見出し画像

【逆境を逆手に!逆説的創造性】デザイン思考的生き方とリモートならではの価値

米国在住7年。そしてここシリコンバレーでデザインエンジニアリング会社Persistence of Visionを起業して4年が経ちます。米国のクライアントからは主にPoC開発などの仕事を依頼頂く一方で、日本のクライアントとは主にコンサルティングの仕事をさせて頂いています。

そんな中、コンサルティング業務の一環として前回も触れた「デザイン思考の敷衍」も鋭意取り組んでいますが、最近特に力を入れているのがオンラインで行うデザイン思考ワークショップです。今回はそんなオンラインやリモートならではの価値について記したいと思います。

2020年。私が起業して3年目を迎えたこの年、いわゆるコロナのパンデミックが起きました。

それまで日本に行く機会は少なくとも年に2、3回はありましたが、そんな環境は一変しました。飲食業や旅行業など多くの業種に影響を与えたパンデミックは、当然、スモールビジネスやファミリービジネスをも直撃し、少なくない数のビジネスが廃業に追い込まれました。では、私のビジネスはどうなったかといえば?おかげさまで堅調に拡大傾向をキープできました。それができた主たる要因が私自身の「デザイン思考的生き方」と、この「リモートならではの価値」でした。

束ねられたダイレクトコミュニケーションは高効率

前回もお話ししたように、私の場合、デザイン思考をいわゆる方法論として教えるというよりも、①「私という人間そのものを通じて」②「モノの意外な見方や、あまり普通はしないような発想の仕方を体験的にシミュレーションする」ような方法を採っています。パンデミックによってリモートワークが主流となった日本のクライアントと、今までF2Fで行えていた①や②がやり難くなったか?と言えば、結果的にむしろやり易くなっていた、と言えるでしょう。

まず①の私という人間そのものの伝え方について。Zoomに代表されるオンラインミーティングでは全ての参加者の顔が正面を向いて並び、スピーカーモードなら話者にズームが掛かる。会議室とは異なり全ての参加者が平等な距離感で繋がっていて、私の話も全ての方にダイレクトに伝わっていく。リモート環境とは、言わば、一人ひとりとのダイレクトな繋がりが繊維のように束ねられているという、今までにないコミュニケーション環境です。初めの頃こそ戸惑いもあったものの、考え方によってはこれはF2Fよりも効率的です。

そして何より、人間側の馴れの速さ。お互いオンライン前提のリテラシーとして表情を読み、会話のタイミングを絶妙に調節しながら議論する術さえ身に付けていく。何か言いたそうな人、考え込んでいる人など会議室では気付けないような機微にさえ気付けるようになる。この環境を最大に活かして「自分そのものをオンラインインターフェース化」し「時空を超えたアバター」として使い熟すことは現代に於いてとても重要なリモート空間のリテラシーだと思います。

リモートだからこそ実感できるデザイン思考の魔法

そして、②のモノの見方や発想の仕方を伝えること。私の場合、オンラインを逆手に取って工夫したのがインホームフィールドワーク。デザイン思考のワークの一つにフィールドワークがあります。文字通り外に出て多くの事物を見聞、インプットし、インサイトを得るための手掛かりにします。これをオンラインでやるにはどうしたら良いか?色々試行錯誤しながら、最も簡単な方法として、予め設定したテーマに即してヒントになるモノを参加者の自宅の周囲で探してSlack上に投稿して貰い、それを元に思考法や発想法をファシリテートすることにしました。これは私のWSの中でも最近最も好評頂いているワークです。

例えばモビリティというテーマであれば多くの場合「移動」や「乗り物」をイメージしがちですが、例えば、「カーテン」は開閉の調光で空間をデザインするモビリティであり、「お金」は価値交換を偏在化するためのモビリティと言えます。そうやって考えていくと、もはや世にある全てのモノにモビリティの性質や要素を発見できるようになります。参加者の方が持ち寄られたアイテムを多面的に見つめながらチームでディスカッションすれば、想像を超えた多くの視点に気付くことが出来ます。

逆説的創造性

私はこのファシリテーションを日本の参加者に対し、シリコンバレーから繋いで行っている。ちょっと大袈裟に言えばデザイン思考は、8000kmの距離を無化しながら家の周囲半径50メートルを無限大化することが出来るのだ、ということを、こうしたワークショップを通じて感じます。言わばリモートだからこそ実感できるデザイン思考の魔法です。

さらにリモートワーク化のメリットとして手続きの簡略化があります。今や、私のクライアントは家電やクルマ、医療機器などメーカーから、大手の建築設計事務所、システムインテグレータ、そして大学など学術機関、そして地域のNPOなど非常に幅広い分野に跨っていますが、特にリモートワークが主流となった2020年に多くのクライアントからお声掛けを頂くことが出来、また通常なら実際に日本の本社や大学に足を運んで進める契約ごとも、全てリモートで締結完了できるようになりました。社会全体への急速なリモート環境の浸透が無ければ、ここまでスムーズにビジネスを拡大出来なかっただろうと思います。

パンデミックによって半ば強制的に導入され、浸透したリモートワーク環境ですが、だからといって既存のリアルな環境よりも不便で劣っているとは限りません。むしろそれを逆手に取って、逆説的創造性でベネフィットを最大化することで、自分の生活やビジネスをより豊かなモノにできる。これこそがまさしく「デザイン思考的生き方」の醍醐味だと思います。


いいなと思ったら応援しよう!