11.邂逅編 Part.2

のちの妻となる女子にモーレツにガンを飛ばされていた私であったが、その理由は皆目見当がつかなかった。

そもそもどこの誰かもわからないのである。


しかし格好から察するに、どうやら同じ新人戦で決勝に残っているらしい。

ということは彼女は名城のパートナー校である愛知淑徳の1年生であろう。 (正確には短期だった)

「何だろうね、アレ。感じ悪いね。」 

そ、そうだね。あんま見ない方がいいんじゃない。

決勝戦の時間が刻々と近づく中、私達は視線を感じながらも極力気にしないよう努めた。


「次が最後だね。」

そ、そうだね。

「私、もっと一緒に・・・行きたい。」

僕もさ。

「もっと奥まで動いて・・・いいよ。」

わかった。頑張る。

「行く時は一緒だよ。」

もちろんさ!


そうこうしている内にいよいよ決勝戦が始まった!

私達は2種目を無我夢中で踊り、フロアを駆け抜けた。

一緒に踊り切った! そういう感覚があった。

踊り終わった後、すぐに例の先輩が駆け寄ってきた。

「良かったわよ、坊や。アナタの男、見せてもらったわ。後は結果発表を待つだけね。」

はい! 優勝出来そうすか?

「それはジャッジ次第ね。そのジャッジが何を重視しているかで結果は変わってくるわ。結局はジャッジの主観だからね。」

そういうもんすか。

表彰式が始まった。

「新人戦、優勝は・・・

愛知学院、オオサカ・○○組❗」


ヨッシャー❗ やったぜー❗

パートナーと健闘を讃え合う。

「やっぱり私、オオサカ君が初めてでヨカッタ。」

僕もさ。

先輩達も皆んな喜んでくれている。

「やったなー、オイ!」

「学院バンザーイ!」

初めての試合での優勝の喜びに浸っていたその時、またパートナーが私に教えてくれた。

「ねぇねぇ、さっきの子、またコッチ睨んでるよ。しかも泣きながら。」


えっ、また? しかも泣きながらって。

見ると彼女はうっすらと目に涙を溜めながら、しかしハッキリと激アツのガンを飛ばしている。 

しかも私に。 

こえ〜😱


いったい何が彼女をそうさせるのかは謎だったが、恐怖を感じた私はそそくさとその場から立ち去り、自陣へと帰還した。

その日は彼女とはそれっきりだったので、淑徳の1年生ということは判ったが、この時点ではまだ名前も把握していなかった。


何年か後に本人から聞いた話しによると、

準決勝が終わった時ガンつけていたのは、彼女のカップルが1チェック落としていたからで、フルチェックの私達に対して

「決勝ではゼッテーやっつけてやんよ!」

と思っていたかららしい。 (ヤンキーか)

決勝の後、目に涙を浮かべながらガンつけていたのは、当然自分達が優勝だと思っていたのにどこの馬の骨だかわからない奴らに優勝を持っていかれたせいらしい。

彼女のカップルは2位だったのだ。


この日を境に彼女の中で私は

「倒すべき敵」


として認識されたのであった。

こうして知らない間にアプローチに成功していた私。

だって彼女はそれから四六時中ワタシの事を意識するようになったのだから。


以上が私と妻が初めてお互いを認識した出来事である。


次回、時はダンパの少し後にさかのぼる!





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