事や生き様を通じて背中を見せ続けるのも一つの道だ。しかし、それだけではない、もっと確かな仕組みを作りたい。そこで今回のGO FIGHT CLUBの立ち上げに至った。
まずは極めて少人数から始めたい。真剣に内容を検討し、課題を課し、真剣にフィードバックし、議論し、育成する。そのためには人数を増やすことはできない。もちろん、仕組みがしっかりと作れれば人数は増やしていく。だが真剣に、誠実に、採用をも視野に入れた育成環境を作る上では、今は少人数の仕組みが限界だ。短期間でクリエイティブディレクターを育てるために最高の環境を作れたと自負している。
今回の塾のポイントは三つある。
・カリキュラム
・採用直結型
・完全生対面講義
それぞれ説明していこう。
①カリキュラム
クリエイティブディレクターに必要な知の技術を細分化し、それぞれの分野における最先端でド現場の専門家を二人ずつお呼びしてある。クリエイティブの技術もルールも、日々アップデートされ続けているので、一人の視点ではなく、複数の視点を提供し、受講者に見比べ、咀嚼し、自分のものにしてほしいという狙いだ。また、一流の講師どうしが競い合うバチっとした空気感を出す狙いもある。講師と生徒との真剣勝負であると同時に、講師どうしの真剣勝負でもあるのだ。
②採用直結型
GOとしては、この塾の受講生の中から最低ひとり、あるいはそれ以上の人数を将来のクリエイティブディレクター候補として採用するつもりだ。現在GOのクリエイティブディレクターの最低年俸は1100万円、当然もっともっとあげるつもりで経営している。人生をアップグレードするためにも真剣にチャレンジしてほしい。
③完全生対面講義
今回はSNSや動画によるオンライン受講を一切認めない形になっている。マネタイズや影響を与える効率を考えれば、非効率極まりないが、本物のクリエイターを育成しようと思ったら、生身と生身でぶつかり合い、リアルタイムでフィードバックし、意見交換し、影響を与え合うしかないという結論に達した。講師の中の誰かが、人生を変えてくれる師匠になるかもしれない。そういう予期せぬ、人生を変える出会いの可能性まで提供できたら嬉しい。
【クリエイティブディレクターの顔ぶれ】
講師について、そして彼らから学ぶことについて、簡単に説明する。
0:
三浦崇宏(GO)
The Breakthrough Company GO代表
PR/クリエイティブディレクター
1:広告
砥川直大(GO)
GOで最も厳しいクリエイター。SDGsについての知見も日本最高峰。
チームにも、クライアントにも妥協を許さない方法論とは。
2:広告
橋田和明(84)
博報堂ケトルのエースとして、日本の統合クリエイティブを確立した男。
世界からも評価される、PRとマス広告を組み合わせたプランニングとは。
3:動画
藤野良太(storybord)
元CXでヒットドラマを作り続けてきた。
日本の若者の感情を動かす、古くて新しい技術を知りたい。
4:動画
瀧澤慎一(僕とYOU)
HONDA、日清、コカコーラ、日本を代表するブランドのCMを手がける。
音楽と映像と物語のケミストリーについて。
5:言葉
鶴見至善(GO/ひろろ)
経営者の精神、理想を言語化する言葉の戦略参謀。
令和時代のコピーライターのあるべき姿とは。アイドルの話も聞けたら。
6:言葉
竹村俊助(WORDS)
「メモの魔力」「実験思考」などを手がけたヒットメーカー
SNS時代の伝わる言葉を教えてもらおう。
7:小杉幸一(onehappy)
21世紀の広告デザインを完成させつつある。メジャーブランドから人気アーティストまで手がける、色彩とデザインの魔法を教えてもらう。
8:土屋尚史(グッドパッチ)
日本にUXというビジネスを作った男。
アプリだけではなく、組織や概念のデザインについて。
声が異常に低いから耳をすましてよく聞いてほしい。
9:築地ロイ良(バードマン)
カンヌをはじめ、世界で400以上の受賞歴を持つデジタルのクリエイター
世界が驚くクレイジーなアイディアの秘密とは。
10:鈴木瑛(TikTok)
電通在籍時から海外の広告賞を多数受賞。
世界の頭脳100人に選ばれた人間の見据える未来のクリエイティブとは。
11:ゆうこす(KOS)
言わずと知れたモテクリエイター。
天賦の才に溺れない、確かなソーシャル戦略を学んでほしい。
12:渡辺将基(新R25)
SNS世代のメディアのあり方を確立した男。
単なるバズるだけではない、刺さるコンテンツの作り方を聞きたい。
13:曽原剛(Death of Bad)
日本人で初めてappleのクリエイティブディレクターを務めた巨匠。
世界基準のクリエイティブは何が違うのか。
こんなラインナップだ。彼らのことを知らないかもしれない。しかし、彼らの作っているものは誰もが知っているはずだ。彼らよりもSNSのフォロワーが多い人たちはいくらでもいる。だが、最先端、ド現場で、最も闘っている「本物」のクリエイターにだけ声をかけた。この14人が、今現在最高の講師陣であると胸を張って言える。
【クリエイティブディレクターを募集】
日本にはクリエイティブディレクターが足りない。企業でも、行政でも、NPOでも、あらゆる場所で、非連続の成長を生み出すアイディアを生み出すプロフェッショナルが求められている。それは、クリエイティブディレクターの集団である、GOでも同じ状況だ。同じ思想、同じベクトルで社会を変えようとする仲間をずっと探し続けている。だからこそ、この塾を始めるのだ。GO FIGHT CLUBーその名前の通り、優しく教えてくれる場所ではない。生ぬるいオンラインサロンでもなければ、平和な学校でもない。闘いの場所だ。
毎回宿題が出る。厳しいフィードバックがある。正直、キツいだろう。だが、そんな環境で、与えられるのではなく、自ら掴み取ったものだけが、あなたの人生と、この社会を変える本当のクリエイティブの力になると確信している。我々GOは、この規格外の負荷をかけることで、クリエイターとして真剣に戦っていく人間を見つけたい。育てたい。GOも、各講師も、ここから、1名以上の人間を採用するつもりだ。運命の出会いが欲しいのは受講生だけじゃない。戦う覚悟のある人だけ応募してください。こちらはそれに応える準備をしています。次は教室で、いや、リングで会おう。よろしく。
The Breakthrough Company GO
三浦崇宏
あ、というわけで、募集人数、20人だけ増やします。合計50人の本気のやつと出会いたい。
GO FIGHT CLUB
https://goinc.co.jp/fightclub/