オレンジブラウンリップ⑤
外は賑やかだった。
「アゲハチョウのやつだよ!」
「セフレ!」
「やけつく!」
夜は深まり、会話の断片と大きな笑い声が飛び交っていた。無遠慮な雑音、眩いだけで品のないライトと冷たい夜風は、先ほどから二人の間を漂う甘美なそれを剥ぎ取るには充分だった。
「もう少し飲もうよ。」
沙梨の口から淡と語られたその言葉は、それ以外の選択は許さないという重みを孕んでおり、従わなければ、一緒にいることはないという宣告を暗に佑月へ突きつけた。
佑月は二人の行き先を思い違い、浮き立っていた自分を恥ずかしく思った。
「良いね。」
佑月が簡単にそう呟くと、突然、沙梨は満足そうに笑った。
「あはっ。コンビニ寄ろっか。」
悪戯に当てられた相手が思い通りに動く様を、楽しむような意地悪さがあった。
たが、それを咎められる男はこの世にいるとは思えぬほどに、沙梨は圧倒的で魅力的だった。
コンビニで簡単なつまみと酎ハイを調達し、二人はラブホテルに向かった。
これから長く険しい人生を頑張れます