海外に派遣する従業員の安全どうやって確保する?
【海外進出する経営者の悩み】 計測機器メーカーの総務部長です。インドに出張所を設けて調査や現地代理店のサポートを行います。海外に出ると感染症、事故、テロ・政変、自然災害等日本に比べるとリスクが高まると認識しています。これまで出張者に全て委ねてきましたが、出張所に留まらずメンテナンス拠点や工場設置の必要性もあり、今後はマニュアル作る等組織的に従業員安全確保策を展開すべきと社長からいわれています。どのような手順で海外にいる従業員を守ったらよいでしょう?
【質問に対するお答え】 海外安全対策は情報の収集→影響予測→対策の選択・実行の手順で進めますが、まず外務省の「たびレジ」に登録し、的確な情報を入手し、テロや事故現場に居合わせないようにすることから始めます。また外務省の海外安全ホームページ等から危険情報、感染症危険情報、スボット情報、広域情報、穴全対策基礎データ、テロ・誘拐情報等を得て安全対策を検討し実行に移します。今回は基礎的な安全対策について解説します。
1.益々高まる安全対策構築の必要性
グローバル化の進展とともに企業の海外活動は活発化し、海外赴任や海外出張の機会が増加しており、日本人が海外で事故や事件などに遭遇する可能性は高まっています。日本人が海外でテロに巻き込まれるだけでなく、テロの標的とされる可能性があります。日本や日本人に対する期待や注目は我々の想像以上に高く「見られている」ことを念頭に置いて行動すべきです。在留者だけでなく、短期留学者もテロの被害にある可能性があります。またテロは中東・北アフリカのみならず先進国を含む世界各地で起こり得ます。
2.安全対策は「たびレジ」登録から
様々なリスクを回避するために、まずすべきことは、的確な情報を入手し、テロや事故現場に居合わせないようにすることです。その可能性を高めてくれるのが、外務省の「たびレジ」です。「たびレジ」は滞在先の最新の海外安全情報や緊急発生時の領事メールやいざという時の緊急連絡先が受け取れるシステムです。メールの宛先としてご自身のアドレス以外に家族や職場のアドレスも登録できます。
「たびレジ」に登録で完璧ということではありませんが、これが安全対策の第一歩です。以下は外務省「たびレジ」およびへのリンクされています。
海外に住所または居所を定めて3カ月以上滞在する日本人には在留届の提出が義務付けられています(旅券法第16条)。在外届は在外公館が現地に居住する日本人を把握し、緊急事態が発生した際に迅速な援助や支援などを行うために不可欠な基礎情報です。在留届を提出しておけば「たびレジ」同様の最新安全情報が提供され、緊急事態に対しても迅速に対応してもらえます。
3.次は外務省海外安全情報から情報収集
外務省の海外安全ホームページ等から以下の情報が得られます。
(1)危険情報:安全面で特に注意が必要な国・地域の現地情報や安全対策の目役を4つのレベルに分けて表示しています。
(2)感染症危険情報:危険度の高い感染症について海外渡航や赴任に当たって特に注意が必要な国・地域における流行状況や予防対策の目安を4つのレベルに分けて表示しています。
(3)スポット情報:限定され他期間や場所で発生した事件や事故な速報です。
(4)広域情報:複数の国・地域にまたがる広い範囲で注意が必要な情報です。
(5)安全対策基礎データ:防犯やトラブル防止に役立つ各国や地域の基礎情報です。各地の犯罪発生状況やよく見られる犯罪手口、防犯対策の他、出入国に当たっての注意事項、風俗や風習に関する注意事項等をまとめています。
(6)テロ・誘拐情報:その国や地域のテロや誘拐に関する情報です。
4.海外危機管理のプロセス
海外における危機管理を行う際には一般に以下のプロセスを念頭において行うと効率的に対策を立てることができます。
例えば3(1)では、現在の危険情報区分はどのレベルか、その国の渡航地域だけでなく周辺エリアの治安情報を確認した上で、どの程度の安全対策が必要か検討します。また気をつけるべき感染症の流行など、疾病に関する情報も必ず確認するようにし、予防接種など必要な対策を講じます。
5.情報と情勢は変わりやすい
現地の治安情勢は、ちょっとした出来事で大きく変化する場合があります。安全対策は環境によって内容が変わりますので、治安情勢の変化には十分な変化が必要です。変化は斬新的な場合も突発的な場合もあります。普段から関連情報の収集を行い、情勢の変化に気が付いたら安全対策を見直すことが、身を守ることにつながります。