【非所有、非安定が齎す軽やかな創造意欲】風の時代に相応しい生き方
米国に住む以前は、東京の世田谷区に更地から建てた一軒家に11年ほど住んでいました。その頃は引っ越しにも縁が無く、持ち家にも拘っていましたが、今思えば現在とは真逆のマインドだったなぁと懐かしく思い出します。今はどちらかと言えば「所有」や「定住」をしない、常に身軽な状態が何をするにも気分的に落ち着きます。家でも何でも一定期間借りたりシェアしたりしながら、好きな時に好きな場所にいつでも移動して生活する。昔の自分なら全く思いもよらないライフスタイルとマインドですが、何故こんなに変わったのか?今日はそれについて考えてみたいと思います。
新しい環境では誰でも大胆になれる!
米国に来て一つ面白かったのは、そのライフスタイルや生活価値観に慣れ親しむうちに「もしこれが日本だったら絶対しないだろう」ということにもごく自然とチャレンジすることが出来る、ということです。子供達の歌や演奏に合わせてピアノやギターで伴奏する、人前で歌を披露するなど、こう見えて意外とシャイですから(笑)、日本であれば恥ずかしくて尻込みしてしまいそうなことばかりですが不思議と米国では苦になりません。そこには心理的な違いがあるように思います。
私にとって米国はいまだに外国だし、そんなアウェイな環境なんだから失敗したって仕方無い、多少間違ったって良いじゃないかという心理。失敗しても、上手く出来なくても当たり前という前提があることは新しいことに挑戦する際の障壁を劇的に下げてくれます。半ばヤケクソ気味な心理ですが前向きに捉えれば失敗を恐れず「大胆になれる」ということだと思います。住み慣れた家、慣れ親しんだ場所ではない、自分にとって異質な環境が自分を勇気付け、通常なら発揮できないような力を発動できるなら、これは活用し甲斐のある環境だと思います。
定住、安住が招く、温存と保身優先のマインド
反対に、自分が長く慣れ親しんだ環境で、何でも知っていて何でもソコソコ上手く熟せる環境では、ちょっとでもミスすれば「〇〇さんでも間違うんですね~」みたいに言われるため、間違いやミスがしにくくなる。一見、慣れ親しんだ環境の方が環境を熟知しているが故に新しいことに挑戦し易そうに思えますが実際はその逆で、周囲からの目が気になったりして失敗を恐れる余り、ミスに繋がり易い新しい挑戦を避ける傾向が強くなるのではないでしょうか。
長い歴史を持つブランドの経営者や管理者ほど新しいことにチャレンジし難くなるという現象にも同じロジックが働いているように思います。自分の任期中をいかに問題無く安全安泰に保つか。それが最優先事項となる。何十年も続いた由緒ある老舗の看板に傷は付けられない。少なくとも自分の代でそんなことは許されない。それ故、尖鋭的で革新的な新しい取り組みは、そこに必ず見え隠れするリスク故に先送りされることとなる。長く同じ場所に安定することは結果的に本来発揮すべき力を温存し、安泰であることを最優先するマインドに繋がり易いのだろうと思います。
常に身軽に移ろい、変化しながら生きる時代
ところで星読みの観点では2020年(正確には2020年12月21日)まで「地の時代」であったものが2021年からは「風の時代」になったと言われています。個人的にはこの分野に決して明るくありませんが、ただ「所有すること」「固定化すること」「安定すること」に価値のあった時代から身軽で、常に移ろい、変化しながら生きることに価値が移ったとすれば、私のマインドセットの大きな変化もそんな宇宙的な変動を背景にしているかもしれません。
2020年に私が行った最初のデザイン思考のワークショップは、サンノゼ州立大学のEPICSという産学協働プロジェクトのメンバー37名を対象に行いました。そしてそれが私にとっては人生初のオンラインワークショップとなりましたが、実際やってみて得た最も大きな気付きはオンラインは様々なハードルを劇的に下げるということでした。もしリアルに37名の米国の学生さんを前に約3時間に及ぶワークショップを行うとしたら流石に緊張するでしょうし、準備もそれ相応に周到で綿密な資料作りが必要になるでしょう。
しかしながらオンラインで行うワークショップは驚くほどシンプルに、そして心理的にも極めてリラックスした状態で行えました。「アフターデジタル」でも語られている「オフラインの消滅」ですが、リモートやオンラインが様々な障壁を下げ、個々に新しいチャレンジを後押しするものであるとすれば、それもまた風の時代らしい趨勢なのかもしれません。
農耕民族から狩猟民族、そして流浪民族へ
そんなわけで、今現在、私と私の家族、そして仲間達の頭の中にある理想像はルパン三世(!)。世界中にアジトがあり、状況に応じてそれらの拠点を活用しながら必要な時に必要に応じてチームビルドしてビジネスと生活を両立し続けるようなライフスタイルです。そういう意味では、私自身、会社員から独立して、さらにリモートなワークスタイルに至る変遷は、言わば農耕民族から狩猟民族、そして流浪民族への変化のようにも見えます。常に身軽に移動し、変化を受け入れながら大胆な自分を助長させ、新しいツールや環境を使い熟しながら時代に相応しい生き方を満喫していきたいと思います。