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奇跡の三曲

服部克久さんの足跡としては「音楽畑」と言うアルバムが、ほぼ一年に一枚のペースでリリースされ、今はストリーミングで楽しむことができる。

一方、服部さんのお仕事で、今や楽しむことが難しいのが、テレビの音楽番組での編曲がある。

ザ・ベストテン、ミュージックフェアとあと一つ週に3つの音楽番組を担当していた、と御本人おっしゃるが、あと一つ何なのか、色々調べても出てこない。

いずれにせよ、生涯編曲した曲数6万曲!というベースを支えていたのは、テレビ用のアレンジだ。

テレビ番組にはそれぞれの予算に合わせたバンドがあり、その編成にふさわしい編曲をしなくてはならない。元々のレコーディングされた編曲をバンドの編成に合わせて編曲するので、宮川泰さん曰く、服部さんはナイター見ながらビール飲みながらやっていた、と言う仕事だったようで、まぁテレビなんて一度放送されて終わりだし、ベストテンでは毎週毎週同じ曲を編曲することもあるだろうし、まぁ楽な仕事だったのかもしれない。

因みに他人に編曲、演奏されるのをバックに歌う歌謡曲が、どんどん自分たちで演奏するバンドがブームになり、ザ・ベストテンは終わるわけで、テレビ番組がバンドを持って演奏する、という形もいまや過去の遺物なのかもしれない。いまや、カラオケで歌っている。

関係ない話だが、渡辺真知子さんの「迷い道」という曲がある。「かもめが翔んだ日」もそうたが、バンドに羽田健太郎さんがいることもありレコードではイントロで羽田さんの華麗なピアノが奏でらるているのだが、これがテレビで演奏されると予算の都合なのなのかピアノではなく、トランペットなんかで、ピアノのメロディが演奏されYou Tubeで見るとがっかりである。その意味では、ザ・ベストテンもミュージックフェアも予算が潤沢だった番組である。

バンドの話はまた別に書くとして、番組用にアレンジする仕事で、たまに物すごいいいアレンジに出会うことがある。
服部さんは人がアレンジした曲をアレンジし直すと言う嫌な仕事を引き受けていた。その結果、そのアレンジが元のアレンジを超えることが度々あった。今日はその話。

★夜ヒットの薬師丸ひろ子の巻。

これはもう伝説。少し早めのテンポで演奏され、ストリングスのアレンジの美しさで松任谷正隆氏のオリジナルを完全に超えたヴァージョン。評判を聞きつけ検索したらニコニコ動画が見つかり、このバージョンを見たとき字幕に共感しまくった。スペシャルにストリングスの演奏家を入れ、服部さんにアレンジを頼み、一回限り歌わせる、当時の歌番組のプライドを感じる。You Tubeでその動画が上げられ百万回(適当)再生される事なぞ誰も考えていなかった時の放送。

https://youtu.be/j_KBEh3xfFM

★ジュリー〜〜
沢田研二さんは早くから井上堯之バンドと共演していた。自前バンドの魁ではないか?
その沢田さんの時の過ぎゆくままにを服部さんがアレンジするとこうなる、というのが次の曲。物すごい垂直なひな壇にオーケストラが勢ぞろいして、バンドがその前に陣取り、服部さんまでピアノで共演した豪華版。服部さんイコール弦というイメージだが、この曲では金管楽器がいい味を出している。You Tubeの財産のような映像。薬師丸ひろ子の場合もそうだが、服部さんがピアノを引いている。

https://youtu.be/yO-SEiPXZIo


★ひばりよ!
トリはやはりこの人、美空ひばりさんがマイウエイを歌っている。
前半からアップの映像が続きサビで画面が引かれた映像に変わるとオーケストラに合唱付きの編成である事が初めて分かり、一気に盛り上がる。
イントロからひばりさんの歌に、楽器が歌を歌い絡んでいくアレンジが続く。歌がうまい人にうまいアレンジが重なるとこう聞こえるのだな、と妙に感心してしまう。美空ひばりさんの歌を見事なまでに引き立てるオーケストレーション。世界中でこの歌は歌われ、世界中でアレンジされてるだろうか、多分頂点である。
美空ひばりのオリジナルで服部さんのアレンジを聞きたかった。まさに天才✕天才のパフォーマンス。

https://youtu.be/df_vFAs73_c

当時ビデオに取った人がYou Tubeに上げてくれたからこそ今聞ける奇跡の映像。
なんちゃって編曲家と違い、フランスの音楽だ学校卒業の緻密な織物を見るような見事なアレンジであり、それが地上波でなにげに一度だけ放送され、そのままライブラリーに眠っていた、という贅沢な時代。そんな贅沢な名品を掘り起こしYou Tubeで見れて良かった。





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