18.華麗な衣装はセレブなムード

ダンス特有のヘアスタイルや肌の黒さに度肝を抜かれた私をよそに、先輩達は

「じゃあオレらは衣装に着替えてくるから先に応援席に行ってて。」

と私達を残して更衣室に行ってしまった。

あのビジュアルにさらに衣装か・・・。

凄いことになりそうだ。

しばらくするとスタンダード部門に出場する部長が戻ってきた。

オ〜！　なんか指揮者みたいっすね！

「これは“燕尾服”っていってね、最上級の礼服なんだ。裾が燕の尻尾みたいだから燕尾服っていうんだよ。」

それは私が人生で初めて見る“燕尾服”であった。

燕尾服は思いのほかカッコ良く、

この格好だと部長の七三分けのカチテカヘアーが変に見えないのである。

いや、むしろ似合っていると言っても過言ではない。

よく出来てるもんだな〜。

これ幾らぐらいするんすか？

「値段？　これはセミオーダーだから１０万くらいかな。」

じゅ、１０万！？　　１着で！？

「フルオーダーだともっと高いよ。」

マジか。貴族かよ。

もしかして、オレも近いうち買わないといけないんすか？

「いやいや(笑)、最初は先輩のおさがりで充分だし、そもそも１年生の間は燕尾は着ないから心配しなくても大丈夫だよ。」

良かった〜。

胸を撫でおろしたところで、デヴィ先輩も着替えから戻ってきた。

デ、ディズニー！？

デヴィ先輩はディズニー映画に出てくるプリンセスのような、キラキラと光る石がふんだんに使われたフワッフワの青いドレスを着ていた。

さながらシンデレラのようだ。

エレクトリカル・パレードにいてもおかしくない。

いや〜、キレイっすね、先輩。

「ありがと❤️　こういうドレスを着たくてやってる女の子も多いのよ。」

なるほど〜。

こうして見るとデヴィ先輩のヘアスタイルもこのドレスなら全然違和感がない。

むしろ普通の髪型の方が似合わないかも知れない。

そうか、ダンスヘアーは衣装に似合うようにセットされているのか！

今さら気付いた私であった。

ところでこのドレスはおいくら万円なんすか？

「これ？　これは中古のドレスだから１５万くらいだったと思うけど。」

・・・はっ？

「だから１５万。」

ウソでしょ！？　中古で！？

ハイブランドもあわやの値段である。

セレブかなんかですか、アナタ。

「オーダーだと３０万くらいするわよ。

レンタルでも５、６万するからね、何回も着るんなら買っちゃった方が得なのよ。」　

はぁ・・・。

金カカルネ、社交ダンスッテ。

衣装の値段に衝撃を受けたのもつかの間、そろそろ試合が始まろうとしていた。

次回、試合はスタンダードから！

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