【準備不足を言い訳にしない】自分を敢えて窮地に追い込む創造性
米国の流行りの歌などに良く「What are you waiting for?」というフレーズが出てきます。そのまま訳せば「何を待ってるの?」となりますが、意訳するなら「何故今やらないの?」といったニュアンスになるでしょう。何か新しいことに挑戦する際の不安や躊躇する気持ちを勇気付けるメッセージですね。それに少し似ているのですが「準備不足のススメ」という弊社オリジナルのワークショッププログラムがあります。
「準備不足のススメ」は自分が独立起業した時の経験を活かして、今の自分が持っている生産性、人脈やリソースの棚卸をして独立への後押しをするためのプログラムです。人間は元来怠惰で今日できることさえ明日に延期してしまう。また、何かを新しいことに挑戦する際、尻込みする余り、準備不足を言い訳に挑戦を止めてしまう。有名な実業家の元に起業のアドバイスを乞いに訪れる人の多くがその後何もしない、というデータもあるようです。
私が企業を退職して米国での起業を決意した時も、全く何の準備も出来てはいませんでした。数日悩み続け、いつも難題に突き当たったとき頭を整理するために訪れるビッグ・サーの断崖からの絶景を眺めながら「よし!今やるしかない!」と決意したのを覚えています。そしていざやってみさえすれば、意外な発見や支援に助けられ、想像以上に状況が好転していきました。敢えて「準備不足」を肯定するという未来志向の挑戦。今日はそんなことについて記してみます。
窮地に追い込まれないと人は何もしない
私がこの準備不足という方法論に思い至ったのは、何を隠そう、自分自身がそういう状況に追い込まれたからでした。米国赴任4年目の春、人事からの帰任要請があったとき私も家族も日本に帰ることだけはありえないという結論だけは即断しました(笑)。米国の価値観、社会構造、そして何よりカリフォルニアの気候や風土、生活環境が余りにも自分達にマッチし過ぎており、今更ここを離れるということはイメージすら出来ませんでした。
決意からの一ヶ月ほどは今から思い起こせばほんの一瞬であったかのように思えます。その約一ヶ月ほどの間に、大企業の退職手続きという極めて手間の掛かるプロセスを実行しながら、米国で自社の登記手続きを進め、しかも子供たちの学校の新学期が始まる前までに自力でビザ取得を完了する(因みにこの年は移民政策が厳しくなったトランプ政権がスタートした年!)という今考えてもあまりにも無謀なアクロバットを実行、完遂したからです。
やってみて最も驚いたことは自分には既に多くの経験とスキル、才能豊かなデザイナーやエンジニアの仲間たちや支援してくれるビジネスパートナー、独自の人脈から将来性のある商流まで揃っていることに、自分自身が全く気付いていなかったということでした。自分には何もない、独立起業する準備を怠ってきたからこれからゼロベースで準備していかねばならない。漠然と、そして単純に、そう思っていました。
しかし次第に冷静になり自身と周囲を棚卸ししてみれば現実は全く逆で、むしろ全てが揃っていました。自分と自分の周囲にある創造性の資産に気付いてからは、今までに見たことがないほど毎日が新鮮な輝きに満ちていたのを覚えています。自分の持つそうした資産をどう使ってどんな価値創造ができるか?将来の顧客や市場開拓にはどんなルートがありそうか?あれもできるかもしれない、これもやってみたいなど、あの手この手を使えばもはや不可能なことはないくらいポテンシャルに溢れた夢やアイデアを考える作業そのものが、いちいち知的で創造的でしたし、今思い出してもワクワクしてきます。
ビジネス書を読むより創造性資産の棚卸
今だからこそ言えることですが、独立を確実に実現したいと思うならビジネス書や自己啓発本の類いを読み漁るよりも、自分の創造性の資産を綿密に棚卸しをする方が、自分の経験上、遥かに意味があると思います。この様に、自らがまさしく準備不足を言い訳にできない極限状態を経験したからこそ、このプロセスを体系化しワークショッププログラムにしました。(このワークショップにご興味があれば是非、ご連絡ください!)
ただでさえ怠惰な生き物である人間を客観し、惰性に流されることなく自らの意思で敢えて「準備不足」を肯定しながら、戦時の人間さながらに、今ある水と食料、持ち物だけでどこまでサバイブできるかを真剣に考えてみることは、現実に追い詰められた状況にない自分が自らを仮想的に追い込んでいるだけに実際には余裕があるので、あくまでポジティブに、創造的なマインドでその危機的状況を楽しむことさえできます。「準備不足」だからこそ楽しめるたった一度の人生に於ける未来志向の挑戦をお勧めする理由はここにあります。
準備の要らない時代にする準備は無駄でしかない
また、今は予定や計画が意味を為さない時代とも言われ、また全てが加速度的に進化していく時代。技術や社会自体の加速度的進化を肯定するならば「準備」に掛かる時間もまた加速度的に短縮、高速化してもいるはずで仮にその速度が過去の特定時期のおよそ100倍であるなら、その時期 3ヶ月を要した準備が現在なら1日で足りることになります。
また現代は様々の環境整備が整っており自ら「準備」しなくとも多くの便利で快適なプラットフォームが既に整備され、しかも無償で提供されている時代でもあります。極論するなら、ある特定の行為、例えば事業を起こす、ECサイトをつくる、動画の番組を配信するなど、今までは全てゼロから自分で構築しなくてはならなかったことがビジュアルのテンプレートから課金の仕組みまでフルセットで提供されているのだから誰でも 今すぐにでも始められます。
私自身もそうした多くの既存のフレームを巧く組み合わせながら自身のビジネスを構築してきました。今までは「準備」に割くしかなかった時間が今はそのまま「実行」に当てられる。準備の要らない時代にする準備は無駄でしか無いとも言えます。
人は怠惰であり、誰しも(自分だけかもしれませんが)極限状態に追い込まれないと入らないスイッチがあるのだとすれば、自分で自分を極限状態に追い込んでみることで、このスイッチをONにすることが出来るのではないかと思います。少なくとも私は入りました(笑)!