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物価の高騰の裏側に隠れた要因を探る。

最近の物価は上昇することはあっても、下落することはございませんね。
上がるけれども高止まり、いや、さらに上がるのでしょうか。
ということで、なぜ物価が上がり続けるのかを私なりに考えております。

物価高騰の原因として、以下の理由が挙げられています。まあ、一般的なお話ですけどね。
1) 円安ドル高の進行による輸入価格の高騰。
2) ロシアのウクライナ侵攻に伴う、エネルギーや穀物の世界的な高騰。
3) 新型コロナウイルスの流行以降、製造業や流通業などの人手不足や商品の供給不足による物価上昇。
たしかに上記の理由によって物価が上昇してきたかもしれません。しかし、他に理由はないのでしょうか?何か隠された要因があるのではないでしょうか?
本質を捉えるためには何事も疑ってかかることが必要です。各種の報道ではなかなか取り上げられないけれども、物価高騰の隠された要因とは何かを深堀りしてみましょう。

円安もロシアのウクライナ侵攻も人手不足も商品の供給の問題も、物価上昇の理由としてはしっかりとした理由です。これは否定する余地がありません。
一つずつ分解してみると、円安になれば輸入価格が上がり、原価上昇の要因になり得ます。ロシアのウクライナ侵攻に伴ってヨーロッパを中心に供給されてきた原油や穀物が日本に入ってこなくなる可能性があり、これは需要が供給を下回るので一般的な経済理論によれば物価が上昇する要因になるでしょう。製造業や流通業などの人手不足については、賃金を上乗せして従業員を増やすことによって解消されるはずです。たしかに全国的に最低賃金は上昇しているはずなのですが、昨今では「物価ばかりが上がって、給料は全然上がらない」と嘆く人々が多くいることから、賃金はそれほど上昇していないことが考えられます。働き手となる世代は少なくないはずですが、なぜか人手不足であることには疑問が残ります。一つの仮説としては、本当に必要とされている職種の労働条件が良くない、さらに言えば悪化しているために、求人募集をしても応募がないのではないかということが考えられます。
ちなみに、話が多少逸脱しますが、本当に必要とされている職種にはエッセンシャルワークという名称が付けられています。このエッセンシャルワークは大切な仕事なのですが、低収益であるために低賃金であり、夜勤などもあって労働時間にばらつきがあります。職種によっては季節によって仕事があったりなかったりする場合もあります。労働環境が整わない職種には人気がなく、一方で、高収入でオフィス綺麗で、さらに労働時間が一定である職種に人気があるのは仕方がないことかもしれません。これを平準化するためにはエッセンシャルワークの労働条件を高める必要があるのですが、富める者はより富み、貧する者はより貧することが当たり前になっている、資本主義が発達した現代の日本社会では、この状況を変えるためには政府の大規模な規制が不可欠であると考えております。

さて、物価上昇の要因は他にないのかというのが今回のテーマでありました。話を戻しましょう。

昨今の物価上昇の前後で大きな社会の変化があったとすれば、それはコロナウイルスの感染拡大、パンデミックであることが考えられます。
コロナウイルスの感染拡大によって何が起こったのかを考えれば、日本では外出の自粛があり、世界的にはロックダウンをした国もあり、その間に経済活動が停止したことがありました。そこで何があったかと思い返すと、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」や「事業再構築補助金」などの補助金や助成金の支援があったり、無利子・無担保のゼロゼロ融資と言われたコロナ融資がありました。実はこのコロナ融資の返済が2023年7月ごろから始まっているのですけれども、私は昨今の物価上昇のタイミングとコロナ融資の返済開始時期が妙にリンクすることに気が付きました。
つまり、物価上昇の一要因として「コロナ融資の返済金の価格転嫁」が挙げられるのではないかと考えております。
いろいろな報道を見ていると「コロナ融資の返済金を価格に転嫁するのは難しい」と言われておりますが、1円でも2円でも価格に転嫁しなければ経営を圧迫して、最悪の場合倒産に追い込まれます。これは何としても価格に乗せなければなりません。しかも、これらが大手企業ではなく下請け、孫請けの中小企業が行っているのです。1円2円が10円20円、100円200円と積み重なって、消費者物価の上昇につながっているのだと私は考えています。

もう1つ、コロナウイルスの感染拡大前からキャッシュレス決済が一般化したことで、その関連業者が増えてきました。先ほど脱線したお話の中では労働人口は大きく減っていないのになぜかエッセンシャルワークに従事する人が増えないと書いたのですけれども、その要因にインターネット関連の会社が増加していることが関連していると考えております。また、コロナウイルスの感染拡大に伴って、スーパーやコンビニなどの小売店では現金決済を避ける傾向があって、さらにキャッシュレス決済が増えてきました。そこで、そこに係る決済手数料も少なからず増えてきてはいないでしょうか。
また、キャッシュレス決済には付きものである各種ポイント制度ですが、これも100円利用すれば1ポイント付与などとしておりますけれども、その原資は売上金であり、日々のお買い物での商品の価格に少しずつ紛れ込んでいるものです。一つ一つは小さく、100円で1ポイントであれば0.99%だけが価格に乗っている可能性がありますが、それは1社だけではなく何社もあることから少なくとも1%以上は価格の上昇要因になり得るだろうと考えています。
また、コロナウイルスのパンデミック期にはフードデリバリーが極端に売り上げを伸ばしておりましたが、これは飲食店の救世主となった一方で、しっかりと手数料が取られており、この手数料も少なからず商品代金に上乗せされていた可能性があります。
その他にも、旅行や理美容などの予約はインターネットで、という方が多くいらっしゃると思いますけれども、そこではお店から予約サイトの運営者に対して手数料が支払われており、その手数料も価格に転嫁される可能性があります。
インターネットのお話でもう一つ付け加えますが、SNSの発達によって誰もが気軽に情報発信できるようになりました。私がこうしてnoteに書いているのもインターネットの発達のおかげによるものです。しかしその一方で、広告の形態が変わり、これまではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで発信していた広告が、個人のWebサイトやSNSでも発信できるようになりました。大手の企業ではなくても、中小企業も広告を発信することができます。一つ一つは少額であるとしても、数が増えれば大きな金額になります。その広告料はどこから出ているのか。紛れもなく消費者が負担しているのです。
そのように考えると、日々の生活の中には以前と比べてかなりの額の「手数料」が上乗せされている可能性を否定できなくなりました。これも物価高騰の要因となっていないでしょう。
しかし、おそらくここでこのような批判を受けるかもしれません。「人を使った方がもっと経費がかかるのだ。インターネットの予約サイトや広告を利用することで確実に売り上げが伸びてきたし、アウトソーシングによって経費も削減できているのだ」と。そのご意見、待ってましたよ。私は反論する用意ができています。「それならば、従業員のお給料を上げてはいかがですか?」と。
乱暴な言い方かもしれませんが、インターネットや携帯電話、スマートフォンの発達によってコロナウイルスの感染拡大以前から「手数料経済」が急速に発達しました。しかし、その手数料経済の恩恵を受けて儲かっているのは一部の企業、世界ではGAFAまたはGAFAM、日本では特にここ20年から四半世紀の間に急速に企業名を聞くようになった企業ですが、社会全体の利益になっているのかと考えると、これが全くなっていないように思えます。

その他にも小さな要因がいくつもあるものと考えますけれども、私は上記の「コロナ融資の返済に伴う物価上昇」、「キャッシュレス決済、ポイント制度、予約システム利用などの、インターネットを利用した各種システムの利用手数料の負担に伴う価格上昇」もあり得るのではないかと考えております。

さて、これらの物価上昇要因を解消するためにはどうすればよいかという問題が残ります。
コロナ融資については完済することによって価格転嫁の必要は無くなるでしょう。5年から10年程度は辛抱する必要があるでしょう。
各種利用手数料については、行政、政府の規制が必要になるものと考えています。ただし、経済システムが進んでいる今日では、そう簡単に規制できないという現実があります。規制するということはビジネスの後退になり、行政、政府にはその責任を負うことはできません。しかし、そもそも資本主義というものは放っておくと暴走するものであり、強者はさらに強者となり、弱者はさらに弱者となる仕組みになっているものです。それを操作するために行政、政府は各種の規制を行っています。どのような規制をすれば良いかは改めて考えるとして、今は何らかの規制を行う必要があるということだけを確認しておきます。

ここまで書くと、おそらく「お前は何もわかってない!」と批判、反論をいただくことでしょう。これは弁証法、止揚に繋がることですので、大変ありがたいことです。
まずは、一歩引いて世の中を見渡して、報道やSNSなどでは語られていないことを考えてみることが大切でしょう。情報をできるだけたくさん収集して、仮説を立てて、周囲に惑わされず、自分自身の目線でしっかりと検証することが必要だと考えております。

なお、私は日ごろからソーシャル・キャピタルについて思いを巡らせています。お金が充実している世の中よりも社会の仕組みをどのように充実させることができるか、また人と人、人と社会、社会と社会がどのように繋がり合うべきかを考えております。
ソーシャル・キャピタル研究については、また改めて語ってまいります。

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