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技術者をちゃんと遇する仕組みが必要だ

昨日、台湾経済の専門家とオンラインで情報交換をしていて、(悪い意味で)心に刺さる話を聞いた。台湾で半導体関連の技術者、エンジニアを目指す学生たちは日本は観光で行くにはいいところだし実際に観光の目的地として人気もあるけれど、自分が働くところではないし日本では働きたくない、とみんなが口を揃えて言う、というのだ。

この話を聞き、先日、『ソニー半導体の奇跡』という本で読んだエピソードを思い出した。ソニーは、積層型CMOSイメージセンサーのキーマンで功労者だった人を、ちょうど会社全体の業績が悪くリストラによる人員整理をしていたこともあり、何の処遇もすることなく規定通りに定年退社させてしまった。このキーマンを放っておかなかったのが韓国サムスンだ。専務待遇の研究所長として部屋付き、車付き、通訳兼秘書付きという三顧の礼で迎えたという。その後、サムスンのCMOSセンサー事業は成長し、今ではソニーのCMOSセンサー事業を脅かす存在になっている。

ソニーは日本の中では技術者を手厚く遇する企業のはずだが、そのソニーですらそうなのだ。ここに、日本の半導体産業、もっと言えば日本社会の大きな病巣がある。技術やノウハウを持つ人をきちんと処遇しないし、敬意すら払わないことがある。TSMCのトップ技術者の年収は3000万円とも5000万円とも言われるので、日本企業がここまで金銭面で報いることはしばらく難しいだろう。だから、せめて技術の匠たちを尊重し敬意を払える文化と仕組みを持ってほしい。フェローでも名誉技術者でもいい。敬意やリスペクトなどでは食えないという声もあるかもしれないが、意気に感じる技術者は多いと思う。

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